新車試乗レポート [2024.02.12 UP]
【BMW i5】新しい高級車体験を提供する記念碑的なモデル
文●九島辰也 写真●澤田和久、内藤敬仁
BMW 新型「5シリーズ」初期生産限定モデルをディーゼルにも設定
BMWから新型5シリーズ、G60型が登場した。セダン、そしてツーリングという順番での日本導入だ。SUV全盛の中でセダンやツーリングがどれだけ売れるかはわからないが、輸入車の定番モデルとしての存在感はある。つまりそれだけ一定数のマーケットはあるという判断だろう。
M60 xDriveはスーパーカーレベルの性能を備えた電気自動車
i5 M60 xDrive
新型5シリーズの目玉はi5(アイファイブ)と呼ばれるBEVだ。日本仕様のセダンにはこのほかにガソリンエンジンとディーゼルエンジンが用意されるが、目立つのはBEVとなる。本国にはこのほか、プラグインハイブリッドがラインナップするというから首脳陣の5シリーズに対する意気込みを感じる。というか、フル電動化が叫ばれるヨーロッパにおいて、まだ模索中なのかもしれない。次世代パワーソースの主役はどれなのか……。
それはともかく、i5には2つのグレードがある。eDrive40MスポーツとM60 xDriveだ。違いは文字通りパワーと装備で、前者は最高出力250kW、後者は442kWを発揮する。およそ601ps。前後アクスルに装着された2基のモーターを合わせるとスーパーカーレベルに達する。
M60 xDriveのスリーサイズは全長5060、全幅1900、全高1505mmとなる。タイヤサイズの違いでeDrive40Mスポーツより全高が10mm低い。とはいえ、先代のG30型と比べると全体的にひと回り大きくなっているのは一目瞭然。特に全高が高くなっているのが気になる。理由は内燃機関もBEVも同じプラットフォームから出来上がっているのだが、BEV用のバッテリー搭載位置に関係していると思われる。床下にリチウムイオン電池を敷き詰めるスペースが必要だからだ。
i5 M60 xDrive
だが、ご覧のように新型になって車高が高くなったイメージはない。そこがデザインの妙で、横から見るとわかるが、ボンネットをこれまで以上に長くしている。彼らがアピールする“シャークノーズ&ロングボンネット”がそれで、その効果で目に錯覚を起こさせている。まぁ、そもそもFRスポーツのイメージが強いBMWだけに、このやり方は辻褄が合っている。いずれにせよ、ボンネットが長い方がカッコよく見えるのだからありがたい。
新しさと力強さを感じさせる魅力的なインテリア
i5 M60 xDrive
インテリアもかなり手が込んでいる。ダッシュボードセンターの大型カーブドディスプレイやセンターコンソールのクラフテッドクリスタルフィニッシュ、アンビエントライトを進化させたインタラクションバーなどが空間を演出し、ラグジュアリーさを助長させる。何より、新しさを強く感じるのは素晴らしい。
走りに関してはとにかく速い。モーターの特性をそのまま活かし立ち上がりから凄まじい加速を見せる。ドライブモード(ドライビング・パフォーマンス・コントロール)でアクセル開度を調整しないと街中ではトゥーマッチだろう。もちろん、その辺は開発陣もわかっていてセレクトで適度な調整が行われる。
i5 M60 xDrive
ユニークなのはワインディングでの挙動だ。高いスピード域でのステアリング操作に対して若干遅れてクルマが向きを変える。最初に姿勢を作ってそこからクイっと回る感じだ。で、その時のキレ角が思いのほか深い。インテグレイテッド・アクティブ・ステアリングと呼ばれる四輪操舵システムで、リアタイヤが逆位相に動くからだ。ロングホイールベースにもなっているのでこれは有効だが、慣れるまで少々時間が必要だろう。もちろん、コーナーをいくつかこえてしまえばBMWらしい楽しさが掘り起こされてくる。リアステアは時速60キロを起点に向きの変更を行う。
注目したいのはMY MODES(マイ・モード)で、“PERSONAL”、“SPORT”、“EFFICIENT”、“EXPRESSIVE”、“RELAX”といったモードがあるのだが、この演出がすごい。モニターのビジュアルとドライブモードとモーターサウンドとサンルーフを連動させてキャビンを特別な空間にするのだ。と言っても伝わりにくいだろうから、これに関してはディーラーで体験させてもらうことをおすすめする。BMWがBEVでどんなことをやろうと考えているのかとか、その可能性を探っているのがわかる。
まとめ
というのが5シリーズ初のBEVだが、その歴史から鑑みてコメモラティブ(記念碑的)なモデルであることは確かだ。これに触れると未来が見えてくるような気がする。
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