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中嶋一貴組トヨタ8号車が連勝飾る。終盤にチーム内で2度の順位入れ替えも/WEC第2戦ポルティマオ

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中嶋一貴組トヨタ8号車が連勝飾る。終盤にチーム内で2度の順位入れ替えも/WEC第2戦ポルティマオ

 6月13日、ポルトガル南部・ポルティマオのアルガルベ国際サーキットでWEC世界耐久選手権第2戦『ポルティマオ8時間レース』の決勝が行なわれ、トヨタGAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドレン・ハートレー組)がトップチェッカーを受けた。

 WEC“ハイパーカー元年”は、この第2戦から新たにアメリカのスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスを迎え、最高峰ハイパーカークラスはトヨタGAZOO Racingが走らせる2台のトヨタGR010ハイブリッド、規則移行年の特例措置としてLMP1ノンハイブリッドマシンで参戦するアルピーヌ・エルフ・マットミュートの36号車アルピーヌA480・ギブソンに、グリッケンハウス・レーシングの709号車グリッケンハウス007 LMHを加えた4台で争われることとなった。

【順位結果】2021年WEC第2戦ポルティマオ8時間 決勝

 WEC初開催となるポルティマオ、その予選ではアルピーヌがトヨタの2台を抑えポールポジションを獲得。ハイパーカークラスとLMP2クラスのタイム差も少なく混戦が予想されるなか、現地時間11時に気温22度/路面温度37度というドライコンディションのなか、8時間の決勝レースが無観客のもとでスタートした。

 ハイパーカークラスは、PPから36号車アルピーヌA480のニコラ・ラピエールが順調にレースをリード。30分経過時点で、トヨタ8号車GR010ハイブリッドのセバスチャン・ブエミに約6秒のマージンを築く。ブエミから5秒おくれて、今回マイク・コンウェイに代わってトヨタ7号車のスタートを担当したホセ・マリア・ロペスが続いた。

 最初のピットはアルピーヌが45分経過時点の29周目、トヨタ8号車が55分経過時点の36周、7号車が翌37周でピットイン。3台はいずれも給油のみで、タイヤは2スティント目に突入していく。

 ここからアルピーヌが1スティント30~31周、トヨタが概ね37~38周でレースを進めていったため、アルピーヌとしてはピット回数が増える分をコース上で稼ぎ出す必要があった。だが、トヨタとアルピーヌのラップタイムはほとんど変わらない。

 後方では709号車グリッケンハウスがLMP2クラスのなかで奮闘を続けていたが、2時間経過が目前となったところで、ライアン・ブリスコーがLMGTEアマクラスのDステーションレーシング777号車アストンマーティン・バンテージの星野敏をオーバーテイクする際に接触。その弾みで横にいたデンプシー・プロトン・レーシング77号車ポルシェ911 RSR-19を巻き込む3台のマルチクラッシュが発生してしまう。

 グリッケンハウスはガレージでクラッチの修復を行なった後、大幅なラップダウンとなりながらもレースに復帰した。

 1スティントの長さおよびピットシークエンスが異なるアルピーヌとの“見えない戦い”を繰り広げるトヨタの2台は、前を走る8号車のペースが上がらず、開始から2時間15分ほどのところでブレンドン・ハートレーが7号車コンウェイを先行させる。だがその後、3時間を前にしたピットインを終えると8号車が7号車の鼻先でコースに復帰し、再逆転を果たすこととなった。

 しかし、ペースはやはり7号車の方が良好なようで、コンウェイはハートレーとの差をじりじりと詰めていく。そしてレース開始から3時間24分のところで、再度7号車のコンウェイが8号車の前に出た。

 この時点でピット回数が1回多いアルピーヌは、トヨタ2台の55秒ほど後ろ。レースの折り返しを前に、ピット回数でアドバンテージを持つトヨタの2台が実質的にトップに立ったと言えた。

