モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは『ランチア・ベータモンテカルロターボ』です。
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“ランチア”というと、モータースポーツにおいてはラリーのイメージが強いという方も多いだろう。それは、ランチア・ストラトスやランチア・デルタS4、さらにランチア・デルタHFインテグラーレといった名車たちの影響かと推測するが、これらのラリーにおける名車たちが生まれたのとほぼ同じような時代に、ランチアはサーキットレースにも力を入れていた。
そんなサーキットレースにおけるランチアのなかでもグループCカー時代に登場したグループ6マシンのランチアLC1、グループCカーのランチアLC2の戦いぶりは富士スピードウェイでWEC in JAPANが開催されていた時代ということもあって日本でも知られているかと思うが、ランチアはその少し前よりサーキットレースへの参戦を始めていた。
ランチアは1975年、翌1976年よりグループ5規定、いわゆるシルエットフォーミュラマシンによって争われることが決まっていた世界メイクス選手権(WCM)への参戦を決定した。
そのベースマシンとなったのはランチア・ストラトス。ストラトスはすでに世界ラリー選手権(WRC)での実績があったことはもちろん、サーキットレースではヨーロッパのGT選手権を戦っていた車両でもあった。
そのストラトスにターボエンジンを積み、派手なエアロを纏わせてグループ5マシンへと改造しWCMへと挑むも、開発時間が不足していたこともありトラブルが多発。そんな状況では最大のライバルであるポルシェ935勢とまともに戦えるわけもなく、わずか数戦にエントリーしただけで、ランチアはWCMからの一時撤退を余儀なくされるのだった。
その失敗から3年後。1979年に向け、再びWCMへと参戦するべくランチアのグループ5マシンプロジェクトがスタートする。そしてそれによって生み出されたのがランチア・ベータモンテカルロターボだ。
ベータモンテカルロがベースマシンに選ばれたのは、ランチアでミッドシップでレーシングカーにできるという条件に当てはまる車両がベータモンテカルロのみだったから、という理由だった。
ベータモンテカルロのグループ5マシン化においてシャシーなどの開発をダラーラが担当。ボディデザインはピニンファリーナが担うことになった。
そのなかでも空力には力を入れていて、ライバルであったBMW320iを風洞に入れたほか、当時そのローフォルムで話題を呼んでいたザクスピードのフォード・カプリターボの風洞テストデータを入手。この2台を徹底的に研究して、ピニンファリーナはベータモンテカルロターボのボディスタイルを生み出した。
こうして誕生したベータモンテカルロターボは、1979年のWCMシルバーストン戦でデビュー。この初陣こそトラブルで奮わなかったが、その後は勝利を重ねて、初年度ながらアンダー2.0リッタークラスの王座を獲得する(当時グループ5マシンで争われていたWCMやドイツレーシング選手権(DRM)では2.0リッター以上と、以下の2クラスに分けられていた)。
マシンの熟成、改良を重ねた1980年もベータモンテカルロターボは、2年連続でアンダー2.0リッタークラスのチャンピオンに輝いたほか、2クラスそれぞれの総獲得ポイントで総合王者を決めるというポイントシステムに助けられた部分もあったが、WCMの総合王座も手にするのだった。
さらに同年途中からエンジンの排気量をわずかにアップしたバージョンをオーバー2.0リッタークラスに投入し、ポルシェを破って勝利をマーク。加えてDRMでもチャンピオンとなるなど快進撃を続けていった。
その快進撃は1981年も止まることはなかった。同年もアンダー2.0リッタークラスのタイトルに加えて、総合王座も死守することに成功した。
この年をもってシルエットフォーミュラが主役の時代は終焉し、1982年より世界選手権はグループCカーによる争いへと移行していくことになる。そんなグループ5時代の末期に、ランチア・ベータモンテカルロターボは、最強のマシンとしてシリーズを席巻したのだった。
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みんなのコメント
正直ポルシェ935 最強のイメージしか無いんだよな。
今のトヨタみたいに、ライバルのファクトリーチームが撤退してから勝った勝ったと騒いでたんじゎなかったかなぁ