■普通車1台による単独横転事故
群馬県の上信越道で行われている、壮大なプロジェクト「巨大岩塊撤去工事」が、気が付けば半分近くまで進んできました。
今回、その現場の内部へ潜入することができました。一体どんなことが行われているのでしょうか。
【画像】今しか見れない超レア風景!? これが大迫力の「岩塊撤去工事」の風景です
現場は、松井田妙義IC~碓氷軽井沢IC間にある「北野牧トンネル」付近の斜面にある巨大な岩塊です。
岩塊は高さ70m、体積は9万5000平方メートルという凄まじい大きさです。
1993年に開通した際は存置されていましたが、折しも1996年に北海道の豊浜トンネルで岩盤崩落事故が発生。これをうけて上信越道の岩塊も撤去する方針となっていました。
2017年に着工を迎えました。プロジェクトは10年計画で、最初の6年は工事の準備に費やされました。具体的には足場や、重機用の仮桟橋の設置、そして上信越道のクルマに石が当たらないよう、道路を丸ごと覆う「ロックシェッド」の仮設です。
綿密な準備がようやく整い、実際の撤去工事が、2023年5月にスタートしました。
上信越道の本線からも間近に見える、高さ70mの巨大な足場群は、見るからに異様で目を引きます。SNSなどでも「すごい土木現場」「迫力すごい」など全国的に話題になっていきました。
そうして、NEXCO東日本も2024年6月に現場見学会を実施。好評だったことから、11月に2回目を開催することになりました。今回、そこへ同行しました。
担当者によると、参加定員72名に対し倍率は70倍にも達したそうで、人気のほどがうかがえます。
■ついに現場へ潜入! 実際何が行われているか見てみた
JR横川駅からクルマで約10分の現場事務所へ到着すると、はるか高く見上げるように鉄橋のようなものがありますが、そこが上信越道の高架であり、それに並行した「仮桟橋」です。
標高を上げてその仮桟橋を渡ると、巨大な「インクライン」が待ち構えています。トラック2台を乗せられるインクラインは急斜面のレール上を数本のワイヤーで引き上げられ、一気に工事現場のてっぺんへ到達することができます。
インクラインをのぼりきると、少し見下ろすあたりに掘削面がありました。最初は今より30mも高く、インクライン乗り場からさらに見上げるように岩塊があったといいますが、今やすっかり消滅してしまって、想像ができません。
かつては岩塊をよじ登って、てっぺんを削っていく作業でした。作業ヤードも狭いため、破砕するたびにダンプ1台が行き来するしかなく、効率が悪いものでした。今や岩塊の真ん中あたりまで撤去したため、重機が集結できるほどまで作業ヤードは広くなり、全体の進捗スピードは劇的に向上したといいます。
岩盤を壊すには、通常はダイナマイトが使用されます。しかしすぐそばを一般車が走っているので、発破した石が飛んで来て当たったら大変です。そこで「クローラードリル」「ビッカー」「ブレーカー」といった重機で、少しずつ破砕していく作業となります。
岩というものはガンガン叩いても、なかなか割れません。しかし逆に「引き裂き」には弱い性質があります。そこで、クサビを打ち込んでヒビ割れを起こしていくことで、叩くよりも1/10ほどの力で破砕することができるというわけです。
そのヒビ割れ発生クサビ機である「ビッカー」の実演もありました。先に穴へ突っ込んだサヤの中を、クサビ本体が奥へ突き抜いていくと、「グゴゴゴ」といった音とともに、岩が割れていきます。あとはパワーショベルでダンプへ積み込んでいくだけです。地道な作業です。
■「巨大要塞」の秘密はここに!?
さて、破砕現場の外側へ出ると、垂直の断崖絶壁の真下に、上信越道が小さく見えます。岩盤を取り巻く足場はまだ30m以上の高さがあり、昇り降りするには作業用エレベーターが欠かせません。
足場には一定の高さごとに木の板のステージが敷かれています。これは破砕現場から落ちてくる小石を受け止める役目があります。ロックシェッドだけでない何重もの対策が打たれていることが分かります。
ロックシェッドは本線の高架に荷重をかけないよう、直接地面へ建てられており、やはりゴツい構造になっています。
ほとんどが発泡スチロールで構成されていますが、舐めてはいけません。軽いのに衝撃には強い性質で、全国で盛土に使われているほどのスグレもの。6月にNHKのバラエティ番組「解体キングダム」でこの現場が取り上げられた際、元格闘家の魔裟斗さんがこの発泡スチロールの見本を全力で殴りましたが、ほとんど凹みませんでした。そのときの殴った跡は、いまも現場事務所にサイン入りで展示されています。
上信越道の本線と同じ高さまで下りてきました。真横をトラックや乗用車が駆け抜けていきます。見上げると、さっきまでいた岩塊がそびえています。
すでに岩塊の体積にして49%が撤去済みですが、まだまだ「見上げる迫力」は健在です。
このままいけば来年2025年には撤去がほぼ完了。あとは足場や仮桟橋、インクライン、そして本線上のロックシェッドを片付ける作業が3年間あり、2029年4月にはすべての工程が終わる計画です。
平成初期からの巨大プロジェクトは、いざ始まれば一瞬ですが、それまでには綿密な下準備が進められてきました。
その一瞬のきらめきとも言える現在の「巨大足場」の姿。参加者は「道路や橋を作ったりする土木工事は見てきましたが、『壊す』工事は珍しいですよね。そのなかでもこんなに大迫力な現場は何十年に一度しか見られないと思います。来れてよかったです」と話していました。
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