アウディ ジャパンは2020年9月17日、アウディ・ブランドとして日本初導入となる電気自動車「e-tron スポーツバック」を「e-tron正規ディーラー」(52店舗、現時点)を通じて発売しました。
e-tronスポーツバックに続きe-tron SUVも導入予定
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アウディは、2018年9月に電気自動車のSUVモデル「e-tron」を世界初公開し、電動化攻勢を開始しています。アウディは2025年までに、全世界の主要な市場において20モデル以上の電気自動車(バッテリー エレクトリック ビークル=BEV)を発売し、プラグインハイブリッドを含む電動化モデルの販売台数を全体の約40%にすることを目指しています。
もちろんこの背景にはフォルクスワーゲングループの世界戦略があり、CO2排出量の規制が強化される主要市場でいち早くリーダーシップを獲得することを目指しています。
日本市場ではこのe-tronスポーツバックが電気自動車のさきがけとなり、e-tron SUVがそれに続いて導入されることになっています。
e-tronスポーツバックは電気自動車専用プラットフォームではなくMLBevoプラットフォームを採用。5名が広々乗車できる広いキャビンと、大きなラゲージコンパートメントを持っています。全長は4900mm、全高は1650m、全幅は1935mm、ホイールベース2930mmです。その大きな前面投影面積にもかかわらず、空気抵抗係数(Cd)を0.25に抑えられた空力性能を備え、ボディがより小さなQ3よりも優れているのです。
またe-tronスポーツバックは、アウディ初となるカメラを使用するバーチャルエクステリアミラーがオプションで設定されます。このミラーは、さらに空気抵抗係数を5cdポイント(0.005)低減させることができます。
バッテリーの構成
e-tronスポーツバックのパワートレーンは前輪、後輪をそれぞれ駆動する2個の電気モーターを搭載した4WDシステムを採用しています。
システム最大出力は408psで、0-100km/h加速は5.7秒と強力な加速力を備えています(Sモードのブースト時。Dレンジでは6.6秒)。95kWhのエネルギー容量を持つ駆動用バッテリーにより、一充電あたりの航続可能距離は最大405km(WLTCモード)となっています。
この航続距離は、日産リーフの40kWhバッテリー・モデル(322km:WLTCモード)と62kWhバッテリー・モデル(458km:WLTCモード)のちょうど中間となっています。
95kWhの容量を持つLG化学製のリチウムイオン・バッテリーは、熱コントロールシステムを装備し、様々な環境での走行に対応。熱コントロールシステムは4つの回路系統からなり、キャビンや電装品を冷却したり温めたりするべく、状況に応じてさまざまに接続されます。
このシステムは効率的なヒートポンプとしても機能します。温度管理は、バッテリーの昇温・冷却の他に、電気モーター(ローター含む)、パワーエレクトロニクス、チャージャーの温度を制御します。これらにより真冬の冷間スタートから真夏の高速走行まで、バッテリーは常に最高の作動効率が得られる25度~35度に保たれバッテリーの長寿命化にも貢献します。
急速充電システムは最高出力50kWの急速充電器(CHAdeMO1.0規格:現状で最も普及している急速充電機)に対応しています。
バッテリーの公称電圧は396V、理論容量は95kWh、実用容量は86.5kWhです。バッテリーパックは、アルミケースに入れられた36個のセル・モジュールで構成され、セル・モジュールの中には12個の角型バッテリーセルが内蔵されています。
ちなみにバッテリーセルはLG化学製ですが複数購買戦略により、スペックが同等のバッテリーセルであればどのメーカーのバッテリーでも使用することが可能です。現時点ではLG化学以外にサムスン、SKI、中国のCATLなどからも供給が行なわれています。
バッテリーパックはフロア部分に平らに敷き詰められ、長さ2.28m、幅1.63m、高さ0.34mで、リヤシートの下の部分には2段にパックが搭載されています。重量は強固な外周フレームの耐衝撃構造も含んで約700kgです。
なおアルミニウム製のバッテリーハウジングは、47%が押出成型アルミニウム、36%がアルミニウムパネル、残り17%が鋳造アルミニウムのパーツと、全てアルミ製です。曲げ剛性、ねじり剛性を確保するため、バッテリーパックは35本のボルトを使用してボディに結合。これより車体のねじり剛性は27%向上しています。もちろんフロア部のバッテリーパック配置により、低重心化も実現しています。
