一見すると電気自動車と気づきにくい
text:James Ruppert(ジェームズ・ルパート)
【画像】純EVのフォルクスワーゲン・タイプ2 ID.3やID.4、バギーも 全96枚
photo: Max Edleston(マックス・エドレストン)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
純EVへコンバージョンされたフォルクスワーゲン・タイプ2。日産リーフ用の電気モーターは89psの最高出力が与えられ、力強くタイプ2を押し進める。48歳の車齢を示すように、各部からガタガタと振動音が聞こえてくる。
停まっている状態では、ブレーキサーボがブーンとノイズを出す。もうじき改良を加える予定だという。
知っている人なら、フラット4ガソリンエンジンが放つバラバラという脈動がないことに気づくはず。でも外から見ている限り、電気自動車だと気づく人は少ないだろう。
オリジナルの通り、ペダルは3つある。エンストすることなく、急な丘も登り切る。国立公園の周辺をゆっくり流すのにも丁度いい。
ダッシュボードには、明るく光るターボ・スイッチが付いている。押すと加速が鋭くなる。
ステアリングには、パワーアシストが付いていない。狭い道ではステアリングが重く、切り返しが大変かもしれない。こちらもアップデート作業を進行中だという。
eダブからフォルクスワーゲン・タイプ2のキャンパーを借りるなら、1日80kmくらいの移動に留めておいた方が良い。航続距離30km程度の余力を残し、キャンプサイトでのんびり一晩明かすうちに、バッテリーを満充電にできる。素晴らしい。
純EVが良いのか悪いのか、という基本的な議論はある。レアメタルを掘り出して世界中へ輸送し、バッテリーを製造することが本当に環境へ優しいのかという疑問もある。ライフサイクルでは、どちらのコストが安いのかという比較も今回はしないでおこう。
もとのエンジンで走るクルマに戻せる
フォルクスワーゲン・タイプ2のキャンパーも2代目ゴルフGTIも、空冷のポルシェ911も、クラシックカーと呼ばれる部類だ。電気自動車へコンバージョンするかしないかは、オーナー次第ではある。
少なくともレイシーは、純EVへのコンバージョンに需要があることを証明した。正しく設計し、安全性が保たれる必要があるため、安い作業ではない。ノースヨークシャーにあるeダブ・サービシズ社からの帰り道、いろいろなことを考えさせられた。
彼の進めるコンバージョン方法は、お手本的な内容だと思う。必要なら、もとのエンジンで走るクルマにも戻せる。レイシーの手法は高く評価されるべきだろう。
電気自動車になったフォルクスワーゲン・ゴルフGTIのエンジンも、箱詰めされ保管されているはず。ガソリンを再び燃やすため、生き返る可能性もある。
もしオーナーが望むのなら、クラシックを電気自動車にコンバージョンすればいい。しかし筆者の考えでは、歴史的に重要で珍しいクルマを所有するという意義を失うようにも思える。
クラシックカーを維持し日常的に乗るには、驚くほどのコストが必要になる。淡白な純EVが嫌いでなければ構わない。だが、エコな美徳を得るためのコンバージョンに掛かるコストも、安くはない。
筆者は、化石燃料がエネルギー源だとしても、クラシックカーはそのままでいいと思う。わたしの小さなE21型BMW 3シリーズは、控えめな快適さを保ちながら往復600kmを走りきってくれた。しかも、わずかな給油時間のみで。
純EVコンバージョンにかかる費用
既存のガソリンエンジン・モデルを、純EVへコンバージョンしてくれる英国のeダブ・サービシズ社。いくつかの選択肢を提供している。
例えば、フォルクスワーゲン・タイプ2を純EVにコンバージョンするキット、eキャンパー25tにはテスラ社製の駆動用モーターが付いてくる。オリジナルの水平対向4気筒エンジンの4倍近い馬力を有し、トランスミッションやクラッチが不要になる。
リチウムイオン・バッテリーの容量は25kWhで、航続距離は実際の利用環境で96km程度。7kWの充電器を用いれば、4時間で満充電にできる。
この内容で、英国では3万5000ポンド(504万円)が請求される。もちろん、タイプ2の車両代は含まれていない。
4万7000ポンド(676万円)まで奮発すれば、現実環境で約354kmの航続距離が得られるeキャンパー75というキットを選べる。40kWの充電器を用いれば、80%まで90分で充電可能な充電性能へアップグレードもされる。
ちなみに、中古のフォルクスワーゲン・タイプ2を買ってきて新車のようにレストアするのに、英国なら1万5000ポンド(216万円)から2万ポンド(288万円)は必要だろう。車両の状態にもよるけれど。
英国、eダブ・サービシズ社のコンバージョン費用は安くはない。しかし、その仕事内容は一流ではある。
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