大接戦のタイムアタックバトルが繰り広げられた2023年スーパーGT第5戦鈴鹿GT450kmの公式予選。GT500クラスでは8号車のARTA MUGEN NSX-GTが0.037秒で今季初のポールポジションを奪った。その一方で、予選Q1で1分47秒176の同タイムでワン・ツーだった8号車ARTA NSX-GTと24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zは予選Q2ではアタック中のコースオフで該当ラップタイムが抹消。ポールを狙って行って攻めていった結果Q1とは“明と暗”が分かれる予選結果となった。
「とりあえず行くしかないと思って、アクセルは緩めなかった」大湯都史樹
23号車MOTUL Z、SW50kgで驚異の予選2番手。因縁の鈴鹿で松田次生「不安しかなかったけど、自分を信じて」
野尻智紀のドライブでQ1トップ通過を果たした8号車ARTA。Q2ではポールポジションを目指して大湯都史樹がマシンに乗り込んだ。アタックラップではセクター1で29秒139を記録し、僅差ではあるがQ2進出メンバーの中で最速タイムをマーク。その勢いでデクナーカーブに飛び込んでいったが、その2つ目で外に膨らんでしまい、芝生エリアに車両が完全にはみ出してしまった。
これについて大湯は潔く「頑張りすぎました」と、苦笑いしながら回答した。
「ギヤの使い方をいつもと変えたのですけど、それが良い方向に行きすぎて、内側の縁石に乗ってダウンフォースが抜けて飛び出しちゃいました。でも、とりあえず行くしかないと思って(コースオフしても)アクセルは緩めなかったです。四脱(四輪脱輪/走路外走行)のこともありましたが、それは後で考えようと思いました」と大湯。
午前の公式練習ではGT500クラス全15台が0.8秒以内にひしめく大接戦となり、Q1も24号車と1分47秒176の同タイムという状況。その中でポールポジションを獲るために少しでも攻めたいという気持ちが前面に出てしまったようだ。
「接戦だったので攻めないとポールを獲れないと思っていましたし、自分自身もポールを絶対獲るという気持ちで臨んでいたので、ちょっと気合いが入りすぎたのかもしれません。それまでの感じを見ていると1分45秒台も見えるくらい、すごく速かったと思います」
少しでもタイムを稼ぐべく、デグナーの攻略法を直前になって変更したという。
「いつも僕は3速でいくんですけど、野尻選手が2速でいっていたので『それもありかな』と思って2速でいきましたが、いきなりやったのが良くなかったのかもしれない」と大湯。
「もちろん悔しいです。普段は予選であまりミスをしないのですけど、今回は頑張りすぎてしまいました」と笑顔をみせたが、本心はやり切れない気持ちを抑えようとしている姿が印象的だった。
決勝は7番グリッドからのスタートとなる8号車。相方の野尻は「今週持ち込んでいるタイヤのレンジが周りのみんなとは少し違っていて、それが良い方向に出ているのではないかなと思いますし、ロングをやった感じでは非常に良かったです。たしかに前からスタートできれば楽だったかもしれないですけど、僕たちは(順位を)上げていける要素を持っています。楽しみです」と、決勝に向けてはいつも以上に自信を持っている様子だった。
「過去一番にプッシュした」佐々木大樹
Q1では8号車と同タイムで2番手通過となった24号車。今年は前回のポールポジションをはじめ、予選で力強い走りを見せているだけに、佐々木が乗り込んだQ2の走りに注目が集まった。しかし、結果的にQ1より1.1秒遅れた1分47秒589で7番手タイムに終わった。
「ちゃんと僕がやっていればポールが獲れたと思います。クルマもすごく良かったし、自分もすごく攻めていました」と語る佐々木。
アタックではデグナーカーブではみ出してしまい、走路外走行の裁定を受けてしまうことに。結果的に該当ラップは抹消となったが、残ったタイムでは8号車より速かったため、6番グリッドからのスタートとなる。
「セクター1でホンダ勢が速かったですし、彼らとの争いになると思っていました。やはりフルプッシュしないとポールは獲れないと思って……自分の中では過去一番にプッシュしていました。ちょっと滑ったときにバランスを崩してしまって、そこでの失敗があって、四脱になってしまいました」と佐々木。
「失敗しなければ、ものすごいタイムが出ていたと思います。ポールタイム(1分46秒385)からコンマ5秒以上速いくらい、クルマのポテンシャルはありました。タラレバですけど……“置きにいく”ではないですけど、きちんと走っていたらポールだったかもしれません。でも、それは分からないから、とにかくフルプッシュして、飛び出してしまいました。もちろん、飛び出すほどのプッシュをしたので悪いのですけど、それだけ気持ちが入っていました」と、冷静さと情熱的な感情が入り混じった様子だった。
それでも今週末の24号車のパフォーマンスに相当の自信があったことは間違いなく“攻められるクルマ”だったと佐々木。
「クルマが決まっているから“安パイ”で走るというのは、僕にはできないです。とにかく自分の最大限で行こうとした結果、ミスをしてしまいました。もちろん、ミスは減らせるに越したことはないですが、それだけ攻められるクルマなので、そこには自信を持って、今日は自分のミスを反省して次に繋げたいと思います。明日はきっぱりと切り替えていきたいです」
相方の平手も「攻めた結果ですからね。明日頑張れば良いです」と、佐々木のミスに対して咎めるような発言はなかった。6月の第3戦ではQ2でトップタイムを記録しながらも再車検不合格で最後尾からのスタートとなったが、レースペースには自信を持っている様子の平手。「この前(第3戦)も最後尾から6台くらいオーバーテイクしたので、今回は6番手から表彰台まで持っていきたいないなと思います」と、決勝に向けて力強く抱負を語った。
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