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アウディ<RS>と<eトロン>から読み解く、アウディが目指す先「表裏一体のスポーツバックスピリット」

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アウディ<RS>と<eトロン>から読み解く、アウディが目指す先「表裏一体のスポーツバックスピリット」

BEVの充実化を進める一方で、強力なエンジンを搭載したスポーツモデルも多く用意するアウディ。そこで気なるのがアウディが本命とするのはBEVか、ハイパーフォーマンスカーなのか、ということだ。それを探るべく相反するように見える2台のアウディとともに真相を探るべく旅に出た。(Motor Magazine2022年8月号より)

アウディ最高峰のエンジン車とBEVの最先端モデルを用意
e-tron スポーツバック(以下、eトロン)とRS 7 スポーツバック(以下、RS7)。かたやアウディの未来を牽引するBEVの代表作、かたやアウディをこれまで牽引してきた内燃エンジンを搭載したスポーツモデルと、2台の立ち位置はまるで正反対である。

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では、ここでeトロンとRS 7を並べて語ることにどんな意味があるのか?一見したところ無関係のように思える「過去」と「現在」の2点を直線で結ぶことで、その延長線上にある「アウディの未来」が見えてくるのではないか。われわれがeトロンとRS7とともにショートトリップに出かけたのは、そんな仮説を立てたからだった。

コックピットへ乗り込む前に、まずは2台のスペックを簡単におさらいしておこう。RS 7は、流麗な5ドアクーペボディに高出力の4L V8ツインターボエンジンを搭載したハイパフォーマンスモデル。その動力性能はすさまじく、ドイツ本国では0→100km/h加速は3.6秒、最高速度250km/h(リミッター作動)と発表されている。なお、試乗車は305km/hで利くスピードリミッターをオプションで装備していた。

駆動システムはアウディ自慢のフルタイム4WD「クワトロ」で、センターデフはトルセンタイプC。また、日本仕様のRS 7は現行世代ではエアサスペンションも選べるようになったほか、通常のメカニカルスプリング仕様も快適性が大幅に改善された。マイルドハイブリッド(MHEV)の導入に熱心なアウディが、このパワフルなV8エンジンにもMHEVを組み合わせた点は興味深い。

もう1台のeトロンは、アウディ初の量産BEVであるeトロンのクーペSUV版。スポーツバックにはベーシックグレードの50、それにモーターが高性能で航続距離も長い55の2タイプが用意されたほか、先ごろ高性能なeトロンSスポーツバックも追加された。

このうち試乗車は55をベースにした「1stエディション」という名の限定モデル。最高出力は300kW(約408ps)で、0→100km/h加速は6.6秒、最高速度200km/h(リミッター作動)と発表されている。

圧倒的な走行性能に加え、予想以上に使い勝手も良い
RS 7で高速道路を走る。スポーツモデルゆえに、ステアリングフィールはやや重めだし、サスペンションも強力なダンパーで支えられている印象が強い。おかげでクルマ全体が極めてソリッドで、ドッシリとしているように感じる。

それでもタイヤが突き上げられた際のショックを穏やかにいなし、荒れた路面でも滑らかにタイヤを追随させるあたりはいかにもアウディらしい。結果として、快適性の高い乗り心地と優れたロードホールディング性を実現している。

ペダル操作に対するレスポンスがシャープなV8ツインターボエンジンは、MHEVを得てさらに鋭さを増した。しかも、アクセルペダルを踏み込んでから実際にパワーが立ち上がるまでの過程が素直なので、ドライバビリティも大きく向上しており、市街地でも驚くほど扱いやすい。つまり、どんなシーンでも運転しやすく、その気になれば恐ろしくパワフルだというパワートレーンに仕上がっていたのだ。

RS 7の5ドアクーペボディも実に使い勝手がいい。ボディ後半に向けて、あれだけルーフが下降しているにもかかわらず、身長171cmの私が後席に腰掛けても頭上には十分余裕があるし、ひざ周りのスペースもたっぷりしている。しかもトランク容量は5名乗車時で535Lで、A6アバントさえ僅差で上回る。これほど実用性が優れたスポーツモデルが、ほかにあるだろうか?

もともとオンロード性能を向上させるために誕生したクワトロが、雪道などでも優れた走破性を披露することはご承知のとおり。以前にも記したが、パワフルで走りがいいのに、室内が広くて快適性も高いというRSモデルの万能性は、「初代RS」のRS 2から30年近くにわたって受け継がれてきた伝統というべきものである。

変に尖ったところがなく常に安心かつ快適な走り
一方でeトロンの印象は、RS 7の正反対と言っていい。V8エンジンが奏でる勇ましいサウンドはなく、アクセルペダルを踏み込めばスーッと流れるように走り出す。そのとき車内を満たしている静けさには、ドライバーを沈静させる効果があるように思う。エンジン回転数が高まるたびに、シフトアップを繰り返すたびに強烈な刺激が味わえるRS7とはまったくの別世界だ。

乗り心地は快適そのもので、タイヤにどんなショックが加わっても、それを優しく受け止めてくれる。その一方で、ほどよいフラット感を味わえるのも嬉しいところ。こうした、本質的に相反する要件を高い次元で両立できているのは、eトロンが重心高の低いBEVであることも関係しているはず。

