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AMGの手で「6.0L化」されたE 60 W124型 メルセデス・ベンツ500 E(2) 本物としての風格

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AMGの手で「6.0L化」されたE 60 W124型 メルセデス・ベンツ500 E(2) 本物としての風格

6.0L V8エンジンを載せたE 60 AMG

1991年に発売された、メルセデス・ベンツ500 Eの英国価格は5万8949ポンド。レカロ・シートは電動で、クルーズコントロールとエアコンは標準装備ながら、明らかに高額だった。レザー内装は、約1800ポンドのオプションだった。

【画像】本物としての風格 W124型 メルセデス500 E/E 60 AMG 同時期の190E エボ 最新AMGサルーンも 全140枚

価格だけでなく、左ハンドルのみという理由で、英国での反響は小さかった。1994年の生産終了までに、グレートブリテン島へ正式に輸入されたのは29台だけだ。

対して、北米には1528台が輸入された。バブル景気が減速していた日本にも、1184台が運ばれている。合計の生産数は1万479台。これには、1995年に納車された120台も含まれる。

モデル後期のE 500には、リミテッド仕様が登場。ブレーキとフロントアクスルは、V12エンジンのSL 600譲りで、17インチのエボリューション・アルミホイールを履き、バーズアイ・メープルのウッドトリム、レザー内装などで差別化された。

380psの6.0L V8エンジンを載せた、E 60 AMGも45台が作られている。今回ご登場願った1台もそれ。メルセデス・ベンツが保有する、1100台のクラシック車両の1つだ。

フルオプションの1995年式で、塗装はサファイア・ブラック。ヒーター内臓のレザーシートだけでなく、ステアリングコラムも電動で調整可能。エアコンも備わる。

ツートーン塗装と17インチ・アルミホイールを履く、LEパッケージでもある。通常のE 500と見た目で異なる点は、リアのエンブレムと四角いマフラー程度だ。

ちなみに、非公式に100台前後のE 500がAMG仕様へ変更されている。その多くは、日本へ届けられたという。

本物のスポーツサルーンとしての風格

1990年代半ばのAMGは、まだ独立した組織だった。メルセデス・ベンツ・ブランドを擁するダイムラー・ベンツの本社から、約25km離れたアッファルターバッハに工場を構えていたことは、変わりないが。

AMGへE 500が届けられると、職人が手作業で組み上げたM119型の6.0L V8エンジンをドッキング。専用サスペンションも組まれた。

2024年に見るE 60は、思いのほか小柄。チューニングされた大型リムジンというより、落ち着いた、本物のスポーツサルーンとしての風格を漂わせる。この匿名性が、E 500の魅力といえるだろう。

とはいえ、四角いボディを支えるタイヤが外へ張り出した低いスタンスは、単なるタクシーのベースモデルとは一線を画す。特にこのE 60 AMGの場合は。猛烈な加速力を秘めたメルセデス・ベンツとして、特定のファンにとって垂涎なことも理解できる。

17インチホイールを包む、245/45サイズのタイヤは、当時ではかなり太いものだった。今では平均的なサイズに思えるが。

ボンネットを開くと、6.0L V8エンジンがミッチリ詰まっている。キャビンを隔てるバルクヘッドには、大量の断熱材が貼られている。プラスティック製のカバーで覆う時代が、既に始まっていたこともわかる。

AMGが公証した最高出力は380psで、最大トルクは59.0kg-m。だがこれは、メルセデス・ベンツが生産していた6.0L V12エンジンを考慮し、控え目に見積もられた数字だといわれる。

吹き飛ばされるように突き進むボディ

インテリアには、当時の合理性が漂う。車載機能で重要なものの多くは、ステアリングコラムへ集約。ヘッドライト・スイッチは、定番のロータリー・タイプだ。

レカロ・シートは上半身をしっかり固定。全方向で視界は良好。シートとドアパネルの賑やかなグラフィックが、少し雰囲気に調和していない。

リミッターで抑制された最高速度は、249km/h。今では珍しくない自主規制だが、当時は立派な領域だった。0-100km/h加速は5.5秒で、2024年でも速いと表現できる。