なおバッテリーパックは、車両の組み立てと同様にベルギーのブリュッセル工場で行なわれています。ブリュッセル工場はアウディの電動車両のメイン工場で、バッテリーに関しては包括的に開発を行なっており、この電気自動車用だけではなく、PHEV用なども含め、共通のモジュラー設計を採用しています。
最先端の回生ブレーキシステム
e-tronスポーツバックは、405kmの航続距離となっていますが、その中で30%は回生ブレーキによって距離を稼ぎ出しています。これを実現しているのが新開発のブレーキbyワイヤー技術です。
前後のモーターで得られる減速時の回生ブレーキ力は、パドル操作で行なう3種類の回生モードにより制御されます。最も低い設定では、アクセルペダルから足を離しても引きずりトルクを発生することなしに惰性走行(コースティング)を続け、電気モーターに電流は出入りすることはありません。
レベル1(バランス重視:最低限の減速)、レベル2(強力な回生:大きな減速)のモードでは、電気モーターが回生ブレーキトルクと電力を生み出します。ブレーキ回生のみで大きく減速できるため、ドライバーはアクセルペダルのみで加速と減速を行なうことが可能で、ワンペダルフィーリングが生み出されます。
また回生ブレーキ力は、パドルによるマニュアル操作だけでなく、MMI(マルチメディア インターフェイス)を経由して自動モードも選択できます。この場合、ミリ波レーダーによる前走車の検知により自動的に回生レベルが調整されます。これは、アクセルペダルを再び踏み込むまで作動し続けます。
回生ブレーキ・システムはアウディが専用開発したクワトロ回生機能を使用し、前後のモーターでどのくらいの回生を行なわせるかという判断を実行します。ドライブコントロールユニットは、前後の電気モーターに対する回生トルクの理想的な配分を、正確にかつ瞬時に計算し、ほとんどのケースでは、最も高い効率を実現するため、リヤの電気モーターがアクティブになります。
走行中にドライバーがアクセルペダルから足を離した時や、ブレーキペダルを踏んだ時の回生ブレーキ力は、-0.3Gまでの減速に対応し、これは減速時の90%以上をカバーしています。つまり、実質的に日常域のほとんどのブレーキは、回生ブレーキで賄えることを意味します。
この回生システムの能力は、きわめて効率的なため、メカニカルブレーキを使用することはきわめて少なくなります。-0.3Gを超える強い減速が発生する場合はメカニカルブレーキによる制動も行なわれます。
回生力は、100km/h走行時の減速で300Nm/220kWの電力を回生できます。これは走行に使用するエネルギー入力量の70%以上に相当するもので、これほどの高い回生率を備えた市販車は、他に存在していません。
また急ブレーキ時には、統合型ブレーキbyワイヤー コントロールシステムの利点が最大限に発揮されます。コントロールユニットは、ドライバーがどれくらいの力でブレーキペダルを踏んでいるかを検出し、瞬時に必要な制動力を計算し、回生トルクだけでは不十分だと判断した場合はブレーキ油圧装置のピストンが追加の制動圧を生成します。
電気駆動されるこの油圧ピストンは、ブレーキフルードをブレーキラインに送り込み、従来型の摩擦ブレーキを作動させます。電気と油圧ブレーキの連動はスムーズで、制動力も一定に保たれるため、ドライバーは気付くことはなく、ドライブbyワイヤー式とはいえペダルの踏み応えも最適化され、ドライバーに従来の油圧ブレーキと同様のペダルフィールをもたらすことができます。
電気油圧式アクチュエーターの採用により、高い精度で制動圧を高めることが可能で、それに要する時間は従来型システムと比較して約半分に削減。緊急自動ブレーキが発動した場合、パッドとディスクの間に最大制動圧が発生するまでの時間は、わずか0.15秒。その結果、従来型より約20%も短い制動距離が実現しています。
電気的クワトロ
e-tronスポーツバックは前後2個の電気モーターによって駆動する、新時代のクワトロを採用した電動4WDです。通常は主にリヤのモーターを使用することで走行抵抗を低減し、エネルギー消費を抑制。
一方で、滑りやすい路面や急加速やコーナリング時など4WD走行が望ましいとシステムが検知した場合、フロントモーターも駆動し4WDとなります。電気モーターのトルクが立ち上がるまでに要する時間はわずか0.03秒で、従来の電子制御機械式クワトロよりも遥かに鋭い反応時間となっており、瞬時にモーターのパワーを路面に伝えることが可能です。
もちろん前後のモーター駆動トルクは連続可変制御され、ミリ秒単位で正確に制御されます。低中負荷走行時では、最高の効率を達成するためにリヤに搭載された電気モーターが使用されます。ドライバーが、より多くの駆動力を要求した場合、この電動4輪駆動システムは、必要に応じてフロントアクスルにトルクを配分します。
滑りやすい路面や高速コーナリング中にスリップが発生する前、あるいは車両がアンダーステアまたはオーバーステアの状態になる前に、予測的(フィードフォワード)制御が行なわれます。
