2016年1月12日、フォルクスワーゲンのニューモデル、ゴルフ・トゥーランの発表に先立ち、フォルクスワーゲングループ・ジャパン(VGJ)のスヴェン・シュタイン社長は、最新のフォルクスワーゲングループ本社の状況と、VGJの新たなプロダクト戦略を発表した。
まず、フォルクスワーゲングループの2015年の世界販売台数は993万台で前年比-2%と微減したことを明らかにした。ブランド別で見ると、フォルクスワーゲン、フォルクスワーゲン商用車、MAN(トラック・バス)、スカニア(トラック・バス)が減少し、その他のブランドは増大している。
この世界販売を地域別で見ると、アジアでは特に巨大市場である中国での微減、南米の特にブラジルで経済不況に伴う大幅な減少が顕著で、ディーゼル・エンジン問題の最初の舞台となったアメリカ市場では1.2%という微増となっている。フォルクスワーゲングループにとってそれほど比重が大きくない日本市場では-18.8%減と、南米市場に次ぐ大幅減を記録しているが、これはニューモデルの投入が少なかったことに加え、ディーゼル・エンジン問題発生によるブランドイメージの低下によるものと考えられている。
フォルクスワーゲングループは、ヨーロッパ地域におけるEA189型ディーゼル・エンジンのリコールがドイツの連邦自動車庁(KBA)により承認され、2016年第1四半期から2.0LのEA189型エンジンから順次リコールを行なうことになっている。基本的にはソフトウエアのアップデートで対応し、1.6Lにはエアフローメーターの前に整流用のパーツを組み込むことになる。
また、2016年1月11日~16日、デトロイトで開催されている北米国際モーターショー(NAIAS)のプレス・カンファレンスには、フォルクスワーゲングループ会長のマテアス・ミューラー会長、フォルクスワーゲン・ブランドのヘルベルト・ディース社長がそろって登壇し、その後はアメリカの環境庁との折衝を行ない、アメリカ市場におけるディーゼル・エンジン問題のリコール方法や、制裁金などの課題の解決に向けて動きが加速している。
フォルクスワーゲングループ本社は、さらにブランドを「People’sブランド」と再定義し、原点回帰によるブランドの再構築を行なうことに連携し、VGJは新たに「People First」をブランドスローガンとすることが発表された。
そして今後のプロダクト戦略は「フォルクスワーゲンの安全に対する考え方の訴求」、「パワートレーンの新方針」、「ライフスタイルに合わせたモデルバリエーションの拡充」という3つのビジネス展開を軸にして活動を行なうとしている。
まず最初に、安全に対するコンセプトとして従来のような車種ごとの訴求ではなく、VGJ全体として「フォルクスワーゲン オールイン・セーフティ」というコンセプトを採り入れ、安全思想や先進安全技術などについてユーザーとのコミュニケーションを図るとしている。オールイン・セーフティとは、予防安全、事故発生時の被害低減、事故後の二次被害防止までの3つの事象すべてに対応した先進安全技術を意味し、ドライバー、同乗者、さらには周囲の車や歩行者を事故被害から保護するための総合安全思想を意味する。
VGJのパワートレーン戦略は、「e-mobility」の先駆けとして2014年10月に電気自動車の「e-up!」と「e-ゴルフ)」の2モデルの導入を発表しているが、2車の急速充電システムが日本国内に多数ある急速充電器のすべてに対応していないことが判明したため、デリバリーを延期したことで、再検討が迫られた。
その一方でン初のプラグインハイブリッド、「ゴルフ GTE」を2015年秋に発売し、これを新「e-mobility」商品の第一弾と位置付けている。フォルクスワーゲン本社も新たな「e-mobility」戦略を発表しており、VGJはそれに連携し電気駆動モデルを単なるエコカーではなく、エコ+ファンツードライブを両立させたPHEVを主軸に据えた展開を進めるという。2016年は、新たに「パサート GTE」を導入する。
EVは、「e-up!」の導入を見送り、e-ゴルフは、より長い航続距離を実現する新型の導入を構想しているという。
内燃エンジンは、ガソリンエンジンのTSIが引き続きメイン・エンジンとなり、本来は2015年末から2016年初頭に導入予定だったディーゼルエンジンの導入は、時期は未定ながら引き続き検討するという。
また商品ラインアップは、ライフスタイルに合わせた展開を意図し、新型「ゴルフ・トゥーラン」、コンパクトSUVの新型「ティグアン」を中心に、PHEVの「Passat GTE」、運転の楽しさを追求したスペシャルモデルなどを積極的に導入するなど魅力的な商品展開を行なっていくとしている。
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