プジョーのファクトリードライバーであるジャン-エリック・ベルニュは、6月9日にサルト・サーキットで行われたル・マン24時間レースの公式テスト“テストデー”を終えた後、地元フランスのメーカーを「劣勢」に位置づけた。
リヤウイングが備わる2024年仕様に改良された『プジョー9X8』がサルト・サーキットデビューを飾った日曜日、ポール・ディ・レスタが94号車でプジョー勢の最速タイムとなる3分29秒326をマークし、6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)のケビン・エストーレのタイムから2秒強おくれて総合13番手につけた。
テストデー午後はポルシェ963の“ワン・ツー・フォー”。3番手に8号車トヨタが食い込む/ル・マン24時間
一方、姉妹車の93号車プジョーはニコ・ミューラーが3分29秒888というパーソナルベストラップを記録し、ハイパーカークラスにエントリーしている23台のマシンのうち、21番手となった。
ミューラーとミケル・イェンセンとともに93号車プジョーをシェアするベルニュは、9X8の1周のペースが明らかに不足していることの重要性を否定しながらも、フランスのマニュファクチャラーがWEC世界耐久選手権のトップランナーのレベルに達していないことを示唆した。
「今日のラップタイムは代表的なものではない」とベルニュは語った。
「プッシュしているチームもあれば、(実力を)隠しているチームもある。だから(この時点の)ラップタイムからあまり多くを読み取ろうとは思わない」
「僕にとってはマシンのフィーリングの方が大事なんだ。今朝のポルシェカーブや最終セクターのフィーリングはかなり悪かったけど、午後には(路面の)グリップが上がってきてフィーリングがとても良くなった。自信もついてきたよ」
「改善すべき点はいくつかあるけれど、どれも簡単なことだと思う。とくに悪いところはないし、ポジティブだと思うよ」
プジョーが優勝争いに加わる自信があるか、とSportscar365に尋ねられたベルニュは次のように答えた。「いいや、自信はないね。そのためには、燃費を抑えているときのラップタイムと、他のドライバーたちが最大限のプッシュをしていること、そして我々も同じようにプッシュしていることを確認する必要がある」
「僕たちにとってもっとも重要なのは、信頼できることだ。我々が最速になることはないかもしれないが、ル・マンでは最速のクルマが勝つとは限らないことが何度も証明されている」
「僕らは、遅いマシンのチームが、完璧なレース運び、信頼性の高さ、そして運に恵まれて優勝するのを見てきた」
「我々が劣勢なのは明らかなので、(可能な範囲内で)いいパフォーマンスを見せるしかない。今日はすでにいいフィーリングだったし、この先でさらに(ライバルメーカーとの差が)広がらないことを願っている」
■“三味線”を否定。「そんな余裕はない」
彼は、ハイパーカーのライバルのうち、どこのメーカーがル・マンのレースウイークを有利に進めるかについては言及しなかった。
「たしかにポルシェは速いし、フェラーリもトヨタも速い」とベルニュ。
「この3チームの間に順位をつけることはあまり重要ではない」
「僕たちがやらなければならないのは、つねに自分たちのパフォーマンスに集中すること。いくつかのチームのように、サンドバッグを多用する(三味線を弾く)ような余裕はないんだ」
ステランティス・モータースポーツのボスであるジャン・マルク・フィノは、プジョーの2台が計6時間のテストセッションをトラブルなく走行できたことに満足感を示したが、同様に日曜日の9X8のパフォーマンスについて明言することは避けた。
「ライバルチームの走行プランを知らないので、判断するには早すぎるし、比較するのは難しい」とフィノは述べた。
同氏は、改良型プジョー9X8にとってデビュー2戦目となった先月のWEC第3戦スパの後、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP=性能調整)規則におけるプジョーの扱いに不満を漏らしていた。
5月末に改定されたル・マンのための性能調整において、プジョーは最大の勝者のひとつなったように見える。9X8はスパと比較してハイパーカークラスで最大の18kgの重量削減が認められた一方、最高出力に変更がなかったのだ。
その一方、9X8は新しい“パワーゲインルール”の下で、フェラーリとランボルギーニとともに250km/h以上の領域で最高出力を削られることとなった。その値はマイナス0.7パーセント。フィノはこの数値の重要性を否定している。
「高速走行時のパワーを1パーセント変更しても、トップスピードは3分の1程度しか変わらない」と彼は言う。
「例えば、5kW(約6.7PSの変更)でも1km/hか1.5km/h、それ以上の価値はないんだ」
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