システムが走行状況を検知して電気モーターのトルクが駆動するまでの時間は、わずか0.03秒。そのため路面の摩擦係数が突然変化したり、極端な走行状況でも、クワトロのパフォーマンスが保証されるわけです。
2個のモーターは非同期の誘導式モーターを採用し、360psのピーク出力を備え、561Nmのトルクを発生。誘導式モーターは、非通電状態において電気的に誘発される引きずり損失が発生しないため、コースティング時などには極めて効率的です。
またアルミニウム製ローターを採用することにより、非常に軽量で高い耐久性も備えています。もちろんこのモーターは、製造時にレアアースが不要となっています。
このモーターは最長60秒間にわたってピーク性能を発揮でき、静止状態から電子リミッターが作動する200km/hまでの加速を、ピークパワーを保ったまま、何度か繰り返すことが可能です。その発進加速は、スポーツカーに匹敵しています。
なおこのモーターは、短時間であれば出力を引き上げることが可能で、シフトレバーをDモードからSモードに移動し、アクセルペダルを床まで踏み込むと、ブーストモードが起動します。この状態は、8秒間継続可能です。ブーストモードでは、408psのシステム出力と664Nmのトルクを発生します。その際、フロントアクスルとリヤアクスルの電気モーターの駆動力配分は、フロントが183psのブースト出力と309Nmのトルク、リヤが224psのブースト出力と355Nmのトルクに設定されます。
アクスルと平行に設置されたフロントの電気モーターは、通常時は170ps/247Nmを発生します。リヤと同軸上に設置される後輪用モーターは、190ps/314Nmを発生。それぞれ1速ギヤを備えた2ステージ遊星ギヤボックスが、デファレンシャルを経由してアクスルに駆動力を伝達します。
ダイナミック性能とシャシー
e-tronスポーツバックのサスペンションの中心的な制御ユニットは、エレクトロニックシャシープラットフォーム(ECP)です。ECPはクワトロのドライビングダイナミクス・コントロール(すなわち4輪コントローラー)と、ホイールセレクティブ・トルクコントロールを統合しています。
これらの機能統合により制御時間がより速く、より正確になっています。アンダーステアやオーバーステアといった車両のハンドリングダイナミクスが関係する状況では、電動4輪コントローラーが、ドライブコントロールユニットによって指定されたトルク配分を上書きします。
このような状況では、操舵角、エンジンのトルク、横方向、前後方向の加速度といったデータから、理想的なトルク配分を演算。
オーバーステアが差し迫っている場合、より多くのトルクをフロントアクスルに配分してヨーをコントロールします。そのためドライバーは、コーナリングのより早い段階から次のストレートに向けて加速することが可能になり、ステアリングを修正する頻度が低下します。
4輪コントローラーは、それぞれの状況に基づいて、エンジントルクを調整すべきなのか、あるいはブレーキに介入すべきなのかを決定し、各アクスルに対して個別に制御を実行します。
これにより俊敏なハンドリングに貢献し、特にコーナリング時のダイナミクスにおいて、スポーティな特性を実現しています。アンダーステアの兆候を検知した場合、4輪コントローラーは油圧式のホイールブレーキを個別に直接制御します。
つまり、ホイールセレクティブトルクコントロールは、コーナー内側のトラクションが低下したホイールをわずかに制動して、よりトラクションの高いコーナー外側のホイールの駆動力を増加させます。この駆動力の差によって、クルマは曲がりやすくなり、ステアリングの操舵角に追従することができ、ニュートラルなハンドリングが実現し、コーナリング時のダイナミクスが向上するのです。
走行特性は、ドライブセレクトによって調整することが可能です。このシステムは、走行状況、路面状況、ドライバーの要求に応じて、7つのプロファイル(快適性重視、効率性重視から、スポーティな設定まで)を選択することが可能です。
ドライバーは、「オート」、「コンフォート」、「ダイナミック」の各モードに加えて、「エフィシエンシー」、「インディビジュアル」、「オールロード」、「オフロード」の設定が選択可能です。
各モードを選択すると、パワーステアリングのアシスト量、駆動特性、自動車高調整機能付きアダプティブ エアサスペンションの設定を変更することができます。ドライバーが、「ダイナミック」を選択すると、ドライブモードの「S」が自動設定され、ブーストモードが起動します。「エフィシエンシー」では、パワートレーン、空調コントロール、クルーズコントロールまたはアダプティブクルーズコントロールが、より電費重視な設定になります。
なお、エレクトロニック・スタビリゼーション・コントロール(ESC)も4つの機能モードがあり、オンモードに加え、スポーツ、オフロード、またはESCオフを選択することもできます。
