“音速の貴公子”アイルトン・セナが初めてF1GPを制したのは、ポルトガルのエストリルサーキットだった。デビューから1年後、1985年のことだ。そのときのチームは、マクラーレンではなく、同じ英国のロータス。今からちょうど30年前の1988年にマクラーレンへと移籍したセナは、当代一級のホンダ・エンジンを得て、その後、数々の伝説を打ち立てていくことになる。
1994年。イタリア・イモラサーキットで行なわれたサンマリノGP。“タンブレロ”でセナは突然、逝った。享年34歳。初勝利を挙げたエストリルサーキットの名物最終コーナー“パラボリカ”には、アイルトン・セナの名前が付け加えられ、慰霊碑も立てられている。
もしこのクルマのオーナーだったら #05──ランボルギーニ アヴェンタドールSに長距離試乗
マクラーレンがP1に次ぐ最上級ハイパーカー“アルティメットシリーズ”の最新作を、その名も「セナ」とした理由はシンプルだ。ロードカーでありながら、サーキット走行を主眼におくという、これまでのマクラーレン製スーパーカーとはまるで異なるコンセプトをもって開発されてきたからだった。つまり、セナと同様、サーキットでは妥協しない、というマクラーレンの意思表示である。
その実力を確かめるべく、ボクはエストリルサーキットを訪れた。セナ初勝利のサーキットで、マクラーレン・セナを初めて試す。なんとも心憎い趣向じゃないか。
マクラーレン・セナは、とにもかくにも、サーキットで速く走るためのテクノロジーだけを満載した、正にマシンである。
世界限定500台。お値段1億円というハイパーカーであるにも関わらず、正式デビュー前にはその行き先がすべて決まっていた。80年代後半にセナとマクラーレンがみせつけた圧倒的なパフォーマンスを知るスーパーカーマニアの目には、ハイパーカーとして30年ぶりに蘇った“コラボレーション”が、とてつもなく刺激的なものと映ったに違いない。ブランドのもつ力というものだ。
公道を走るための最小限の装備を与えられ、法規にしたがうための仕様を有しているとはいえ、それはレーシングカーだと言っていい。そのことは、スタイリングだけを見ても明らかだ。なにしろ、まるでエアロデバイスの博覧会のような出で立ちだ。セナに乗って気軽に房総半島へドライブしようなどとは誰も思わないはず。これまでのマクラーレン製スーパーカーなら、たとえP1であっても、コンビニまで乗って行くことも厭わずにいられたというのに。
すべては、速く走るために必要なカタチ、システムなのだ。4リッターV8ツインターボエンジンが生み出すマキシマムパワー&トルクは、なんと800ps&800Nm。車重はわずかに1200kgだから、パワーウェイトレシオ1.5と、これまたロードカーが謳っていいレベルの数値ではない。
とはいえ、セナをその名に恥じない“サーキットマシン”に仕立てたポイントは、そのエンジンパフォーマンスに拠るものではなかった。
セナがレースカーに近いと謳う所以は、ロードカーとは別次元のシャシー性能とエアロダイナミクス性能にこそある。技術的な話を始めると尽きないので詳しくは記さないが、この2つの面と軽量化に関して、サーキット使用を念頭に、マクラーレンはまったく妥協しなかった。
ヘルメットを被り、レーシングスーツを着て、サーキット走行に臨んだ。ピットレーンを走り出した途端、その動きの軽やかさと、鼻先が両手に繋がっているような感覚に驚く。路面との近さも尋常ではない。とてつもなくソリッドな乗り心地で、やっぱりコンビニになんて行きたくならない。
コースに出て、ちょっとアクセルペダルを踏み込めば、すぐさまリアが左右に揺れた。優秀な制御システムのおかげでスピンモードに入ることはない。けれども、“レースモード”におけるスロットルレスポンスはとても敏感で、丁寧なアクセルワークが必要だ。
キーンと金属音がルーフから降り注いだ。はじき飛ばされるように加速する。それでも、地面から浮き立つ感覚など一切ない。むしろ、舗装面にもぐり込んでいくような印象さえある。車体の薄ささながら、立体としての自分もだんだんと平たくなっていくような感じがした。
恐ろしいまでの加速だ。右アシの反応に忠実なのはアクセルだけじゃない。ブレーキはさらに素晴らしい。否、ブレーキ性能をすぐに使いこなすことなど、プロでもない限り無理だ。車体の軽さは、加速のみならず減速にも大いに効く。
右へ、左へ、思いのままに動く。けれども、だんだんと両手が辛くなってきた。ロードカー離れしたダウンフォースのおかげで、マシーンは路面に張り付いたままで、とても安定している変わりに、動かすことがいっそう難しい。自分の筋力不足を嘆くほかなかった。
残念ながら、公道で試すことは叶わなかった。けれども、薄いカーボンシェルに、まるで割れた腹筋のようにアルカンターラパッドを七枚貼付けただけのシートに縛り付けられて、ちょっとドライブに出かける、なんてことは、どうにも辛そうだ。
セナを駆るなら、やはり、目的地にサーキットがあって、そこで数周でもいいから目一杯、車両のパフォーマンスを楽しむことができる、という歓びが欲しい。それがなければ、ガレージから引っ張りだすことさえ、難しいだろう!
その代わり、マクラーレンによる最新の制御テクノロジーを使えば、サーキットドライブのテクニックを、自分で引き上げていくことができる。モードを調整することで、徐々にシステムに頼らない自らの限界領域を高めていけるのだ。
そういう意味では、マシンの動きといい、備えられたハイテクシステムといい、新世代のハイパーカーとして、この上ない存在になったと思う。幸運にもセナを手に入れたオーナーが、一度でいい、サーキットでその優れた空力と制御システム、すさまじい加速、刺激的なサウンドを経験されんことを祈るばかりである。
『ボクはすべてにおいて、常に向上していたいんだ』(アイルトン・セナ)
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