レッドブルは、F1イタリアGPの予選で苦戦を強いられた要因のひとつであるマシンバランスの問題に頭を悩ませているが、ひとつ分かっているのは、リヤウイングの選択を間違えたかもしれないということだ。
イタリアGPで使用されているレッドブルのリヤウイングは、上部の波打つフラップが非常に興味をそそる見た目をしているが、実際にはモンツァで求められるスペックに合わせた特注ウイングではない。
■絶対王者の姿はどこへやら……レッドブルF1、バランス問題で「完全にどん詰まりの状況」苦戦は長引くとペレスは示唆
マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが予選でのスピードトラップで下位に沈んだことがそれを証明しているだろう。フェルスタッペンは時速347.2kmで19番手、ペレスは時速346.8kmで20番手だった。最速だったのは時速353.5kmを記録したフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)。タイトル争いのライバルであるマクラーレンは、ランド・ノリスが時速349.0kmで12番手だった。
ストレートが長いモンツァでは、いかに空気抵抗を減らしトップスピードを稼ぐかが重要になってくるため、ダウンフォースを減らし空気抵抗を極限まで削った特注リヤウイングを持ち込むことも多い。
実際、今年もサーキットの特性を考慮して特別に設計・製造されたモンツァ用のリアウイングを装着しているライバルチームも多いが、レッドブルはそれを行なわず、手持ちの中で最もダウンフォースの少ないウイングを選択したが、それでもモンツァで必要とされるダウンフォースを上回っていた。
フェルスタッペンによると、モンツァ専用ウイングを持ち込まなかった理由はコストにあり、ひとつのサーキットのためだけにウイングを作るのが割に合わないと判断したためだという。
「予算の上限がある中では、選択をすることになる」
そうフェルスタッペンは語った。
「モンツァのために特別なウイングを作る代わりに、他のことにお金を使うんだ。でもすでに問題を抱えている場合、もちろんこれは問題をさらに悪化させる」
このレッドブルの判断には、チームがCFD(コンピュータ流体解析)で新しいウイングを設計し、風洞用のスケールパーツを製作し、実際のコンポーネントを製造しなければならないというでけではなく、残りのレースでそのウイングを再び使うことがない可能性がという要素もある。
昨年は、多くのチームがモンツァ仕様のウイングをラスベガスGPでも使用しており、今季も11月にラスベガスGPが控えているため、こうした面での打撃はいくらか緩和されている。
しかしそれでも、新たに極低ダウンフォース仕様のウイングを作るには、金銭的にも開発時間の観点からも代償が必要だ。このうち、空力開発にかける時間という点はレッドブルにとって特に痛い問題だ。
チャンピオンシップの順位に応じてCFDや風洞の使用時間が制限される空力開発制限により、コンストラクターズランキング首位のレッドブルは効率を考えて開発をしなければならない立場にある。
そこでレッドブルはモンツァ用ウイングを作るのではなく、すでにある最もダウンフォースの低いリヤウイングからアッパーフラップを切り落とし、センターラインの両脇に三日月型の切り込みを入れた。
このようなアプローチをとったチームはレッドブルだけであり、そのコンセプトは見た目の違いで注目を集めたが、このウイングが登場するのは今回が初めてではない。
このウイングは、ベルギーGPのFP2でフェルスタッペンのRB20に搭載されテストされたが、この時は後縁にガーニーフラップを装着してウイングのバランスを取っていた。
さらに切り欠きの形状こそ異なるものの、レッドブルは昨年のイタリアGPでも同様のアプローチをしていた。
レッドブルはフロントウイングにも同様のアプローチを選び、フラップの一部を取り除いてダウンフォースを減らし、発生する空気抵抗を減らしている。
またここ数レースでテストしているように、レッドブルはフラップの角度を調節するアジャスターをウイングの外側に移している。
レッドブルはRB20のパフォーマンスをさらに引き出そうと、新旧のパーツを織り交ぜながら解決策を模索している。
今のところ、レッドブルはより広い範囲の空力問題に焦点を当てていると考えられる。ただ、今週末に得られた結論のひとつは、来年のイタリアGPではおそらく異なるアプローチが必要になるということだ。
フェルスタッペンは、次のように付け加えている。
「ここ数年、モンツァでスペシャルウイングやスペシャルパッケージを用意したことはなかった」
「ここ数年はそれを補って余りあるほどクルマが良かった。でも、これは来年に向けて何か違うことをしなければならないかもしれないね」
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