現行モデルでは舗装路での乗り心地や走りを向上
1979年に登場したメルセデス・ベンツ最強クロスカントリービークルであるGクラスは2018年にフルモデルチェンジを受けて現行モデルにまで進化させられている。その完成度は素晴らしく、2018~19年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたなら満点を配するつもりでいたほどだ。
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それまでのモデルはクロスカントリー専用と考えれば納得はできたが、オンロードでの乗り心地の悪さや、ステアリングギヤ比が大きく多大な操舵量が必要な面など、実用的とは言い難かった。
それが現行モデルになってからはほかのメルセデス・ベンツ車と同等の乗り心地や質感を実現していて、走行性能も格段に高められていたのだ。前後バネ下に重いアクスルを配した4輪駆動レイアウトゆえ、凸凹路面を高速で通過する際にはバネ下重量の大きさが災いして路面追従性を損なう。さらに前後リジットアクスルゆえ左右輪が干渉しあい、舗装路においても轍などでワンダリングが悪化し、直進性を害していた。
現行モデルではそうした負の遺産が一掃され、モダンな高級車としても相応しい、舗装路での走行安定性や快適性を与えられている。だからといってオフロードの走破性が犠牲にされたわけではない。大きなグランドクリアランスに高いフロア、アプローチアングルやデパーチャーアングルなど伝統的なオフロード適合性を引き継いでおり、最深渡河性能も70cmを可能とするなど逞しさは微塵も衰えていない。
言われなければディーゼルとは気がつかないほどの静粛性!
そんなGクラスに昨年追加された魅力的なモデルが350dだ。注目すべきは3リッターの直列6気筒クリーンディーゼルターボエンジンである「OM656型」を搭載すること。ほかのモデルは高価なハイオクガソリン使用が指定されるが、ディーゼルは安価な軽油が指定燃料となる。100リッターの燃料タンクを満タンに満たせばハイオクガソリン仕様とは大きな差が生じる。加えて走行燃費にも優れるから燃料代はGクラスとは思えないほど経済性に優れていることになる。
直6ディーゼルターボエンジンは、Sクラスに搭載されるガソリンエンジンの「M256型」と基本設計を共有していて、90ミリのシリンダーピッチとシリンダー間の厚みを8ミリに抑えたことで全長を抑えたコンパクトなエンジンに仕上げられている。シリンダーブロックは軽量なアルミニウム製であり、ピストンはスチール製とする最新メルセデス・ベンツエンジンのテクノロジーが注がれていて、燃焼効率の向上を可能としているのだ。
エンジンのパワースペックは最高出力が286馬力。最大トルクは600N・mを1200回転という超低回転域から発生し3200回転まで維持する。これに9速のフルオートマティックトランスミッションを組み合わせ0-100km/h発進加速は7.4秒という俊足を誇る。このトランスミッションはトルクコンバーターをアルミニウム製とし、ギヤハウジングにはマグネシウム製を採用。軽量化を図った結果従来の7速仕様と比較しても1kg軽量化されたという。
実際に走らせてみると、静かで快適な室内と確かな手応えで正確性の高いハンドリングに驚かされた。エンジンマウントに可変式を採用していて、振動を押さえ込みつつしっかりとしたリジット感を引き出せている。6気筒の特性的にスムースな回転フィールと相まって知らずに乗り込めばこれがディーゼルとは気がつかないだろう。
インテリアの質感も大幅に進化したポイントだ。大型の液晶パネルによるメーターやインフォテイメントはメルセデス・ベンツのトレンドに則った最新仕様となり、シートや装備など最高級なものが奢られている。車体の大きさの割に従来窮屈だった後席も居住性が見直され、シートバックにリクライニング機構が備わるなど快適になった。
堅牢なラダーフレームを持つ高いシャシー剛性と優れた悪路走破性、それでいながら快適な室内を低燃費かつ低コストで得られるのが350dの魅力だ。それが1100万円と旧モデルより割安な価格設定で手に入れられる。災害時等悪路での安心感も加わり、Sクラスよりも上位に位置付けても差し支えないとさえ思わせるほど。G350dはもっとも手に入れたいクロスカントリーモデルとして常にリストアップしておきたい。
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