スタイリッシュで自然な造形。日本仕様は専用マスク採用
カローラクロスは、50年以上にわたるカローラの歴史で初のSUVである。カローラは累計生産台数5000万台を超え、世界中のユーザーに愛される存在だ。そのカローラが、現在の「時代の真ん中」に位置するSUVを送り出したのだ。それだけに完成度が気になる。さっそく試乗した印象をお届けしよう。試乗車はハイブリッドとガソリンの2台。ともに18インチタイヤを装着したZグレードのFF車である。
「新車詳報」カローラ4種目のスタイル、カローラ・クロスは「新空間・新感覚SUV」をキーワードにしたこれからの主役だ
エクステリアは、フェンダー回りの抑揚とボリューム感が印象的。伸びやかで意外にスポーティな印象を受けた。写真ではオーソドックスに感じたものの、実車を見て認識を改めた。ヤリスクロスほど印象的ではないものの、RAV4以上にモダンなイメージがある。
日本仕様のフロントマスクは、海外用モデルとは異なる専用形状。海外仕様と比べるとSUVらしいワイルドさは抑えられているが、「街に溶け込む」、「カローラファミリーと理解しやすい」という意味では納得のデザインだ。ボディサイズは全長×全幅×全高4490×1825×1620mm。歴代カローラ最大だが、取り回し性は優秀なレベルである。
インテリアはアッパー部がカローラシリーズ共通形状。ロア部は全高アップに対応したカローラクロス専用デザイン。セダン/ツーリングに対してコクピット感覚は薄れているが、スッキリとまとめられ、質感は高い。ただしエクステリアとのバランスを考えると、ステッチや素材、カラーなどに、もう少し「SUVらしい」演出がほしいと感じた。
室内は広く開放感たっぷり。パフォーマンスは満足感が高い
ドライビングポジションはアップライト。ヒール・トゥ・ヒップポイントはセダン/ツーリングより55mm高い。視界がワイドなだけでなく、これが後席の足元スペース拡大にプラスをもたらした。実際に後席に座るとホイールベースが共通のセダン/ツーリングより広く感じた。ウィンドウ面積が大きいことと大型パノラマルーフ(op)の設定などもあって、開放感は非常に高い。
ラゲッジ容量はクラストップレベルの487リッターを確保する。深さがあるうえ、ホイールハウスの出っ張りは最小限。実際の積載性、使い勝手に優れている。ディーラーopのラゲージアクティブボックスを利用すると、後席を倒した場合の荷室フロアがフラットになる。また、荷室を上段/下段に分けての収納にも対応。利便性だけでなく防犯上も役立つ。こうしたアイテムはオプションではなく、標準化してほしいと思った。
エンジンはハイブリッドが1.8リッター(98ps)+モーター(72ps)、ガソリンはバルブマチック採用の1.8リッター・NA(140ps)。ともにセダン/ツーリングと共通ユニットだが、制御の最適化とファイナルのローギアード化(タイヤ外径アップの調整)が行われている。
大きめのボディサイズなので、試乗前は動力性能に物足りなさを感じると思っていた。だが、実際は違った。パフォーマンスは「これで十分満足!」といえる。走りがいい秘密は車両重量にありそうだ。Zグレードの車重は1410kg(ハイブリッド)。ツーリング比で20kg(パノラマルーフ付きは40kg)増と、見た目よりも軽量設計なのだ。
ガソリン車は実用域を重視したセットアップとCVTの巧みな制御で、街中ではスペック以上に活発な印象。とはいえ、高速道路の追い越し時/山岳路などはもう少し余裕がほしいと感じた。
一方、ハイブリッドは応答のよさや力強さという点で、明確なアドバンテージがある。発進時だけはセダンやツーリングより穏やかなフィーリングだが、このあたりは燃費を意識した制御なのだろうか。試乗時の燃費は、通勤時間帯の首都高速で30km/リッターを超えた。WLTCモード燃費の26.2km/リッターを大幅に凌駕したのだ。このクラスとしては驚異的である。
自然なハンドリングが好印象。「普通の凄さ」を実感
フットワークはどうか? プラットフォームはカローラシリーズ共通のTNGA、GA-C型。FF車のリアサスは新開発のトーションビーム式。4WD用のダブルウィッシュボーン式と比べるとスペックダウンのイメージがあるものの、開発陣は「実用域を重視」と「気持ちのいい乗り心地」を目指しセットアップを施したと語る。
ハンドリングは素直。身のこなしの軽快性や操作に対する確かな応答性、そしてロールを抑えた自然なクルマの動きなど、改めてGA-C型の基本性能の高さを実感した。
走りの特徴を仔細に観察すると、セダン/ツーリングに対して薄皮を2枚くらい入れた穏やかな反応だが、クルマの動きは気持ちいい。ちなみにクロスオーバー化による性能の悪化要因(全高や重心など)は、ワイドトレッド化で対策しているようだ。普通に乗っている限りは、クロスオーバーというより「視線が高いサルーン」という印象だった。
快適性も高い。トーションビームによるネガ(ドタバタした動きやアタリの強さ)は、今回の試乗では感じられなかった。むしろ凹凸を乗り越えるときのカドの取れた優しさや、巧みなショック吸収に感銘を受けた。後席の乗り心地もチェックしたが、入力に対して体の揺れが少なかった。乗り心地はライバルに対して優位性があると感じた。
今回、カローラクロスに見て・乗って・使って感じたのは「普通」の凄さ、これに尽きる。しかも、普通といってもすべてが「100点を目指したバランス」を追求している。そういう意味ではセダン/ツーリングより「カローラらしいカローラ」だと感じた。まさに、令和時代のスタンダードといえる1台である。
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みんなのコメント
何しろ例えばグローバルで同格SUVのワーゲンT-Roc買おうと思ったら、400万円でも乗り出し不可能なんだから。