特別なエンジン
このクルマには有り余るパワーと重すぎる車重とともに、確かにそのパワーと車重をコントロールするには必要だが、少なくとも個人的には時に過剰と思えるほどのメカニカルグリップとトラクション、さらにはサイド剛性が備わっており、それが広範なスポーティーさに繋がっている。
【画像】まだ見慣れない? 新型ジャガーFタイプと旧型【新旧比較】 全68枚
だが、サスペンションセッティングとリアアクスル配置が見直されたにしても、FタイプRが依然として無骨で不愛想なホットロッドであることに変わりはなく、このクルマのドライバーには十分な集中と慎重さが求められる。
対称的に911はより高いコミュニケーション能力を備え、ジャガーよりも正確で直観的な操作が可能であり、このクルマであれば速く走ることも簡単な一方、例えゆっくり走っていても特別なモデルに乗っていると感じさせてくれる。
だが、特別と言う意味ではジャガーの唸りを上げるエンジンもそうだ。
見事なエンジンでああり、思わずこのサウンドに見合ったドライビバリティーが備わっていればと思わずにはいられない。
FタイプRに積まれたこの素晴らしいV8に匹敵するサウンドを発するポルシェ製フラット6というものも存在するが(番外編1でご紹介するエンジンがまさにそうだ)、最新のツインターボは残念ながらそうではない。
ブリジェンド工場で創り出された5.0Lエンジンの真骨頂は、3500rpmから5000rpmにかけてフルスロットルで加速するときの見事な咆哮であり、そのあとに続くまるで花火が終わった時のようなパチパチというサウンドにある。
シャシーとステアリング
効率的なパワー伝達のためというよりも、単に無駄なシフトチェンジを避けるべくジャガーのギアボックスをマニュアルモードにしておくやり方を覚えなくとも、必要な加速に備えてつねに最適なギア選択を行っているのは、ポルシェのツインターボと8速デュアルクラッチオートマティックの組み合わせだということは直ぐに分かる。
一番美味しいポイントであれば素晴らしいパフォーマンスを見せるジャガーのエンジンだが、全域に渡ってより優れているのはポルシェの方だ。
そして同じことが2台のシャシーについても言える。
スムースな高速コーナーでは見事なしなやかさを見せるとともに、エンジンもその真価を発揮し、荷重を受けたリアアクスルの動きまで感知することが出来るジャガーのシャシーだが、荒れた路面で特にダイナミックモードを選択しているような場合、ダンパーの苦し気な様子が伝わって来る。
さらに、ステアリングフィールにはまるでゴムが挟まっている様な感覚が明らかであり、ゆったりとしたペースであればさほど気にならないかも知れないが、コーナーが連続するような場面では問題となるだろう。
一方、ポルシェのステアリングは素晴らしく、ミリ単位でのラインコントロールが可能であるかのように思えるだけでなく、ステアリング操作に伴ってフロントタイヤのサイドウォールに荷重が増えていく様子がまるで手に取るように伝わって来る。
ポルシェを打ち負かすのはポルシェ
速さと滑らかさではジャガーに一歩譲るが、その替わりにポルシェのパワートレインとシャシーは、素晴らしい反応の早さと徐々に高まる落ち着きを感じさせてくれるのだ。
ポルシェのこうしたシャシー特性はサーキットにも公道にもマッチするとともに、FタイプRに対する911の重量アドバンテージは実際の重量差以上に感じられた。
そして、この重量差はどんな場面でも明らかだった。
ロードテストでは使い古された表現かも知れないが、ジャガーが時にグリップを確保するのに苦労する一方、ポルシェはつねに見事な路面コンタクトを感じさせてくれた。
911であればペースを上げるのも、コーナリングラインを選ぶのも自由自在だ。
現行911ほどの多才なダイナミクス性能と完成度を誇るドライバーズカーを打ち負かすなど、どんな自動車メーカーにとっても至難の業であり、確かに健闘はしたものの、FタイプRは総合力で911に及ばなかったのだ。
911が敗れることもあったが(番外編1をお楽しみに)、ヴァイザッハは心配には及ばないだろう。
ポルシェを打ち負かしたのは、やはりポルシェだったのだ。
そして、Fタイプがすでにデビューからかなりの時間が経過したモデルである一方、992型911はまだ登場したばかりなのだから、ポルシェはまったく心配などしていなかったに違いない。
そして、ターボとGT3もほどなく登場すると言われているのだから、待ち遠しいとしか言えない。
各車のスペック
ポルシェ911カレラ4SクーペPDK
価格:9万8418ポンド(1310万円)
エンジン:2981cc水平対向6気筒ツインターボ
パワー:450ps/6500rpm
トルク:51.1kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチオートマティック
乾燥重量:1565kg
0-100km/h加速:3.6秒
最高速:306km/h
燃費性能:9.6km/L
CO2排出量2、英国道路税率:237g/km、37%
ジャガーFタイプR P575 AWDクーペ
価格:9万7280ポンド(1295万円)
エンジン:5000cc V8スーパーチャージャー
パワー:575ps/6500rpm
トルク:71.3kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乾燥重量:1743kg
0-100km/h加速:3.7秒
最高速:299km/h
燃費性能:9.3km/L
CO2排出量、英国道路税率:243g/km、37%
番外編1:718 vs 911 リトルorラージ?
