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「大湯でダメなら、レースを辞めてもいい」。3戦目にして初ポールのTGM Grand Prix、チーム代表が胸に秘める成功への自信

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「大湯でダメなら、レースを辞めてもいい」。3戦目にして初ポールのTGM Grand Prix、チーム代表が胸に秘める成功への自信

 2023年スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿。公式予選でポールポジションを獲得したのは、新興チームTGM Grand Prixの大湯都史樹だった。

 もちろん、その成り立ちから考えれば完全な新規チームという訳ではないものの、他チームから移籍してきた大湯との新たなパッケージが早くも実を結んだことはサプライズだったと言える。実際、大湯も予選を終えての記者会見で「このチームでの2大会目にまさかポールを獲れるとは思っていなかった」と語っていた。

■いざ新たな挑戦へ。大湯都史樹はなぜ新生TGM Grand Prix移籍を選んだのか? 王者TEAM MUGENに「一矢報いたい」

 ただし、この結果は決してフロックではない。大湯が持つスピードセンスと、チームのエンジニアリング能力が組み合わさった結果のポールだと言えるだろう。

■「クルマを100%に近付けられる」大湯と、「個に頼らない」チーム

 大湯の速さについては、デビュー以来から定評がある。スーパーフォーミュラでのポールポジションはこれで2回目だが、これまでも苦しい状況の中で何度も上位グリッドを獲得してきた。

 チーム代表の池田和広氏は、大湯の能力を次のように評する。

「セットアップの面で、クルマを100%の状態に作りきれることは滅多にありません。ただ、85%、90%くらいのクルマだった時に、大湯選手はそれを100%に近付けて運転してきてくれる能力があります」

 またチーム力という面でも、新興チームではありながらも十分すぎる力が備わっている。というのもTGM Grand Prixの母体は、これまでスーパーフォーミュラやスーパーGTで様々なチームのメンテナンスを手がけ、成功を収めてきたセルブスジャパン。彼らは以前から、個人に頼らない“チーム”でのエンジニアリング体制を築き、実績を残してきた。これは最近では多くのチームが取り入れている一種のトレンドのような形態でもある。

「セルブスジャパンでは基本的なスタンスとして、個のエンジニアには頼らず、エンジニアリングをチームで行なうというスタンスをとっています。当初は大変な部分もありましたが、長くやってきているのでその辺もうまくできるようになりました。これは今に始まった事ではありません」

 そう語る池田代表はさらに補足する。

「スーパーフォーミュラでは、解析しなければいけないことが多いです。ドライバーとエンジニアの誰かが会話をしている間に、もう解析を始めていなければいけません」

「例えば車高の適正値について、下面が路面と当たっているとドライバーに言われて車高を上げることは昔ながらのエンジニアリングでもできますが、前後のバランスなどはデータを見ないと解析できないですし、もちろん事前のシミュレーションも必要です。そういったことをひとりでやっていたら時間が足りないですから」

 そういったセルブスジャパンの技術力を高く評価していたからこそ、大湯もTGM Grand Prixへの移籍を希望したという話もある。大湯は開幕前にこう語っていた。

「僕はTGMのメンバーの技術力、チーム力が非常に高いと思っています」

「今のスーパーフォーミュラはTEAM MUGENの一強のような状況になっていますが、その中でそこに一矢報いたいという想いで(移籍に向けての動きが)始まりました」

■「大湯でダメなら、レースを辞めてもいい」から感じられる自信

 このように、ドライバーとチームの力が噛み合ってポールを手にした大湯とTGM Grand Prixだが、まだ決勝に向けては課題が残されている。富士での第1戦・第2戦では、予選で速さを見せた一方でレースペースに苦しんだのだ。

 ただ、チームとしても様々な解析をしてきており、池田代表によると「エンジニアリング的には、より良くなるという想定」だという。予選を終えた大湯も、決勝に向けて絶対的な自信があるというわけではなさそうだったが、「この前ほどは悪くないかな、というものは見つけられた」とのこと。チームとしても大湯としても、レースでも結果を残すことで“強さの証明”をしたいところだろう。

 インタビューの最後には「大湯でダメなら、レースを辞めてもいいと思った」という言葉がポロッと飛び出したが、これは大湯への信頼や期待の証であると共に、池田氏が歳月をかけて築き上げてきたエンジニアリング体制への自信の表れともとれるだろう。

 彼らは今回のポール獲得で、既にMUGENに対して“一矢報いた”と捉えることもできるかもしれないが、何かそれ以上のことをやりそうな空気感が漂ってきている

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