灼熱の炎天下で争われた2024年スーパーGT第4戦、今季2回目の富士スピードウェイ決戦は、決勝350kmで今季初ポールポジションからスタートを切った8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの野尻智紀/松下信治組が酷暑のなか安定したレース展開で、この新型モデルに待望のGT500初優勝をプレゼント。2位にも100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが続き、ホンダ陣営が逆襲のワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
前日の予選日に続き真夏の太陽が降り注いだ8月4日(日)の富士。午前から日差しが強く、現地で観戦するファンには引き続き厳重な熱中症対策が必須に。13時からのウォームアップ走行は無事に終えたものの、決勝レース開始14時30分の時間帯から終盤に掛けては、集中的な雨や雷の予報もあるなか、ドライバーやチームには不安定な天候に対する心理的、戦略的な準備も求められた。
前回ゴールデンウイーク(GW)開催の富士でワン・ツー・フィニッシュを飾ったニッサン/NMC陣営は、搭載するサクセスウエイト(SW)も響いて3号車Niterra MOTUL Z(60kg)、23号車MOTUL AUTECH Z(46kg)ともに予選トップ10圏外へ沈み、最上位は12号車MARELLI IMPUL Z(26kg)の6番手に。
このトラックを得意とするニッサンZを上回ったのはホンダ陣営のニューモデルで、今季初ポールポジション獲得の8号車ARTA以下、100号車STANLEと64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTがトップ3グリッドを固め、トヨタ陣営の38号車KeePer CERUMO GR Supraを挟んで17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTも5番手に控えるなど、待望の初優勝に向け盤石の布陣を敷く。
依然として強い陽射しが照り付けるなか、パレード&フォーメーションラップ開始を前に気温は猛暑日となる35度、路面温度もレースウイーク最高の56度と、真に過酷な条件でのスタートを迎える。
オープニングラップでは12号車MARELLIのベルトラン・バゲット、そして8番手発進だった14号車ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺がジャンプアップを果たし、それぞれ5番手、6番手に進出。逆に17号車Astemoの太田格之進は7番手から序盤戦を進めていく。
集団内では39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraの295.890km/hを筆頭に、直前のウォームアップから軒並み290km/h台を計時したGRスープラが気を吐き、その14号車ENEOS X PRIMEの福住は9周目のターン1で前方の12号車MARELLIに仕掛ける。しかしここはブレーキングでオーバーシュートし順位変動ならず。続くラップではスタートから首位を行く8号車ARTA野尻が1分30秒363のファステストを記録して逃げていく。
ふたたび13周目に同じシチュエーションでトライした福住は、クロスラインから続くコカ・コーラ・コーナーまでを並走し、アウトから改めて12号車MARELLIの攻略に成功。ここでトップ5に進出し、前方を行くシビックの3台を、2台のGRスープラが追う構図となる。
勢いそのまま、前方の38号車KeePer CERUMO石浦宏明に迫った福住は、20周目の最終コーナーからサイド・バイ・サイドに持ち込むと、約1.5kmのホームストレートを並走してターン1のインを差し、ここで4番手へと浮上してみせる。
良好なレースペースと前回の富士より相対的に伸びてくる最高速を武器に、続く27周目に福住がホンダ陣営の牙城に襲い掛かると、最終コーナーで64号車Modulo、伊沢拓也のインサイドに飛び込んだ14号車ENEOS福住は、そのままホームストレートでも“直線番長”シビックの逆襲を許さず。これで表彰台圏内に進出する。
■ポイントリーダーが見せた快進撃
直後にはダンロップコーナーでGT300車両が停止したことでフルコースイエロー(FCY)が発動するも、今回は通常なら1度切りとなるレース距離3分の1の義務ピット・ウインドウにわずかに届かず。解除のリスタート直後に最後尾でレースを進めていた3号車Niterraから最初のピット作業へ飛び込む。
続くラップでの17号車Astemoを皮切りに、上位陣も毎ラップのようにルーティン作業が始まるなか、トップ10を賭けて陣営内バトルを展開していた11番手の39号車DENSOに『ホームストレートでの危険なドライビング行為』の判断が下され、ここでドライブスルーペナルティが宣告される。
32周目突入でトップ5にいた38号車KeePerが大湯都史樹にスイッチする間、39号車の関口雄飛はピットレーン通過でこのペナルティを消化。35周目には首位8号車ARTAのピットに反応した14号車ENEOSも同じラップで作業へ飛び込んでいく。
ここで松下を42.3秒の作業静止時間で送り出したARTAの8号車は首位を堅持する一方、14号車ENEOSの大嶋和也はアウトラップで38号車KeePer大湯の先行を許すことに。
40周目突入で37号車Deloitte TOM’S GR Supra、続く41周目で36号車au TOM’S GR Supraと2台のトムス勢が最後のルーティン作業を終えると、首位8号車ARTAと2番手の100号車STANLEYに対し、3番手に38号車KeePer、4番手に14号車ENEOSと、ホンダとトヨタ、それぞれの2台による陣営内バトルへと変化していく。
路面温度も30周時点で50度を切り下落傾向が続くなか、36周目にドライバー交代を終えベストタイムを更新していた12号車MARELLIの平峰一貴は、49周目に17号車Astemoに迫るとターン1のブレーキング勝負で競り勝ち、これで6番手へ。
トップ10圏内のポイント争いでは山下健太にスイッチしていた36号車auが、燃料リストリクターの2ランクダウン措置で伸びないストレートスピードに苦戦しつつも、名取鉄平が駆る24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zとの数周にわたるバトルを展開。粘りに粘った61周目のセクター3、ダンロップ脱出からターン13までの加速でZを引き離し、これで選手権リーダーが9番手をもぎ取っていく。一方、その24号車は63周目に左のリヤタイヤがスローパンクチャーを喫し、ここで緊急ピットを強いられる。
トップ5を窺う位置につけた12号車MARELLI平峰はさらに、GT300クラスの表彰台争いに詰まった64号車Modulo大草りきの隙を突き、68周目のダンロップ・コーナーで5番手に浮上。77周のレース終盤は上空に雲が広がるなか、心配された雷雨は訪れず。
これが上位勢では最後のポジション変動となり、8号車ARTAがポール・トゥ・ウインを飾ると同時に100号車STANLEYとともに待望のシビック・タイプR-GT初優勝をワン・ツー・フィニッシュで達成。3位には38号車KeePerが入り、38号車としては3年ぶりの表彰台となった。
そして最後の最後。72周目に陣営内の19号車WedsSport ADVAN GR Supraをパスして8番手としていた36号車auは、チェッカー目前のホームストレートにてガス欠からか、前方の17号車Astemoがスローダウンを喫したことで大逆転の7位チェッカー。選手権争いで貴重な4ポイントを加算し、前半戦を折り返している。
全8戦で争われる2024スーパーGTの次戦第5戦『SUZUKA GT 350km RACE』は、8月31日~9月1日に三重県の鈴鹿サーキットで開催される。
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