最新の911に批判的なひととびとは、992型がソフトになるとともに、ボディサイズが拡大し重量も増加しただけでなく、どんな場面でも完ぺきなスポーツカーだった991型のシンプルさを失ったと主張している。
時にこうした意見にも賛成してきたのは、先代911の偉大さを知るが故だった。
では、こうしたポルシェのドライバーズカーを代表するという911の役割は、6気筒エンジンが復活したよりコンパクトな718に引き継がれるべきタイミングなのだろうか?
そう思っていたが、アングルシー・サーキットを舞台に行われた2019年のベストドライバーズカー選手権で、ケイマンGT4は992世代となった911カレラSほどドライバーを楽しませることは出来なかったのだ。
それが答えだろうか?
申し訳ないが個人的にはまだ納得していない。
しつこいかも知れないが、サーキットではなく公道が舞台であれば、6気筒エンジンを積んだ718スパイダーは、911カレラ4Sを打ち負かすほどのドライバーアピールを見せてくれるだろうか?
そして、いまは公道限定であれば、この最高の718は911よりも優れたドライバーズカーだと言うことが出来る。
その理由も明白だ。
現在911ではマニュアルギアボックスを選択することは出来ず、スペシャルモデルもなければ、自然吸気フラット6はGT専用となっている。
そして、718スパイダーは911が失ったものすべてを備えている。
エンジンは素晴らしく(それでも組み合わされるギア比は奇妙なほどに高すぎる)、5500rpmを越えてからのサウンドは驚異的で、ターボエンジンでは絶対にマネの出来ないレスポンスさとリニアリティを味わわせてくれる。
一方で718の乗り心地は911ほどの深みとキャラクターは備えていない。
結局、718と911の比較とは、まるでジョーカー役としてヒース・レジャーとホアキン・フェニックスのどちらが優れているかを比べるようなものなのだ。
そして、911とはフェニックスのようなものであり、今後のさらなる可能性を秘めている。
だが、例え不完全で不公正な比較だったとしても、この2台の差はわずかしかなく、だからこそよりコンパクトな718に軍配に上げることにしたのだ。
つまり、現時点では718を選ぶが、だからと言って答えが出たわけではないということだ。
番外編2:911とFタイプの新車と価格は同じ ユーズドスーパーカー3選
ホンダNSX
例えスーパーカーだといっても電動化が避けられない時代がすぐにやってくるだろう。
賢明なホンダはこのことを認識していたからこそ、現行NSXは3基のモーターが3.5L V6ツインターボをアシストすることで581psを発揮する見事なハイブリッドモデルとなったのだ。
走行距離の少ない2017年モデルを手に入れるには、9万ポンド(1198万円)を覚悟する必要がある。
フェラーリFF
FFによって4シーターで四輪駆動のフェラーリという存在が認知され、強烈な印象を与えるGTC4ルッソの誕生に繋がったのだ。
660psを発する見事なV12エンジンと、335km/hの最高速と0-100km/h加速3.7秒というパフォーマンスは、まさにフェラーリと呼ぶに相応しい。
さらに、ハッチバックボディと折り畳み可能なリアシートは、フレンチアルプスのスキーリゾート向きのモデルだと言える。
手に入れるには最低でも10万ポンド(1331万円)が必要だ。
ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4
確かに素晴らしくモダンな911の隣りではLP560-4の古さは隠しようがないが、このガヤルドには劇的な何かが備わっており、それはつねに改良を繰り返すことで若々しさを失わない911には望むべくもないものだ。
新車であれば約20万ポンド(2662万円)が必要だというのに、いまならこのV10エンジンを積んだイタリアン・モンスターをわずか9万ポンド(1198万円)で手に入れることが出来る。
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みんなのコメント
コンセプトが全く違う車を土俵に上げて好き放題書くなよ!
バカじゃないの?
こ・い・つ!