 3時間50分過ぎ、トヨタ7号車には小林可夢偉が、8号車には中嶋一貴が乗り込む。これでいったんアルピーヌがトップに立つが、アルピーヌは折り返しとなる4時間ちょうどのところで5回目のピットに飛び込み、トヨタ7号車が名実ともにレースをリードする形に。7号車の8号車に対するマージンは9秒程度で後半戦に突入していく。

 そのギャップはじりじりと開いていくが、4時間49分経過時点でルーティンピットに向かった7号車可夢偉は、ピット入口の速度規制開始ラインの手前でブレーキをロックさせ、右側のタイヤをグリーンに落としてしまう。

 ブレーキロックの影響が心配されたが可夢偉はタイヤを交換することなく、Wスティントへと突入していった。

 5時間が経過したあと、戦局を大きく揺るがす事態が起きる。LMP2車両(ARCブラティスラバ44号車リジェJS P217・ギブソン)のコースアウトにより、このレース唯一のセーフティカーが導入されたのだ。FCY(フルコースイエロー)ではなくセーフティカーとなったことから、同一ラップのアルピーヌ含む上位3台のギャップが帳消しとなった。

■8号車は序盤からの燃費戦略を成功、7号車はFCYに救われる
 リスタート後、ストレートの速さを活かしアルピーヌ36号車のラピエールが一貴に襲い掛かる。5時間37分経過時点で、ラピエールが2番手に浮上。ラピエールはファステストをマークしながらトップの7号車可夢偉へと迫っていくが、ピットへと向かい一時戦線離脱となる。

 その後残り2時間前後のところでトヨタ2台が相次いでピットに向かい、それぞれロペス、ブエミへと最後のドライバー交代とタイヤ交換を済ませると、アルピーヌが再び先行する。この時点でもトヨタの2台にはピットタイミングに2周の差があった。

 ここで再び8号車は7号車の直前でピットアウトして逆転に成功するが、数周後にはポジションを入れ替え、7号車が先行する形を採る。

 レースは6時間を経過。アルピーヌ36号車は残り2回のピットストップが必要であるのに対し、トヨタは残り1回は確実、加えて燃料スプラッシュのためのピットが必要かどうか、という状況に。トヨタ2台の中では、序盤から燃料をセーブし、7号車に対してピットタイミングじりじりと伸ばしていた8号車の方が、終盤に向けては優位な状況に立っていた。

 6時間31分でアルピーヌはピットへと向かい、アンドレ・ネグラオへと交代。トヨタは6時間53分で7号車、7時間2分で8号車をピットに呼び戻し、いずれも給油のみでコースへ送り出す。

 これでセーフティカーやFCYの介入がなければ、トップ3台ではトヨタ8号車のみがフィニッシュまで走り切れることが明らかとなった。

 7時間20分経過時点で、トップ7号車から3番手36号車までのギャップは約14秒。ここでアルピーヌ36号車が最後のピットに飛び込み、両車の差は1分19秒にまで拡大する。この数字が、7号車にとって“スプラッシュ分”のマージンになるかと思われた。

 ところが、予想外の出来事が。LMP2クラスのハイクラス・レーシング20号車がコース上でストップしてしまったのだ。

 これによってFCYが導入されると、トップのトヨタ7号車はこのタイミングでスプラッシュのためのピットインを決断。コース上の車列が速度を落とすなか作業を終えたロペスは、8号車ブエミの後方わずか約4秒のところでコースへ復帰することに成功する。

 このFCY中のピットにより、スプラッシュを敢行しながらも勝負権を失わずに済んだ7号車ロペスは、残り25分でFCYが解除された後にみるみるブエミとの差を詰めていく。するとトヨタはペースのいい7号車をいったんは先行させるオーダーを出す。

 だが、8号車ブエミもロペスから離れずについていくと、再びトヨタの2台はポジションを入れ替え、残り11分というタイミングで8号車ブエミがトップに。結局、この順位のままチェッカーとなった。フィニッシュラインでの8号車と7号車との差は、わずか1.8秒だった。

