北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第55回は、秋、冬眠に備えて、栄養を蓄えるため、川で漁に励むヒグマの姿をお届けします。
北海道で最も稀少な野生動物! アイヌの人々も崇めた村の守り神・シマフクロウ
この季節、ヒグマたちが狙うのは鮭! 荒々しい野生の姿を見せてくれます。 写真・文/佐藤圭
[gallink]
冬眠にそなえて、ヒグマたちも必死です
秋になり、鮭たちが産卵のために川に帰ってくると、彼らが遡上する川では命のドラマが繰り広げられます。
大挙して遡上した鮭は、産卵を終えると、みな力尽きて死んでしまいます。その一部は朽ち果て、川の栄養となり、稚魚のエサとなる微生物や水生昆虫を育て、自分たちの子孫の生育を助けます。
また、一部は、浅瀬に打ち上げられ、周辺で暮らす動物や鳥類のエサをなります。この季節、川辺で観察していると、カモメやカラス、キツネやタヌキなどが産卵後の鮭を食べに集まっています。
そのなかに、並外れてどん欲な大食漢がいます。
日本の陸上で最大の哺乳類・エゾヒグマです。
秋のヒグマは、冬眠を控えており、皮下脂肪を蓄えなければならず、大量のエサを必要とします。
山でも、どんぐりや山ぶどうなどの木の実を食べまくっていますが、鮭のほうが断然栄養価が高いですからね。
ヒグマは泳ぎの名手です。力尽きた鮭だけでなく、まだ上流に向おうとする鮭を潜水して巧みに捕まえます。頭とエラに嚙みついてグルングルンと振り回し、息の根を止めます。
パワーがあり過ぎるので、勢い余って、鮭が千切れて飛んでいってしまうこともます。
川に潜って、立派な鮭をゲット!
浅瀬に移動して、しっかりくわえ直して
ぶんっと大きく振り回す
川面にたたきつける
もっと振り回す
もっともっと振り回す
このあと、振り回し過ぎて、鮭は飛んでいってしまいました
雪が積もるまで鮭の遡上は続くので、ヒグマの狩りは毎日続きます!
鮭を日々食べ続けたヒグマは、見る見る体が大きくなります。
あわてて獲物を回収
ヒグマの鮭狩りは冬眠直前まで続く
北海道では、近年、秋に産卵のために回遊してくる鮭の不漁が続いています。そのため、イクラの値段も高騰し続けています。
このままでは、鮭とイクラの親子丼はとても高価なものになってしまうかもしれません。心配です。
また、鮭が減って、秋に栄養が十分に取れなくなったことが、ヒグマが街に出るようになった要因になっているかもしれません。
ヒグマがいる山は豊かです。ヒグマが鮭を山に持ち帰り、食べ残しは山の栄養になります。それで山の木々も健康に育ちます。
自然界の循環として、命は川から山へ繋がっているのです。
川に現れた親子グマ
子グマに狩りを教えるのだろうか
鮭の不漁の原因は、地球温暖化による海水温、海流の変化だとも言われています。
北海道の豊かな自然を守るためにも、そろそろ、この問題に真剣に向き合う時だと思います。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。フランスのアウトドアブランド「MILLET」アドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
インスタグラム:https://www.instagram.com/slashslash_photography/
佐藤圭さんのデビュー写真集が、10月27日に発売されます。北海道大雪山系に暮らすエゾシマリスの一年を追った写真絵本です。エゾシマリスの体の特徴や子育て、独特の生態について、Q&A形式でわかりやすく紹介しています。
定価1,980円(本体1,800円+10%税) 文一総合出版
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これ、ベストカーの記事?