ついに本当の市街地をカートが駆け抜けた!
東京からもっとも遠い街とされる、島根県江津市。 2020年9月20日、ここであるレースが開催された。 その名は『A1市街地グランプリ GOTSU2020』である。
日本初の「公道レース」がついに実現! 島根県の小さな街が「歴史的快挙」を成し遂げられるワケ
このレースは、日本国内で初めて、市街地の公道を使って行なわれたレースということになった。日本では各地に点在するクローズドの常設サーキットでレースが行なわれている。しかし公道レースに関しては、北海道や沖縄などで開催計画が持ち上がったことはあるものの、ついに実現はしなかった。
しかし今回は、レンタルカートを使ってのレースではあったものの、開催が実現。関係者の7年にも及ぶ努力が、ついに身を結んだわけだ。
新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定されていた全長約1.7kmのコースは783mへと大幅に短くなり、さらに観戦エリアへのアクセスも厳しく制限された。そういう意味では少し寂しくはなったものの、沿道の住宅や商店からは多くの人が顔を出し、初めて観るレーシングカートの迫力に感心しきりだった。
レーシングカートの最高時速は70km/hほど。そういう意味では、正直それほど速くはない。しかし、コース幅が狭く、観客から近いところを走るということもあり、視覚的なスピードはかなり高く感じられるわけだ。衝撃吸収バリアにマシンが少しタッチするだけでも、沿道からは「おおっ!」という歓声が上がる。
当初の計画では、出走ドライバーは一般公募を目指していた。しかし前例のない初めての公道レースであること、そして新型コロナウイルス感染拡大の影響により、主催者選定のドライバーがレースに挑んだ。
ただこのドライバーラインアップには、スーパーGTやスーパーフォーミュラで活躍中の関口雄飛選手をはじめ、いずれも豊富なレース経験を持つ面々が集結。狭いコースながら、カートを全力で、そしてフェアに走らせた。
では、実際に出場したドライバーはこの大会にどのような印象を抱いたのだろうか。
開催された地元の住民も好意的な感想!
778mのコースを20周して争われたレースに勝利したのは、FIA F4やヴィッツレースに参戦経験のある大井偉史選手。予選3番手から首位に立つと、そのまま逃げ切ってみせた。
大井選手は今回のレースについて、「前から気になっていて、出たいなと思っていたレースでした。雰囲気がすごく良いなと思いました」と語った。
「レース中、ずっと手を振ってくれるんですよ。レース中も手を振り返しちゃおうかと思うくらいで……和むんですよ。フィニッシュ後めちゃくちゃ手を振りました」。
実際にレースが行なわれる前は、地元の住民や商店からの反対意見が噴出するのではないかという危惧もあった。しかし大井選手の言葉どおり、沿道では老若男女問わずドライバーたちに声援を送り、イベント終了後には街を行き交う人々が「どこで観た? やぁ、すごい迫力やった」と口々に語り合っていた。レースの模様は地元のケーブルテレビでも生中継されていて、「録画してあるから、あとで見返そう」という人もひとりやふたりではなかった。
なおこの日の道路占有時間は、6時間と決められていた。衝撃吸収バリアの設置から走行、そして撤収作業までを、この時間内で終わらさなければならなかったのだ。ただこの一連の作業も、信じられないほどスムースに進んだ。9時に設営が開始されると、1時間もせずに準備が整い、レース終了後にはやはりあっという目に撤収作業が完了……予定時刻の1時間ほど前の時点で、コースはいつもの国道・県道・市道に、元どおりになっていた。これは事前の入念な準備もさることながら、集まった260人のボランティアの結束力の賜物だと言えよう。
レースも、運営も、設営と撤収の作業も、全てがうまく行ったと言える日本での公道レース初開催。次回のA1市街地グランプリ、そしてそれ以外の市街地レースの開催は、現時点では未定である。しかし江津はもちろん、日本中いくつかの自治体が、市街地レースの開催に興味持ったのは間違いないはず。そう遠くない将来に、再び市街地でのレースが見られるだろう。
日本のモータースポーツは、また一歩、新たな段階へと踏み出した。
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全然知らなかった!
見たすぎる!