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【試乗速報】ホンダ新型CBR1000RR-RファイアブレードSP「開けられる218馬力! 濡れたサーキットでも怖さがないほど」

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【試乗速報】ホンダ新型CBR1000RR-RファイアブレードSP「開けられる218馬力! 濡れたサーキットでも怖さがないほど」

CBR1000RR-Rファイアブレードが30周年の節目でモデルチェンジ

ホンダ CBR1000RR-Rファイアブレードが2022年型でマイナーチェンジ。エンジンと電子制御機構が熟成され、加速性能向上のため二次減速比も変更された。
そうしたハード面の改良だけでなく、もうひとつ大きな話題がある。上級モデル・SPにはファイアブレード登場30周年を記念した特別仕様車が設定されることだ。

【画像14点】サイレンサーやスマートキーも専用!CBRファイアブレード30thアニバーサリーを写真で解説

「ファイアブレードに思い入れのあるライダーにとって、これが一番魅力かもしれない」。イギリス人ジャーナリストでマン島TT参戦レーサーでもあるアダム・チャイルド氏はそう語るが、走行性能の進化もしっかり確認できたようだ。以下、イギリスのドニントン・パーク・サーキットでの試乗レポートを紹介する。

1992年に登場した「CBR900RRファイアブレード」

1992年は特別な年だった。なぜならホンダがCBR900RR FIREBLADE(ファイアブレード)を発売したからだ。今となっては伝説にもなったこのバイク以降、スポーツバイクの世界は一変した。そのとき16歳の私はバイクに乗り初めたばかりだったが、目にする雑誌のほとんどでファイアブレードは16インチフロントホイールを浮かしながら走っていたし、バイクショーで実車を見たときの衝撃は今も覚えている。「ロード・ゴーイング・スーパーバイク」のあるべき姿を再定義したことを実感したものだ。

他メーカーがさらなるパワーを求めて、より車体が重いバイクや、サーキット走行を主眼としたレーサーのようなバイクを開発しているとき、ホンダは馬場忠雄さんを開発責任者として「軽さとハンドリングの良さ」を求める道を選んだ。ファイアブレードは一般公道でスポーツライディングすることを念頭に設計され、ピークパワーやトルクの数値よりもコーナリングを楽しめることにこだわった。

そうして生まれたからこそ、初代ファイアブレードは歴史に名を残す名車となった。
以降、ホンダはフロントホイールの17インチ化や排気量アップなどの改良を加えていくが、ファイアブレードはライバルたちをリードし続ける存在だった。実際この30年間、マン島TTやスーパーバイク世界選手権で数々の優勝を重ね、世界各国の選手権でも勝利を獲得している。

30thアニバーサリーモデルは、1992年の初代ファイアブレードのカラーデザインを担当した津久井 浩明さんによる「トリコロール・ペイントスキーム」を採用している。ちなみに2022年のマン島TTでジョン・マクギネス(現役TTライダーで最多勝利数23を誇るライダー)とグレン・アーウィン(ニューカマーとしてTT最速のライダー)が走らせたマシンも同じデザインだ。

CBR1000RR-Rファイアブレード「2022年モデルの改良点」

30thアニバーサリーモデルは、初代モデルを知っているオールドファンたちの心を打つだけではない。スタンダードを含む2022年モデルは、メディアや一般オーナーの意見を参考にした改良が施されており、サーキットでの走行性能を向上させている。

エンジンパワーは218psで従来型と同一数値だが、これ以上のパワーは不要だろう。初代ファイアブレードで馬場さんが目指したように、ホンダは最新ファイアブレードをより扱いやすいスーパーバイクにすることにフォーカスした。
エアボックスと吸気ファンネル形状を改良することで中速域での加速性能を向上。吸気ポートの幅を狭くすることで空気の流速を上げ、トルクアップに寄与している。また、ヘッド形状の改良によって圧縮比は13.2:1から13.4:1に高められた。さらにエキゾーストパイプの集合部形状と触媒の変更によって排気抵抗の最適化を図っている。

そうした改良も効いているが、中速域の加速性能を高めるシンプルな方法はスプロケットの変更だ。これまでのファイアブレードの二次減速比はロングだったが、リヤスプロケットの歯数を40Tから43Tとした。これに合わせるようにホイールベースは5mm増となる1460mmとなっているが、おそらくは大きくなったリヤスプロケットと長くなったドライブチェーンに対応するためだろう。