 なお、パルクフェルメでTVインタビューに答えたブエミは、最終盤の順位の入れ替えについて「チーム内部の決めごと」とコメントしている。

 8号車はこれにより開幕戦スパから連勝となり、選手権でのリードを広げた。3位にはトップ2台と同一周回でアルピーヌ36号車が入り、修復後も走行を続けたグリッケンハウスの709号車は、54周おくれの総合30位でチェッカーを受けている。

■LMP2も残り6分で首位争いが決着
 LMP2クラスはオープニングラップのターン3でクラスPPのJOTA28号車オレカ07・ギブソンのトム・ブロンクビストが、僚友38号車オレカのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタと接触し、順位を下げる展開に。

 その後、序盤はギド・バン・デル・ガルデが駆るLMP2プロ/アマカテゴリーのレーシングチーム・ネーデルランド29号車オレカがレースの主導権を握った。

 1時間半を経過し2度目のピットが終わると、フェルディナンド・ハプスブルクに代わったチームWRTの31号車オレカがトップに立ち、これにユナイテッド・オートスポーツ22号車オレカのウェイン・ボイドが続く展開に。

 しかしこのあと、チームWRTはピットレーンスピード違反、および青旗無視によって2度にわたるペナルティを受け、後退してしまう。

 中盤にはユナイテッド22号車がリードする局面もあったが、セーフティカー後にはストフェル・バンドーンがドライブするJOTA28号車が首位へと浮上。これに続いたのは後半になってアンソニー・デビッドソンが順位を上げたJOTA38号車で、それぞれスターティングドライバーだったブロンクビストとダ・コスタに代わった最終スティントには、両車の差は1秒以内に。

 最後は残り6分を切り、GTマシンが絡んだタイミングで38号車ダ・コスタが見事にオーバーテイクを決め、母国レースでクラストップチェッカーを受けた。

 ポルシェ2台、フェラーリ2台の争いとなったLMGTEプロクラスでは、開始1時間23分というところでAFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evo(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド)のカラドが、ポルシェGTチーム92号車ポルシェ911 RSR-19のニール・ジャニをパスしてトップへと浮上。

 その後、5時間目に入って僚友のAFコルセ52号車フェラーリも2番手に浮上し、ワン・ツー体勢に持ち込むと、そのままの順位でフィニッシュを迎えた。

■木村武史が好走を見せクラス5位
 LMGTEアマクラスでは、Dステーション777号車アストンマーティンのスタートドライバーを務めた藤井誠暢が序盤に躍動。クラス9番手スタートから数周のうちに次々前方のマシンをパスすると、クラストップに立つ。

 しかしブレーキングでタイヤから白煙をあげるシーンが見られ、藤井は早めのピットへ。さらに星野へと交代したあと、前述のアクシデントに見舞われる。一度はマシンを修復しコースに送り出したが、エンジンのオーバーヒート症状が出たことにより、2時間半を前にコース脇にマシンを止め、リタイアとなっている。

 レース中盤、AFコルセ54号車フェラーリのジャンカルロ・フィジケラがチェティラー・レーシングの47号車フェラーリをパスしトップへ浮上したり、アストンマーティン・レーシング98号車アストンマーティン陣営に加わっているアウグスト・ファーフスがポジションを上げてトップに立つなど、順位は激しく変動する。

 6時間目に入ってセーフティカーが導入された時点でのトップは、チェティラーの47号車。これにチーム・プロジェクト1の56号車、アストンの98号車と続いていた。

 チェティラー47号車とチーム・プロジェクト1の56号車は終盤に入っても激しいトップ争いを繰り広げ、一時は56号車がトップに立ったが、残り1時間を切ったところでLMP2車両との接触により56号車にはペナルティの裁定が下った。

 優勝はチェティラーの47号車フェラーリ(ロベルト・ラコルテ/ジョルジョ・セルナジョット/アントニオ・フォコ)。2位に56号車ポルシェ、3位にAFコルセの54号車という順位になった。

 木村武史がスタートドライバーを務め、好走を見せたケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoはクラス5位でフィニッシュしている。

 WECの次戦は7月16~18日、こちらも初開催となるイタリア・ミラノ近郊のモンツァで第3戦となる6時間レースが行なわれる予定だ。

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