純粋で独自性の高い設計が生む強さ
マクラーレンF1は、単に当時の最速モデルなだけではない。世界最高のスポーツカーだった。1995年のル・マン24時間レースでも見事に総合優勝を掴んでいる。その強さの秘訣は、純粋で独自性の高い設計にあるといえる。
【画像】時速200マイル超え フェラーリF40とマクラーレンF1 現代の296 GTBとセナも 全132枚
1980年代後半、マクラーレンはグランプリ・チームとして圧倒的な成功を掴んでいた。しかし、チームのテクニカル・ディレクターを務めていたゴードン・マレー氏は、フォーミュラ1に対する思いが薄れていると口にしていた。
同時に彼は、公道走行できる純粋なスポーツカーを作りたいという気持ちを膨らませていた。数十年に渡って育んできたものだった。「1960年代から、このアイデアを考えてきました」。と以前のインタビューでも答えている。
マレーがフォーミュラ1マシンの開発から退く一方、マクラーレンのチーム監督を努めていたロン・デニス氏が、マクラーレン・カーズ社を設立。2人は公道用スポーツカー、マクラーレンF1という夢の現実へ進み始めた。
1990年5月、マレーが理想とするチームを編成。すべてのスタッフへ、目指すクルマに対する自身の考えを丁寧に説明した。10時間ほどを掛けて。
BMWのNA V12は636psを発生
マクラーレンは当初、フォーミュラ1でエンジンサプライヤーとしてパートナーを組んでいたホンダへ、公道用モデルのエンジン提供を打診した。しかし第1希望は叶わず、BMWと合意。自然吸気の6.1L V型12気筒エンジンが開発されることになる。
他方、マクラーレンの開発チームには、コンポジット素材に詳しい技術者が揃っていた。カーボンファイバー製タブシャシーで、車重は1000kgを切ることが目標だった。ドライバーが中央で、両隣に1名づつ座れる3シーター・レイアウトは、特徴の1つでもある。
また、カーボンファイバー製ディスクの開発に挑んだものの、一般道での速度域で良好に作動させることが難しく、スチール製ディスクへ変更。結果として、車重は目標の1t切りには届いていない。
1994年に自動車誌が実施したテストでは、燃料タンクにガソリンを半分入れた状態で、1138kgが計測されている。それでも軽量といえ、さらにパワフルなエンジンがその重さを充分以上に補った。
BMWが目指した性能は当初550ps前後だったというが、最終的には636ps/7400rpmを達成。1t当たり約559psというパワーウエイトレシオを実現した。最大トルクは、66.1kg-mを4000rpmから7000rpmで生み出した。
0-100km/h加速は3.2秒で、160km/hまでも6.3秒で到達。588psのプロトタイプエンジンを載せた状態で、最高速度はイタリアのナルド・サーキットで371.7km/hに届いている。
薄れることのないF1の堪能経験
1993年にロン・デニス氏は「クルマを正しく操っているのが自分だと知ることが、喜びのすべてです」。と、マクラーレンF1についてコメントしている。その喜びこそ、エキサイティングさの原点といえる。
実際、トランスミッションはドライバーが操る6速マニュアル。パワーステアリングや、ブレーキアシストも備わっていない。
今回の企画にご登場願ったクルマは、GTRレーサーを公道走行可能な状態に改造し、パパイヤ・オレンジで仕上げられている。あいにく、筆者は運転できなかったが。
マクラーレンF1の生産数は、僅か106台。1990年代を代表するスーパーカーとしての地位だけでなく、その貴重性が、価格を大幅に釣り上げた。新車時の30倍以上に。保険会社は、こんな高額なクルマの運転を簡単には許してくれないのだ。
しかし2年前に別のコースで、リアのナンバープレートが熱で変形してしまうほど、じっくり長時間堪能させてもらった経験がある。その記憶は深く脳裏に刻まれ、今でも薄れることはない。
大排気量のV型12気筒エンジンは、スーパーカーにありがちなヒステリックなひと吠えなしに目覚る。驚異的な滑らかさで、鋭く吹け上がる。回転数の上昇とともに、名ユニットの1つらしく、ドラマチックさが高まっていく。
アクセルレスポンスは極めて線形的で、すべての操縦系の反応具合とも一致。シフトレバーのタッチも良く、ステアリングホイールは旋回時の負荷が高まるほど重みが増していく。フィードバックも濃厚だ。
予想を超える速さを残したマクラーレンF1
剛性に長けたカーボンファイバー製のタブは、現代でも通用するシャシーレスポンスを叶えている。ボディは適度にコンパクトで、反応は即時的。ロータス・エリーゼにも近いと思わせるが、そこに、とてつもないパワーが組み合わされている。
改めて確認してみると、マクラーレンF1はフォルクスワーゲン・ゴルフより軽く、当時のホンダNSXとフェラーリ348 GTBの合計出力よりパワフル。パワーウエイトレシオを見れば、ブガッティ・シロンを上回る。その加速力たるや、凄まじいのひとことだ。
最高速度にこだわりのなかったマクラーレンだが、フォルクスワーゲンがドイツに保有するエーラレッシエン・テストコースへ、1998年にF1を持ち込み走らせている。わずかにレブリミットを高めた以外、ノーマル状態だったという。
その時点で、1990年代の最速モデルは時速217マイル(349.2km/h)を残したジャガーXJ220だった。だが、フォーミュラ1ドライバーのアンディ・ウォレス氏が時速240.1マイル(386.4km/h)を達成。余裕の差で、記録を塗り替えてみせた。
それまで、ジャガーXJ220を超える速さを持つ公道用モデルは発売されないのでは、と考えるモータージャーナリストも少なからずいた。その予想が間違いだったことを、マクラーレンF1は軽々と証明したのだった。
協力:トーマス・ラインホルド、マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ
マクラーレンF1(1992~1997年/欧州仕様)のスペック
英国価格:63万4500ポンド(1992年時)/2000万ポンド(約32億円)以下(現在)
生産台数:106台
最高速度:386.4km/h
0-97km/h加速:6.2秒
車両重量:1138kg
パワートレイン:V型8気筒6064cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:636ps/7000rpm
最大トルク:66.1kg-m/4000-7000rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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