電子制御系にも手が加えられている。ライドバイワイヤのスロットルは扱いやすさを増し、HSTC(いわゆるトラクションコントロール)はよりスムーズに介入するプログラムに見直された。

その変更がどのように影響しているのかを確かめるため、私たちはスリッピーなことで知られるドニントン・パーク・サーキットで2022年型CBR1000RR-RファイアブレードSPを走らせた。

エンジン中回転域の強化&ローギヤード化が効いている

私はドニントン・パークで何度もレースに参戦したことがある。しかし、路面状態はドライよりもウェットであることが多く、雨のドニントン・パークはイギリスのサーキットの中でも滑りやすいことで有名だ。だから、トップブリッジに刻まれた30thアニバーサリーモデル独自のシリアルナンバーを見てもなお、少しだけ不安だった。

しかし私は昨年(2021年)、ファイアブレードをサーキットと公道で走らせているから、バンク角連動の電子制御デバイスが優れていることも知っている。そのときのことを思い起こすと、不安は消え、すぐにマシンに馴染むことができた。

走り出してしばらくの間は、油断ならない路面状態のエリアでは、従来型と同様に1速を使い、高回転域で走らなければならなかった。そして私はベストラインを走り、速いラップタイムを刻むことに集中しすぎてしまったせいで、新型の変更点を探るのをほとんど忘れてしまっていた。

だが、気がつけばせわしなくシフトチェンジをし、豊かになった中回転域のトルクとローギヤード化による加速性能を活用しながら走るようになっていた。最新ファイアブレードは中速域でグイグイと加速していき、シフトアップタイミングまでスムーズに吹け上がっていく。改良されたクイックシフターはまるでレーシングマシンのように素早く、そして滑らかに作動する。

従来型では、最も減速が必要なタイトコーナーでは1速まで落とさなければならなかったし、そのほかのコーナーでも3速から2速に落として高回転域を使う場面が多かった。しかし新型ファイアブレードはそういう操作を求めてこない。高いギヤのままコーナーを駆け抜けていけるのだ。事実、ドニントン・パークではピットレーンを走るとき以外に1速を使うことはなかった。

完全なドライであれば状況はまた違ったかもしれないが、多湿な天候下で慎重にならざるをえないドニントン・パークで、新型CBR1000RR-RファイアブレードSPは218psもあるスーパーバイクとは思えないほど扱いやすかった。

218馬力を電子制御が見事にコントロール

これには優れた電子制御デバイスの貢献度も高いはずだ。標準装備される電子制御デバイスの素晴らしさを表現するには最上級の修飾語を新しく生み出す必要があるほどだ。
路面状態が不安定な中、わずか201kgの車体に218psものパワーを持つマシンを走らせていたのだから、本来なら私はかなりの緊張を強いられるはずなのに、逆にリラックスしていたのだ。下り坂の先にあるオールドヘアピンに進入していくとき、強めにブレーキをかけながらギヤを数段落として車体を傾けていく間も、高性能の電子制御デバイスのバックアップがあることによる安心感の大きさは計り知れない。

ただし誤解してほしくないのは、この乗り物が二輪車である限り、転倒の危険は常にあるということだ。

スターキーズストレートへ続くコピスコーナーの出口では、激しく加速するためリヤタイヤにかかる負荷が強烈になる。だから電子制御デバイスの効果を試すにはうってつけだ。新型の力強い中速域を生かしながら、ラップ毎に負荷を強め、車体を深く寝かせながらコーナリングを続けた。

ライディングモード2=スポーツでトルクコントロールレベルを5に設定すると、その効果をはっきりと体感できる。フルパワーを引き出したとしても、リーンアングルや路面コンディションに合わせて電子制御デバイスがファイアブレードの挙動を安定させてくれる。バイクを直立させてからスロットルをやや開けたまま一定に保てば、バイクはより激しく加速し始める。

