働く人を支えるHondaのパワープロダクツは、さまざまな場所で活躍し、重要な役割を果たしている。今回はコンマ1秒の世界で戦う最高峰の二輪レースの世界で使われている発電機に注目してみた。全日本ロードレース選手権に参戦するプライベーター「Team ATJ」はHondaパワープロダクツ製品をどのように使っているのだろうか。(聞き手:千葉知充/写真:永元秀和)
Hondaパワープロダクツの発電機がTeam ATJをサポート
二輪の国内最高峰レース、全日本ロードレース選手権のJSBクラスに参戦するプライベーターがTeam ATJである。その活動をHondaパワープロダクツが支えているというが、どのように使われているのだろうか。まずは中津原チーム監督に話を訊いた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
−ATJはどのような会社ですか。
「Hondaをメインに四輪・二輪・汎用製品の研究開発業務・品質保証サポート業務をする会社です」
※ATJ=AUTO TECHNIC JAPAN(オートテクニックジャパン)https://www.autotechnic.co.jp
−チーム体制を教えてください。
「専属は私を含め4名です。他のスタッフは、通常業務をしながらこうしたレースの時に参加してもらっています。実は、私自身も18年までライダーとして参戦していました。今は仕事でチーム監督をしていますが、もともとは社内の自己啓発クラブに所属し、JSBクラスに参戦していました。選手だったこともあり、今は必要なものがどこに行けばあるのかもわかりますし、もともとすべてやっていたことなのでチーム運営する上でスムーズに流れていきます」
全日本ロードレース選手権に参戦する理由は、人材育成
−全日本ロードレース選手権に複数年にわたって参戦する目的やメリットはなんですか。
「歴史は古く80年代から参戦していますが、基本理念は当初から変わらず人材育成です。人を育てる会社ですから、そこは柱です。また多くの企業が集まりますので、人脈を作る場としても大切です。ここでいい経験をしてもらって成長し、職場でそれを活かした仕事ができるのがメリットです。私がATJの社員として現役でJSBクラスに参戦していたのは15~18年です。その後、これまで培ったことを活かして限られた環境と時間の中で人を育てようと考えました。人をHondaのような企業の研究開発部門に派遣する会社なので、モータースポーツでの経験はとても重要です。また企業PRにもなります。ATJを知ってもらういい機会ですし、こうした活動で人材の確保に繋がることも期待しています」
−今年の目標を教えてください。
「現在、ランキング8位ですが、目標は6位以内に入り表彰台にも立ちたいです。上位は各メーカー系チームなのでプライベーターとしては、1位、2位を争っています。岩田選手とは19年の鈴鹿8耐が縁です。いい成績を残してくれたこともありますが、ATJは人間性を重視している会社なので、岩田選手は人間性も技量もチームにぴったりなライダーだと思います。一緒に活動する上で、弊社の目的をしっかり理解し、必要なときにはメカニックにアドバイスもしてくれます」
−チームはどのようなHondaパワープロダクツの製品を使用していますか。
「EG25iとEU16iを合計3台使用しています。ピット内でタイヤを暖めるのにEG25iを使い、
EU16iはグリッドに持って行きタイヤウォーマーの電源に使用しています。また岩田選手の控え室用のエアコンをもう1台のEG25iで作動させています。3日間のレース中、ずっと活躍しています。弊社はHondaの製品開発に深く関わってきて、どれだけ信頼性に重きを置いて開発しているのかも知っていますので安心、安全な製品として選びました。他には、イベントでE500(蓄電機)にモニターやテレビ、シミレューターを繋ぎ作動させています。とても便利です。また防災用にEU55is(発電機)や環境整備のため、各事業所で除雪機や草刈り機が使われています」
レースに勝つだけではないそれ以外も岩田選手に期待
岩田選手にも話を訊いた。
−予選の感触はどうでしたか。
「もう少しタイムを出したかったのですが、3列目は確保できたので、まあまあの結果です。決勝は、雨予報も出ていますが、雨は上位チームとの差も縮まるので好きな方かもしれません。今年の新マシンは雨のセッティングデータが不足していますが、まだ時間があるので降ればこれからやります」
−Team ATJでの役割は。
「ライダーは、チームから優勝や好成績を求められますが、私は年齢を重ねてからATJに指名されました。チームには若いメカニックもいるので、勝つこと以外の部分にも期待されたのだと思います。チームやスタッフを育てることも私の役割のひとつだと考えています。初年度のチームは、レース経験のないスタッフが参加していたので、レースの初歩的なことから教えながら新しいメカニックも育てるなど人材育成も役割として担っていました」
−普通はそこまでやるものですか。
「それは私の考えです。ただ勝つだけではなく、みんなで一緒にやるのはATJの考えと同じです。メカニックからは、わからないことがあれば聞かれ、逆に自分も聞きます。また若い人が加わればまわりが教えるといういい流れもできています。もちろん、知識、経験を兼ね備えたベテランスタッフも力を発揮しています」
−監督も元ライダーですが、どのようなメリットがありますか。
「メリットしかありません。ライダーファーストで常に動いてもらい、レースに向けていろいろトライできるのも監督のおかげです。またチームとはいい関係ができていますし、全員が同じ方向を向いています。レースでは、四輪のスタッフと関わることもありますが、二輪、四輪の壁はなく、お互いの知識を融合させてチームは理想的に進んでいると思います」
−Enjoy Hondaの説明員を担当してからHondaパワープロダクツへの意識は変わりましたか。
「最近は災害が多く、お客さまの意識が変化し、キャンプ場などで発電機の騒音トラブルの状況などを聞くと、蓄電機のE500を勧めています。今ではすっかりE500のスペシャリストになりました。また地域により、興味を持たれるHondaパワープロダクツ製品が異なることにも驚きました。雪国ではやはり除雪機、それ以外だと芝刈り機や発電機ですね。でもE500や耕うん機は全国どこでも変わりなく人気は高いです」
モータースポーツは人を育てる絶好の場所である
レース活動を通して人を育てているのがTeam ATJである。
中津原監督を含めチームには4名の専属スタッフがいるが、こうしたレースイベントには各部署から社員が応援に駆け付けそれぞれが経験を積んでいる。また監督自身が元ライダーだったということもあり、岩田選手との間には共通の言語があるようだ。
岩田選手も「成績だけを求めるなら若いライダーと契約する。Team ATJが私に求めているのはそれ以外のところが大きい」という。同じ方向を向いてレースをしているこのチームの雰囲気はとても良く、また岩田選手は人材の育成にも貢献している。
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