従来的なMでもオールドスクールではない
新しいBMW M2に組まれるアダプティブ・ダンパーは、フロントがBMW M4用で、リアはM3 ツーリングの改良版だという。サスペンションの特性は、M4と比較するとリアアクスル側がソフト。フロント側がハードに設定されている。
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これは110mm短いM2のホイールベースを意識したもので、動的なダイナミックさを最大限に引き出そうとした結果。シャープな回頭性を叶えつつ、過度にドリフトしすぎない粘り強いリアアクスル側の特性を求めている。
「多くのお客様に、M4とM2、それぞれのシャシー設定を気に入っていただけるはずです。わたしたちの目標は、完璧なM2のコンセプトのベストを引き出すことでした」。開発で主任技術者を務めた、BMW M社のダーク・ハッカー氏が説明する。
その実現のために、電動パワーステアリングや電子制御のMリミテッドスリップ・デフ、スタビリティ・コントロールへも入念なチューニングが施されている。トラクション・コントロールの設定には、10段階が用意された。
「新しいM2は、従来的なMモデルといえます。でも、オールドスクールなわけではありません」。ハッカーが付け加えた。
果たしてその仕上がりは、出色の出来だった先代のM2からアップデートされたのだろうか。正直なところ、明言は難しいかもしれない。
先代との明確な血縁関係は感じ取れない
最新のM2はしなやかにタイヤが路面へ追従し、コーナリング時の落ち着きが増している。エンジンの広い回転域で56.0kg-mもの最大トルクが放たれ、至って高速でもある。
シャシーバランスは秀逸で、アンダーステアが巧みに抑えられている。若干曖昧なブレーキペダルの感触を除いて、動的特性の仕上がりは成功といっていい。
しかしF87型のM2 コンペティションが備えていた、意欲的な回頭性には迫れていないことは間違いないだろう。若干神経質だったとはいえ、先代は理想的なルートで深い感動を与えてくれた。
新しいM2では、サスペンションが支える軽くない車重を意識させられる。落ち着きを失うことは殆どないとはいえ、メカニズムが必至に質量と戦っている様子が伝わってくる。同時に、10%ほど安定方向に振りすぎている印象も伴う。
アクセルペダルで姿勢やラインを調整するには、相当に攻め込んだ領域へ踏み込む必要がある。幅が285もあるリアタイヤは、M2には少々太すぎるように思う。
今回の世代交代は、初代からの漸進的な進化ではなく、大きな変容だといっていい。F87型と新しいG87型との間に、明確な血縁関係は感じ取れない。新しいM2は、M4の入口側にあるように思える。
トランスミッションも、そんな印象を強めている。デュアルクラッチ式から通常のトルクコンバーター式へ交代し、非常に滑らかな変速を叶えているが、Mモデルとしてはシャープさが弱いのだ。
カーブが連続する区間では輝ける
もう少し時間を掛けて、2代目M2を味わう必要があるだろう。アメリカ・アリゾナ州で開かれた発表イベントの指定ルートは、速度域が低く直線が多かった。
短時間だが、カーブが連続する区間へ足を伸ばし、すべての電子アシストをオフにするとM2は輝いた。ソフト・コンパウンドのミシュラン・パイロットスポーツ4Sは、荒れた路面でグリップ力が薄まると、大きな自由度を与えてくれた。
最初はフロントが一瞬緩くなり、その後、リアは望んだだけ。懐が深く、挙動は一貫しているようだった。チャレンジングなルートでの高めの速度域でも、高精度なステアリングやサスペンションが、信頼感を生んでくれていた。
トラクションが低下する湿った路面では、優れたバランスを解き放てるに違いない。日常的な速度域で、最高のエンターテイメントを享受できるかもしれない。
かといって、過去を塗り替える最高のM2とまではいいにくいだろう。F87型のオーナーは、乗り換える前に熟考されることをオススメしたい。従来より速く洗練されているが、同じくらい刺激的で豊かな充足感を与えてくれるわけではなさそうだ。
惜しまれる初代の鮮烈で若々しい味わい
Mモデルの場合、中期のフェイスリフトで磨き込まれることもある。先代のM2では、可能性を引き出された後期型が最高だった。
M5 コンペティションからM5 CSへ進化するまでにも、数年を要している。モデルを磨き込むのに、相応の時間が必要なことは理解できる。M2にもCSが控えているかもしれない。1600kgを切るような、ライトウェイトなCSLの可能性もある。
誤解しないで欲しいのは、新しいBMW M2も素晴らしい仕上がりにはある。クラス上のM4との共通性すら感じさせる。ただ、コンパクトな初代M2の鮮烈で若々しい味わいを受け継いでいないことが、筆者には惜しまれるのだった。
BMW M2 クーペ(北米仕様)のスペック
英国価格:6万4745ポンド(約1042万円)
全長:4580mm
全幅:1887mm
全高:1402mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:218-222g/km
車両重量:1725kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:460ps/6250rpm
最大トルク:56.0kg-m/2650-5870rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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