減速時の操作ミスなどでエイペックスを通過してしまい、さらに車体を倒し込まなければならないようなとき、新型ファイアブレードは車体がスライドしないようパワーを落としてくれる。その際も点火カットやバックファイヤーが起きることはなく、最高出力を約150psに制限するだけなのに実にスムーズだ。
運悪くウェットパッチや縁石に乗ってしまったときでも、唐突なスライドを抑制してくれる。私は何度かリヤタイヤが一瞬スピンするのを感じたが、反射的にスロットルを戻すよりも前に電子制御デバイスが作動して、パワーを抑えて車体を安定させ、加速状態までスムーズに移行してくれるのだ。

新型ファイアブレードの電子制御デバイスが優秀なことを実感するのに、ドニントン・パークは最適な場所だった。ここで自信を持ってテスト走行できたことに私は感謝すら覚えた。悪天候の下、イギリスで一番滑りやすいといわれているサーキットで200ps以上のバイクを走らせることに楽しさを感じることはめったにないが、新型ファイアブレードは違った。電子制御デバイスだけでなく、シャシーの完成度も高いからこそ、悪条件下でも安心して楽しめるスーパースポーツに仕上がっているのだろう。

今回はサーキットだけでの試乗だったが、ここで体験した改良点は公道でも同じように機能し、ライダーをサポートするだろう。ローギヤード化は、レーシングバイクをロードバイクにする常套手段だ。トルクの増大、中速域での加速性能向上、スムーズで軽いスロットルレスポンス、クイックシフターの使いやすさ、そして各種電子制御デバイスの進化は、一般公道においてもすべてのライダーに恩恵をもたらすからだ。

ホンダ CBR1000RR-RファイアブレードSP(2022年モデル)総合評価

ホンダはユーザーの意見に対して真摯に耳を傾けてファイアブレードを改良した。スロットルやトラクションコントロールの改善はごくわずかなもので、従来型と同時に乗り比べないとその違いを体感するのは難しいだろう。
しかし、電子制御デバイスの進化は素晴らしいと断言できる。

そしてこれはある年代のコアなファンに限定されることだが、最も素敵な改良点はこの30thアニバーサリーカラーだ。このボディを目の前にすると、走行性能の進化は些細なことにすら思えてしまうほど素敵なのだ。

新型CBR1000RR-Rファイアブレードはレースでの活躍も期待させる

最後にHRC UKのチームマネージャー、ハビエル・ベルトラン氏の話を紹介して試乗レポートを終えよう。

「スーパーストックのレースでは、シリンダーヘッドとエアボックスはノーマルでなければならないため、変更できるパーツは限られています。そのため、ホンダが2022年型に施した改良は、私たちのレーシングマシン、とりわけスーパーストッククラスで有利に働くものです。吸気ポートの形状を変更して流速を高めること、エアボックスの吸気口の改良によってでトルクを向上させています。スロットルのスプリングを軽くしたこともそうです。これらはすべてスーパーストックレースで好成績をもたらすでしょう。

電子制御デバイスのいくつかは取り外しますし、ローギヤード化を含む二次減速比の変更はレースでは当たり前に行っているので、これらがレースでとくに有利になることはありません。しかし中速域におけるトルク向上はレースで非常に有効で、ピークパワー向上よりも重要な要素です。
スーパーバイククラスのレースではスーパーストッククラスほどの好影響はありませんが、ピストンなどを換装できるため、とくにスタートで優位に立てる性能を獲得しています。

また、2022年型のトルク向上はレースだけでなく、一般公道でライディングを楽しむライダーの皆さんにも体感してもらえると思っています。これは新旧で比較試乗してもらえるとさらによく分かってもらえるはずです」

試乗レポート●アダム・チャイルド 写真●ダブル・レッド/ホンダ
まとめ●山下 剛

■ホンダ CBR1000RR-RファイアブレードSP 30thアニバーサリー(2022年型)主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:81.0mm×48.5mm 総排気量:999cc 最高出力:160kW(218ps)/1万4500pm 最大トルク:113Nm(11.5kgm)/1万2500rpm
[寸法・重量]
全長:2100 全幅:745 全高:1140 ホイールベース:1460 シート高830(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R200/55ZR17 車両重量:201kg 燃料タンク容量:16L
[価格]
283万8000円
*30thアニバーサリーは日本国内では500台の受注期間限定モデルで、2022年4月17日で受注終了となっている。

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