というのも、重心が低いクルマは基本的にローリングやピッチングを起こしにくいので、ソフトな足まわりでもボディをフラットな姿勢に保ちやすいから。つまり、BEVは乗り心地とハンドリングの両立にも有利なのだ。

同じ理由により、コーナリング時に不安定な姿勢に陥らないのもeトロンの魅力。2.5トンの車重ゆえ、機敏なハンドリングは期待できないが、コーナリングを積極的に楽しんでも安心していられるのは嬉しいポイントといえる。

最高出力408psのモーターが生み出す加速感は独特だ。回転数の上昇につれてトルクが急速に立ち上がる内燃エンジンに対して、モーターは回転数ゼロからの起動時に最大トルクに達するのはよく知られているところ。

それゆえに加速Gは発進時が最大となるのだが、内燃エンジンとモーターの違いはそれだけにとどまらない。私には、エンジンのほうが加速感が硬質に感じられるのだ。これに比べると、モーターが生み出す加速感はどこかヌメッとしていて、トゲトゲしている感じがしない。これは電車が加速する様を思い起こしていただければ、ご理解いただけることだろう。

eトロンの室内スペースは後席を含めて実に広々としている。ラゲッジスペースは616L(5名乗車時)で、今回の比較対象のRS 7さえ凌ぐ大容量だ。しかも、eトロンは前後にモーターを積むフルタイム4WD、つまりクワトロで、そのトルク配分は前後各々のモーターを綿密に制御してコントロールするため、従来のメカニカル式4WD以上に俊敏かつ正確だという。

以前、デビュー前のeトロンプロトタイプをナミビアの砂漠でドライブしたとき、ドリフト時のコントロール性が従来のクワトロ以上のレベルにあることを知って大いに驚いたことを、私はいまも克明に記憶している。

モーターとエンジンの違いはあるが同じ精神を受け継ぐ
スーパースポーツカー並みのハイパフォーマンスクーペとSUVベースのBEVで乗り味が大きく異なるのは当然のことだ。それでもeトロンとRS 7の間には、走りがいいのに快適性が高く、実用性や万能性に優れているという共通項が散見される。これらはアウディの多くのモデルに共通する価値といっていいものだ。

フォルシュプラング2030という名の電動化計画を推進中のアウディは、2026年以降に発表するニューモデルをすべてフル電動化モデルとし、エンジン車の生産を2033年までに終了すると宣言している。環境問題に熱心なアウディにしてみれば当然の選択かもしれないが、「BEVの一本足打法」が持続的な地球環境の改善に本当に役立つか否かについては、今も世界中でさまざまな議論が交わされているところだ。

これはこれで重要な問題だが、ひとりのエンスージャストという立場に立ち返っても、内燃エンジンを積んだ自動車が完全にこの世から消え去ってしまうことには一抹の寂しさを覚える。そして、私と同じ思いを抱くエンジニアやマネージャーがアウディの社内にいたとしても不思議ではなかろう。

いずれにせよ、RS 7のエンジンパワーを存分に解き放ったときの血湧き胸躍る感動を、いまも私の身体が明瞭に記憶していることだけは疑いのない事実である。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

■アウディ RS 7 スポーツバック 主要諸元
●全長×全幅×全高:5010×1960×1415mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000-6250rpm
●最大トルク:800Nm/2050-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・73L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:275/35R21*
●車両価格(税込):1872万円
*試乗車はオプションの285/30R22

■アウディ eトロン スポーツバック 55 クワトロ ファーストエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4900×1935×1615mm
●ホイールベース:2930mm
●車両重量:2560kg
●モーター:三相非同期モーター2基
●モーター最高出力:300kW(407ps)
●モーター最大トルク:664Nm
●バッテリー総電力量:95kWh
●WLTCモード航続距離:405km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:265/45R21
●車両価格(税込):1346万円

アウディ最新動向:待望のRS 3が登場。Q4 eトロンの日本上陸も迫る
サーキット走行もこなすコンパクトスポーツに、新作BEVはRWD。どちらも走りへの期待大
RS 3 スポーツバック/セダンは直5ターボエンジンを搭載。最高出力400ps、最大トルク500Nmと非常にパワフルなモデルだ。日本での販売価格はスポーツバックが799万円、セダンは818万円。さらにアウディでは第3弾のBEVのQ4 eトロンも日本で発表された。全グレード1モーター(最高出力150kW、最大トルク310Nm)の後輪駆動で、一充電走行距離は516km(欧州値)を確保。デリバリー開始は2022年秋以降の予定だ。

[ アルバム : アウディRS7スポーツバック × eトロン スポーツバック ファーストエディション はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • リアドアまで綺麗にサッシュレスを採用してる
    高性能大型クーペはアウディにしか存在しない。
    個人的にはアナログスイッチやメーターを残しつつV8ターボとDCTを組み合わせた先代S7が最も魅力的。
    V6スーパーチャージャーの先代A7も捨てがたいが、その辺は好みかな。どちらにしろデザインや動力性能共に唯一無二な存在。
    こんなワイドアンドローで綺麗なクーペシルエットのフルタイム四駆は四駆メーカーであるアウディにしかない。
    その装いはEVのイートロンGTが受け継いでるが
    やっぱりまだまだ内燃機関を乗りたいよね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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