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代表とドライバー、ふたつの立場に揺れる小林可夢偉の“本音”。WEC最終戦、タイトル争いのポイント

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代表とドライバー、ふたつの立場に揺れる小林可夢偉の“本音”。WEC最終戦、タイトル争いのポイント

 WEC世界耐久選手権に出場しているトヨタGAZOO Racingは10月27日、三重県の鈴鹿サーキットで囲み取材の機会を設け、中嶋一貴TGR-E副会長、小林可夢偉チーム代表兼ドライバー、そして平川亮が、11月2~4日に控えた最終戦の展望などを語った。

■暑さのなかで『ウォーマーなしタイヤ』はどう機能するか

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 2023年のWECも、いよいよ大詰めを迎える。最終第7戦の決勝は11月4日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われる8時間レースとなる。前戦富士でマニュファクチャラーズタイトルを決めたトヨタだが、バーレーンではいよいよドライバーズタイトルが決まる。富士を終えた時点でのランキングでは、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川組の8号車GR010ハイブリッドのトリオは133ポイントを獲得。これを、7号車のマイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組が15ポイント差で追っている状況だ。

 レース距離の長いバーレーンでは、通常の1.5倍のポイントが与えられる。最大獲得点数は1位39ポイント(ポールポジション1点+優勝38点)。このため、ドライバーズランキング3位のフェラーリAFコルセの51号車(アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組)と、4位の50号車(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ組)にも、わずかながらタイトル獲得のチャンスは残っている。

 バーレーン戦での逆転タイトルを目指す可夢偉は、戦い方のキーポイントとしてタイヤを挙げた。WECでは今季、タイヤウォーマーが禁止された(ル・マンのみでは使用可)。ウォーマーがないことを前提に作られたミシュランタイヤが、毎年酷暑に見舞われるバーレーンでどんな特性を示すかについては、未知数な部分が多いようだ。

「去年も結構、クルマとしては良かったと思うし、いつもよりレース距離が長い8時間なので、戦略も6時間レースとは違ってきます」と可夢偉。

「あとは今年のウォーマーなしのタイヤを、暖かくてデグ(ラデーション)の多いバーレーンにしっかりクルマとしてマッチさせられれば、自信を持っていけるんじゃないかと思っています」

「ただ、フェラーリだけでなくて、前回(富士)を見ているとポルシェやキャデラックもパフォーマンスが上がってきています。しっかりいいレースをして、できればワン・ツーでゴールしたいと思います」

 富士ではハイパーカー勢のなかでタイヤコンパウンドの選択が分かれた。これは路面温度が、それぞれのコンパウンドの受け持つ温度レンジの境界に位置していたから生じたことでもある。昼にスタートし、日没後にフィニッシュを迎えるバーレーンでは路面温度が下がる方向に変化することから、「そのトランジションがどこにあるか、寒くなったら(タイヤスペックを)シフトしないといけないのか」(可夢偉)という“見極め”が、勝負のカギとなる可能性も高い。

「そのウインドウをまずは自分たちで理解して、セッティングとかドライビングでなんとか合わせて行けたらと思っています」

■バーレーンの1コーナーは危険?

 一方の平川は「シミュレーターなどの準備は終わらせてきています」と語り、さらに8号車にとっては昨年のバーレーンとは状況が異なる点を強調した。

「昨年、自分としてはチャンピオンがかかるなかでリスクを取らないレースをやりました。(今年は)かなりチャレンジしてレースに臨まないとチャンピオンが獲れないと思っているので、そこは新たな挑戦ですね」

「そのなかで他のライバルに対して、速さ・強さを見せられれればと。モンツァや富士を見ても他のメーカーが速いので、しっかりと準備していきたいと思います」

 この取材のあと、プラットフォームBoPの変更が発表され、ポルシェ、キャデラックのLMDh規定勢は、わずかながら性能向上の措置が取られているため、バーレーンでは“今年最大の混戦”も予想される。

 さらに、コースレイアウトの特徴と過去の経験から、スタート直後の1コーナーもひとつのポイントとなりそうだという。今年はモンツァでも、富士でも、スタート直後の最初のコーナーで混乱が起きている。

「バーレーンの1コーナーはだいたいごちゃごちゃになるので、見てる方としてもそこを通り抜けるまでは気が抜けません」と一貴副会長。これには可夢偉も「そうなるだろうなぁ」と同意する。どのようなグリッドポジションになろうとも、スタート直後は緊張感の高い時間帯となりそうだ。

 なお、取材の最後にはバーレーンでの意気込みを再度問われた可夢偉と平川が、チーム内対決に挑む“空気感”をにじませたやりとりをする場面があったので、以下に紹介しておこう。

可夢偉:ここ最近、チャンピオンシップで最後はずっと8号車にやられているので、ちょっと一発逆転、いきたいと思います!

平川:……そんなことなくないですか? 僕ら、ル・マンとポルティマオ以外では全部7号車に負けてますよ。

可夢偉:いや、それは今年の話でしょ? チャンピオンシップ的には結構キツいよ。去年もル・マンでああなってなければ、逆転だったやん。もうずーっとやられてるから、「今年こそは」って。ずっとそう思ってるけど……「もう、そろそろ」と。

平川:(改めて意気込みを問われ)連覇を目指します。

可夢偉:ということで、ガチンコということです。超ガチンコでいきますよ。1コーナー? 当たる気でいきます!(笑)

一貴副会長:って言ってる人はスタート担当しないんですけどね(笑)。

可夢偉:……いま僕、ドライバーとしてのコメントだと思ってたんですが、チーム代表としてもう1回いきましょうか? 「あのー、ふたりのドライバーには本当に頑張っていただきたいです。どちらが勝っても、チームとしては大丈夫です。ワン・ツーで行ってもらえれば」。以上!(笑)

 チーム代表とドライバーというふたつの立場の狭間で、難しい立ち振る舞いをしている可夢偉の姿が垣間見えるやりとりだった。可夢偉自身、「実際、結構切り替えは難しいですよ」と本音も漏らす。そんな可夢偉は、どうやってチームを“最善の結果”へと導くのか。バーレーン戦のレースウイークは、2日木曜のフリープラクティスから始まる。

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