8年待った甲斐があった! 熟成された伝統の1台
8年ぶりにフルモデルチェンジされるアウディA3は、今回で第4世代に突入することになる。初代はプレミアムブランド初のコンパクトハッチバックとして1996年に登場。日本に導入されたのはその翌年の1997年のことだった。果たしてこのジャンルのパイオニアはどんな仕上がりをみせてくれるのだろうか? まずはハイパフォーマンスグレードのS3 Sportbackから試乗を開始する。
アウディA3シリーズがフルモデルチェンジ! 48Vマイルドハイブリッドや最新インフォテインメントシステムを採用
「S」の名に恥じない武闘派モデル!
低くワイドなハニカムグリル、ヘッドライトから真っ直ぐに伸びたショルダーライン、そしてクアトロをイメージしたブリスターフェンダーなど、シャープさとボリューム感溢れるエクステリアは、明らかにA3の後継モデルであることがひと目で感じられつつ、けれども次世代に突入したことを明らかに示している。
とくに驚いたのはサイドビューで、ドア周りの彫刻的な凹面が際立っており、そのおかげでブリスターフェンダーが際立つ感覚があったのだ。写真でどこまで伝わるかが心配だが、メリハリある立体的なラインはなかなかだ。
ドライバーズシートに腰かければ、明らかにドライバーオリエンテッドで作られた空間が心地よい。S3には12.3インチのバーチャルコクピットプラスが与えられている。
ステアリングは先代のDシェイプから改められ一般的な丸形となった。“らしさ”は薄れたのかもしれないが、実用性を考えれば個人的にはコチラのほうが好み。ロックtoロックはおよそ2回転。低速で動いている段階からややクイックな感覚がある。
走り始めればやはり豪快さが際立つ。2リッター直4ターボ+7速Sトロニックが生み出す加速は、低回転からグッと前に押し出す感覚に溢れている。最大出力228kW(310馬力)/5450-6500rpm、最大トルク400N・m(40.8kg-m)/2000-5450rpmのスペックはダテじゃない。もちろん下だけでなく高回転の伸び感も備えていた。
それを上まわるのがシャシー性能の高さだ。アウディ自慢のクアトロシステム、そしてリヤサスはベースモデルとは違ってウイッシュボーン式となることなど、ハイスペックなエンジンパワーを余すことなく伝えることに長けている。この車両にはダンピングコントロールサスペンションが装着されており、それをスポーツモードにするとワインディングではスポーツカーのようにリニアな動きを展開してくれる。
シャープなだけでなく、ステアリングの微操舵から大舵角まで一定したクセのないフィーリングは、ドライバーとクルマとの対話性がかなり際立つ感覚があった。一方でモードを変えれば街中ではしなやかな乗り味にも変更することが可能。235/35R19サイズを前後に装着していたにも関わらず、それをきちんと履きこなしていたのだ。
それはリヤシートに腰かけても感じられるもの。これなら同乗者からも不満が出ることはないだろう。ちなみにフロントシートもリヤシートもホールド性はなかなか。
リヤはやや背もたれの角度が立った感覚があり、決してリラックスできるというスペースではないが、これならワインディングをハイペースで走られてもドライバーを恨むようなことにはならないだろう。
「これぞ欧州車!」と唸る完成度
続いて試乗したA3 Sedan 30TFSIは、当然ではあるがS3からするとかなり平和な世界観だ。
搭載されるエンジンは1リッター直3ターボで、最高出力81kW(110馬力)/5500rpm、最大トルク200N・m(20.4kg-m)/2000-3000rpm。48Vのマイルドハイブリッドが加えられ、時速20キロ以下でエンジン停止が可能。時速40~160キロの間で最大40秒間の惰性走行ができる。
その甲斐あってか燃費はWLTCモードで17.9km/L。ちなみにS3は11.6km/Lである。
走り出せば低回転からトルクがしっかりと出ており実用域で不満はない。車両が持つそもそもの静粛性が高いということもあるが、3気筒のネガはなかなか見えてこない。プレミアムブランドらしさは失っていない。
ただ、ワインディングの登り勾配で積極的にエンジンを回して行くと音や振動はやや多めに感じられる部分がある。こういうシーンで使うことも想定するのであれば、S3とまでは言わないが後に登場する4気筒の40TFSIを選択しておいたほうが良いだろう。このグレードは街乗りや高速メインで使う方々にマッチすると感じた。
シャシーの乗り味はしなやかさがあり、上質な感覚が得られる仕上がり。スポーティに走ろうとするとこれまた物足りない部分も見えてくるが、一般道の乗り心地を考えればこれがベストだろう。これはまさに最上級のベーシックモデル。パーソナルカーとしての究極を行っているといっても過言じゃない。
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