モダンなメーカーへ進化したモーガン
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国の老舗、モーガンはすっかりモダンな自動車メーカーへと生まれ変わったようだ。とても感銘深い。
モデルレンジのトップに位置する、BMW製6気筒エンジンを搭載したプラス・シックスに試乗したのは、2019年の6月だった。CXと名付けられた、まったく新しいアルミニウム製のモノコックは、モーガンの新時代を告げるものだった。
それからおよそ1年。今度は、プラス・フォーへ試乗する時がやってきた。新しいモーガンのマーケティング・ツールとして、個人向けの残価設定ローンのような金融プランが、英国では用意されている。
真新しいクラシカルなロードスターが、英国では手頃な価格で乗れてしまう。エントリーグレードのポルシェ718ボクスターや、アウディTTSロードスターより安価に、モーガン・プラス・フォーを楽しむことができる。
興味を抱く読者もいるだろう。とても強気な残価設定額に、そのからくりがある。一括で買う場合でも、プラス・フォーの価格はプラス・シックスよりは安い。
だが、古くからのモーガン愛好家は、4気筒エンジンを搭載した新モデルが6万ポンド(792万円)以上だと聞いて、どう感じるだろう。かなり高めの設定に思える。6万2995ポンド(831万円)という英国価格で提供されるのだ。
110年の歴史を持つブランドのモーガン。プラス・フォーは、4気筒エンジンを搭載した伝統的なモデルとは、まったく異なる個性と性能を備えている。
太陽光を浴びながら宛もなく周遊する
プラス・フォーの動的性能は、大幅に引き上げられた。操縦性や洗練性も、間違いなく進化している。それでも、モーガンらしさは残っている。個性的で憎めない。最新モデルであっても、現代的なスポーツカーほど垢抜けてはいないし、角も残っている。
筆者には、2シーター版の、初代ランドローバー・ディフェンダーといった印象を受ける。良い意味でも、良くない意味でも。カタチはまったく異なるけれど。
新しいモーガン・フォーにも、現代的なクルマのようにドアが付く。狭い車内からはみ出る右腕のために、部分的に取り外すこともできる。かなり簡単に。
モーガン・プラス・フォーにぴったりなドライビング・スタイルは、ドアの上半分を取り外し、ソフトトップを開いた状態だろう。優しい太陽光を浴びながら、特に宛もなく地図に広がるルートを周遊するのが良い。
キャビンは、プラス・シックスよりやや狭く感じられるが、身長の高いドライバーが快適に座れるだけの空間は確保されている。ダッシュボードや操作系のレイアウトは、基本的にプラス・シックスと同じ。
デザインはシンプルで運転しやすい。見た目も良い。スピードメーターはダッシュボード中央の助手席側にあって、不自然に遠い。
インテリアの素材や仕上げは、全般的に良好。メーターやスイッチ類など、あちこちにレトロ・スタイルのデザインが適用され、見惚れてしまう。
258psのBMW製4気筒ターボ
荷室は明らかに狭い。背もたれの後ろに設けられた小さな空間だけだが、小さな旅行かばん2個なら、積み込むのに充分な容量はある。
プラス・フォーは、プラス・シックスと並行して開発された別モデル。エンジンは、プラス・シックスの、BMW M340i譲りの直列6気筒ターボと8速ATではなく、BMW 330i譲りのB48型と呼ばれる2.0L 4気筒ターボを搭載する。最高出力は258psだ。
プラス・フォーではATだけでなくMTも選べる。MTの方がやや価格は安いが、最大トルクはAT版の40.7kg-mから若干低められ、35.6kg-mとなる。加速もそのぶん穏やか。
だとしても、最高出力は258psもあり、0-100km/h加速は5.2秒と充分に鋭い。一般道では、望み通りの活発な走りを楽しめる。ライバルの4気筒エンジンのスポーツカーと並んでも、負けない俊足の持ち主だといえるだろう。
エグゾースト・ノートは荒々しく、気迫を感じさせるもの。ワイヤーホイールを包むタイヤは15インチで、幅は205。太いトルクはタイヤを充分に負かすことができる。ハンドリングも快活だ。
今回はモーガン・プラス・フォーのAT版とMT版、両方を試乗することができた。マニュアルの方は、プラス・シックスのドライビング体験で欠けていた部分を備えている点が嬉しい。
このタイプのスポーツカーの場合、ドライバーはできるだけクルマと身体的につながっていた方が楽しい。タイヤからの情報量も、多い方が望ましい。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
昨年発売された「Plus Six」やこの「Plus Four」の「新世代」モーガンは、
これまで80年以上にわたって造り続けてきた、伝統の「スライディングピラー」式
フロントサスペンションから完全に決別した設計になっているのが
最大の特徴になってますね。