燃費は、丁寧に右足を操れば7.0km/Lを超える。1970年代の300 SEL 6.3や450 SEL 6.9では、到底叶えることができないエネルギー効率だった。

操縦性は、期待以上に素晴らしい。グリップ力は甚大で、緩やかにボディロールし、乗り心地の犠牲は最小限といっていい。

ASRと呼ばれたトラクション・コントロールは、オフにできない。380psを一気に放とうとすると、必要なだけパワーが絞られる。

それでも、アクセルペダルを踏み倒せば、1735kgのボディが吹き飛ばされるように突き進み始める。ホイールスピンはしないが、背中がシートへ押し付けられ、内臓が後方へ偏ろうとする。

AMGが組み上げた6.0L 4カムのV8ユニットには、可変バルブタイミングが実装され、回転は滑らか。洗練された質感のまま、6200rpmまで吹け上がる。マルチバルブのメカノイズを響かせながら、30秒足らずで最高速へ迫る。

想像以上に慎重に仕立てられたW124

本当に強力だと感じるのは、3800rpm以上。4速しかないオートマティックは、すかさずキックダウンし、適切にクロスしたギアで積極的な走りを支える。

タイトコーナーは、あまり得意ではない。トラクション・コントロールが介入し、ドライバーの興奮を鎮める。ダッシュボード上で点滅する、警告灯とともに。小さなクリップをコンピューターに挟むと、キャンセルできるという噂もあった。

高速コーナーでは、ピタリと安定。ボディロールは抑制され、乗り心地はしなやか。ステアリングホイールの手応えが頼もしい。落ち着いた気持ちで、長距離を高速移動することは容易い。

AMGが手掛けたE 60は、想像以上に慎重に仕立てられている。穏やかに運転している限り、車内は平穏といっていい。内装の設えは高品質で、重厚感すら漂う。

300 SEL 6.3や450 SEL 6.9でも、同等の喜びを享受できるかもしれない。とはいえ、380psを発揮するとしても、現代的で優れたW124型であることにも変わりはない。賢明なメルセデス・ベンツとして、E 60は所有体験を深く満たすに違いない。

番外編:500 Eより先にV8を載せたAMG

W124型をチューニングする以前から、AMGは15年程度の歴史を有していた。だが、確固たる評判を築いたのは、このE 60の開発前後から。最終的には、1999年にメルセデス・ベンツによって買収されている。

AMGは500 E以前の1980年代に、5.6Lへ拡大されたM117型ユニットを300 Eへ搭載。4カム4バルブのヘッドを強化し、360psの最高出力をミディアムクラスへ与えた。

また6.0L仕様も設定。こちらは380psを叩き出している。バランス取りされたV8エンジンは、初期のシボレー・コルベット C4より強力だった。これらの仕様はハンマーと呼ばれ、約30台が作られている。

最高速度は286km/hから297km/h。0-100km/h加速は5.0秒を切り、0-400mダッシュを13.5秒でこなした。同時期のイタリアン・スーパーカーに並ぶ動力性能といえ、世界最速のサルーンでもあった。

新車時の価格は18万ドルと、お値段もスーパーカー級。ドライブトレインだけでなく、サスペンションも強化され、追加のエアロキットで違いが主張された。空気抵抗を示すCd値は、0.35だったという。

協力:メルセデス・ベンツ・クラシックセンター
撮影:トム・ケーニッヒ(Tom Konig) /ピエール・ジョーネ(Pierre Johne)

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みんなのコメント

1件
  • breadvan
    環境 燃費考えなくていい 今の感覚で言うと恐竜みたいなもんだな。
    まあいい時代だったと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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