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1ストップ戦略は奇策すぎた? 完遂ラッセルはトップチェッカー……なぜ他のトップチームは真似なかったのか?

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1ストップ戦略は奇策すぎた? 完遂ラッセルはトップチェッカー……なぜ他のトップチームは真似なかったのか?

 F1ベルギーGP決勝では、1ストップ戦略を採ったメルセデスのジョージ・ラッセルがトップチェッカー。結果的に失格処分となったものの、ギャンブルを成功させた。ではなぜ他のトップドライバーたちは、ラッセル同様の戦略を採らなかったのだろうか?

 ベルギーGPの直後、ラッセルを抜けず後塵を拝したチームメイトのハミルトンは、なぜ自身は2ストップ戦略になったのかと疑問を呈していた。

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 ラッセルが1ストップ戦略を採ったことで窮地に立たされたのはハミルトンだけではなく、トップ10で同様の戦略を採ったのはアストンマーティンのフェルナンド・アロンソだけだった。

 ベルギーGPは、メルセデスが調子を上げてワンツー態勢を築き、マクラーレン対レッドブルのマックス・フェルスタッペンという優勝争いの再現はならなかった。予想不可能なF1の真骨頂とも言えた。

 レースはF1パドック関係者の予想とは全く異なる展開となった。舞台となったスパ・フランコルシャンの路面は部分的に再舗装を受け、例年よりも激しいタイヤのデグラデーション(性能劣化)が予想された。そのため、理想的な戦略はミディアムとハードコンパウンドを使う2ストップ戦略に絞られた。

 そしてスパは他のサーキットに比べて比較的オーバーテイクが容易だ。つまり各チームともピットストップのタイミングでアンダーカットを許したとしても、フレッシュタイヤを履いた状態であればコース上で追い抜けると考えていたのだ。

 しかし土曜日の雨でドライコンディションでの走行機会が減ったことで、F1チームもタイヤメーカーのピレリもハードタイヤの摩耗具合が未知数という状況だった。そしてピレリの予想では“除外”されていた1ストップ戦略の線が突如復活したのだ。

 チーム間のわずかなギャップ、ケメルストレートのDRSゾーン短縮、そして悪化の一途を辿るダーティーエアの影響に加え、デグラデーションが最小限に抑えられたことで、オーバーテイクは非常に難しくなり、トラックポジションを維持することが予想以上に重要となった。

 レース終盤、ハミルトンはフレッシュなタイヤでラッセルをパスすることができず、このトップ2台に対してマクラーレンのオスカー・ピアストリもすぐに追いついたが、メルセデス勢の後ろで詰まってしまった。

 またピアストリのチームメイトであるランド・ノリスはハードタイヤを履き、耐久性に劣るミディアムタイヤを履いたフェルスタッペンよりもペースが良かったものの、オーバーテイクには至らず5位争いに敗れた。

 ピアストリがレースエンジニアに語ったように“クリーンエアー様様”なら、なぜピアストリ含め他のトップドライバーはラッセル同様の戦略を採らなかったのだろうか?

「もちろん、我々も検討した」

 そう語るのはマクラーレンのアンドレア・ステラ代表だ。

「我々はこれが上手くいくと固く信じていた訳ではなかった」

「我々にとっては、あれはかなり極端なことだった。これにコミットして上手くいかなかった場合、決勝日を台無しにしてしまう可能性があるからね。ピットに入るには手遅れで大きくポジションを落としてしまう可能性があるから、非常に痛いことになりかねない」

 ステラ代表は、コンストラクターズタイトルをレッドブルと戦うマクラーレンがリスクを避ける傾向にあると認めた上で、5位フィニッシュが妥当だと思われていたラッセルが失うモノは少なかったと示唆した。

「ラッセルのポジションでは、リスクのあるアプローチを取るモチベーションが高かったかもしれないが、我々はもう少し堅実に考えたい」とステラ代表は言う。

「冒険的な戦略には少し慎重になる必要がある。我々はレッドブルよりもまた多くのポイントを獲得した。でもまだポイントで後れを取っている」

「ランドの戦略も強固だったし、オーバーテイクできなかったことには少し驚いた。フェルスタッペンは最終スティントでミディアムを長持ちさせていた。それができたドライバーは多くない」

フェラーリ、レッドブルも1ストップ戦略を実行できず

 最終的に3位に繰り上がったフェラーリのシャルル・ルクレールも、1ストップ戦略を試みたものの、よりオーソドックスな戦略に落ち着いたと語った。

「それは僕らの戦略のひとつだった」とルクレールは言う。

「でも僕がそれをするのは、かなり無理があると分かっていた」

「自分が前を走っている時に、1ストップ戦略が上手くいかずに3~4台にアンダーカットされてしまったら、大きくポジションを落としてしまう。後方のドライバーたちに合わせた方が良かったんだ」

「(メルセデスは)かなり強かったし、ペースが良かったから、1ストップ戦略が上手くいったんだと思う」

 ルクレールが決断した時点では、ハードタイヤスタートのチームメイト、カルロス・サインツJr.がまだ十分な周回数を消化していなかったため、フェラーリはハードタイヤにどれだけのデグラデーションが発生するか分からなかった。

「主な問題は、ミディアムでスタートし、みんながピットインする11周目にこの決断を下さなければならなかったことだ。その時は、ハードのデグラデーションがゼロであることをまったく理解できていないんだ」

「(1セットのタイヤで)スパを35周も走るなんて、想像もできなかった」

 グリッド降格ペナルティを受けて11番手スタートとなったフェルスタッペンも、1ストップ戦略で好結果を得ることができていたはずだ。

 フェルスタッペンとチームメイトのセルジオ・ペレスは、他チームのドライバーと異なり、ハードタイヤを1セット、理想的とは言えないミディアムタイヤを2セット残すという状況だった。

 理論的には1ストップ戦略が魅力的な選択肢だが、フェルスタッペンはレッドブルRB20のタイヤへの攻撃性が高いと考えていたようだ。

「僕らはミディアム2セット、ハード1セットだった。ハードがもう1セットあったら助けになっていただろうね」とフェルスタッペンは語った。

「もちろん、ジョージは1ストップ戦略でレースを制したけど、いずれにせよ、僕らにそうするだけのタイヤの摩耗度合いや寿命があったとは思えない」

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も次のように説明した。

「金曜日のデータではグレイニング(ささくれ摩耗)や高いデグラデーションが指摘されていたが、実際は1ストップ戦略で勝つことができた。誰もそんなことは想像できなかったと思う」

「ジョージが1ストップでレースを進めるとは思っていなかった。しかしそれを成功させた彼とメルセデスは称賛に値する。彼らでさえ、あの時はその戦略が機能すると思っていなかっただろう」

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