サスペンションは、前後とも5リンク式で、自動車高調整機能を備えたアダプティブ エアサスペンションを標準装備しています。スムーズで快適な乗り心地から、スポーティで安定したハンドリングまで、幅広く車両の特性を変化させることが可能で、ワインディングロードでは、スポーティなドライビングを楽しむこともできます。
オフロードモードでは、車高が上昇するため、荒れた路面でも安心して走行することができるなど空気圧式のスプリングは、基準となる最低地上高の172mm~76mmの範囲で車高を自動、または任意に変化させることができます。
このようにe-tronスポーツバックは、フルサイズSUVセグメントのクルマとして卓越した制御により、高いコーナリング性能を発揮し、低重心、前後荷重配分50:50の優れた資質により、どのような状況でもドライバーの操作に素早く反応し、高い安定性を発揮することができるようになっています。
デザイン
エクステリアはアウディQファミリーで共通の八角形のシングルフレームグリルを採用しています。プラチナグレーのフレームや下部に配したe-tronのロゴによって他のQファミリーとの差別化を図っています。
サイドビューは低くアーチを描くルーフラインにより、SUVクーペのスタイリッシュさを表現。前後のブリスターフェンダーがクワトロならではの力強い走行性能を視覚的に表しています。
インテリアは水平基調のダッシュボードの中央に、2つのMMIタッチレスポンスのディスプレイが上下に配置されています。アウディバーチャルコックピットをはじめとするデジタル機能をもちろん備えています。ディスプレイをオフにすると、上部ディスプレイは周囲のブラックパネルに溶け込んでほとんど見えなくなります。
日本導入記念限定モデル「e-tronスポーツバック1stエディション」
e-tronスポーツバック1stエディションは、サイレンスパッケージ(アコースティックサイドガラス、プライバシーガラス、バング&オルフセン3Dサウンドシステム、パワークロージングドア)をはじめ、5Vスポークスターデザインの21インチアルミホイール、カラードブレーキキャリパー(オレンジ)を特別装備したe-tron日本導入記念限定モデルです。また、これにバーチャルエクステリアミラーを追加したモデルも設定しています。
日本仕様のe-tron スポーツバックの充電には、標準装備する家庭用の普通AC(交流200V標準3kW、オプションで8kW対応)充電器と、主として公共の急速DC(直流)充電器とが対応します。
公共の充電設備としては全国に7800カ所に設置されているCHAdeMO規格の急速充電器(出力50kWまで)が利用可能です。e-tronの95kWh(正味容量86.5kWh)のバッテリーを0から80%まで充電するための所要時間は、出力50kWの急速充電器で1時間半です。
アウディ ジャパンではe-tronの導入に合わせて、「e-tronチャージングサービス」を提供します(一年目のみ月会費の5000円と1分15円の従量料金が無料)。このサービスで提供される充電カードは全国約7800カ所の急速充電器のうち約86%をカバーする「合同会社 日本充電サービス(NCS)」加入の充電器で利用可能です。普通充電を含めると、2万1700カ所(2020年4月現在)の充電ステーションを利用することができます。
e-tronスポーツバックの購入に際しては約40万円の減税メリットが受けられ、これに加えて一般社団法人次世代自動車振興センターが交付する「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」の該当車両のため、40万円の補助金を受け取ることができます。
またアウディ ジャパンでは家庭での普通充電器の設置費用をサポートするほか、自然電力株式会社との提携により、購入者には、自然エネルギー実質100%による電力を提供するプランが用意されています(1年間、月額1000円の割引を提供)。
また、アウディ ジャパン初の100%電気自動車の導入にあたり、e-tron専用のLINEアカウントによるオーナーサポートが、9月17日14時から開始されました。オーナーからの質問に対してAudiコミュニケーションセンターのオペレーターが回答します。場合によって通話に切り替えての対応も行ないます。
さらにe-tronスポーツバック導入を記念して、ブランドサポーターに就任した柴崎コウさん主演のコラボ動画も発表しています。使用されている楽曲には、このために書き下ろされた柴崎コウさんの新曲「ひとかけら」が使用されています。
アウディ e-tronスポーツバック 諸元表
価格
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みんなのコメント
アウディよ、バランスを知れ。