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ホンダ、軽トラ市場から撤退! それでも販売続くスズキ軽トラ「キャリイ」が58年間売れ続けた理由とは?

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ホンダ、軽トラ市場から撤退! それでも販売続くスズキ軽トラ「キャリイ」が58年間売れ続けた理由とは?

■軽トラックユーザーがもっとも重要視する性能とは?

 ホンダが2021年に軽トラックから撤退することが2019年10月に報じられるなど、いま軽トラックが話題となっています。そんななか、2019年11月4日に第46回東京モーターショー2019の会場で、軽トラックを店舗のように使う産直朝市「軽トラ市」が開催されました。軽トラ市が東京モーターショーで開催されるのは初めてです。

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 軽トラ市を応援しているスズキは、ラインナップに自社製軽トラック「キャリイ」を持ちますが、軽トラックの開発にあたっては、外せないポイントがあるといいます。いったい、どのようなポイントなのでしょうか。

 筆者(桃田健史)は、軽トラ市の会場で待ち合わせをしたキャリイの開発統括者であるスズキの伊藤二三男氏に、「そもそも、軽トラックってなんですか」という初歩的な質問をぶつけてみました。

 伊藤氏は質問に対して「お客さんが満足できる車両価格で、しっかり積載するクルマ」と答えました。どんなに使い勝手が良くても、価格が上がってしまっては軽トラックとしての価値はない、ということです。当たり前のような話ですが、これこそが軽トラックの本質だと感じます。

 さらに「軽トラックは、軽自動車だからこそ、その良さが出るのですか」と聞くと、伊藤氏は「もちろんです。軽規定の中で最大限度の寸法や仕様でいかに作り込むかが大切ですから」といいます。

 また、伊藤氏によると、商品企画の進め方においても重視する点があるといいます。もっとも重要視しているのは、販売店の声です。

「スズキでは販売地域毎に代理店会議などを定期的におこなっていますが、そのなかでスズキ全車種を対象としたり、またキャリイなど特定の車種に絞って議論することもあります」(伊藤氏)。

 スズキの販売方式は、直営のディーラー網と並び、街の修理工場などで新車販売を委託する方式があります。こうした販売店に軽トラックユーザーの声が集約するのです。

 実際に、筆者はスズキ本社および地域営業担当の社員とともに、ある地域のスズキ販売店を巡ってみたのですが、各所の販売店で人情味溢れる対応をしていただきました。

 作業の手を休めて一緒にお茶を飲む時間に、単なるクルマの話ではなく、その地域での社会の動きがわかるのです。こうした草の根活動が、軽トラックの商品開発の土台になっているのだと痛感しました。

 そうした現場の声のなかで主流なのが、やはり価格です。伊藤氏は「コスト意識を高く持ち、車両価格と必要装備のバランスを見極め、仕様を決めています」と話します。

 現行型キャリイは2013年登場の11代目。その時点で14年ぶりのフルモデルチェンジでした。コスト最優先のため、車体やエンジンなどをできるだけ長い期間活用することが、軽トラックなど商用車開発の基本です。そのうえで、衝突被害軽減ブレーキなど安全面での最適化を進めているといいます。

 そして、もちろん積載性も重要です。

「当然のことですが、トラックとしての積載性が重要です。軽トラックでは一般的に、運転席の窮屈さを多少犠牲にしてでも、荷台が広い方が好まれます。そのうえで、キャビンと荷室の空間のバランスが重要です。

 スズキが目指すのは、お客さまの“もっと載せたい”というご希望に沿うための技術限界です」(伊藤氏)

 また、走りについては「軽自動車のメリットは、ホイールベースが短いこと。最小回転半径3.6mは田畑での走行で大きなメリットになります。登録車は4mを切ることは難しいですから」(伊藤氏)と指摘します。

■58年続くロングセラー! 「キャリイ」最新モデルの特徴とは

 そもそも、軽トラックはいつ、どのような社会背景のもとで生まれたのでしょうか。

 スズキは戦後、二輪車を発売し、その成功をもとに1955年に「スズライト」で四輪市場に参入。その派生車として、スズキ初となる軽トラック「スズライト キャリイFB」が1961年にデビューします。

 当時の軽規定でエンジンは排気量359cc、最高出力21馬力。価格は29万5000円と、当時の大卒初任給が3万円に満たない状況ではけっして安い買い物ではありませんでしたが、商用車としてみれば農家や個人商店主にとって少し頑張れば手が届く「仕事車」というシロモノだったのだと思います。こうしたなかで「スズライト キャリイFB」は生まれました。

 そして地味な存在ながら、70年代のオイルショックを乗り越え、80年代のバブル景気、そして90年代の「(バブル期後の)失われた10年」と時代は進んで、軽トラックは農家や個人事業主の相棒として、社会にしっかり根付いた存在になっていったのです。

 2018年には、キャビンを広めに設計した派生モデル「スーパーキャリイ」が登場。こちらは農家向けというより、工務店など建築業関連の仕事車としての需要が高いといいます。

 コストと積載の最適化を進めているキャリイですが、売れ筋は「KC」グレードの4WDで、エアコン・パワーステアリング付の5速MT仕様の車両価格(消費税込)は101万2000円です。また、エアコン・パワーステアリング装備もない70万円台の廉価仕様にもしっかりとした需要があるといいます。

 外装色は、やはり白が6割と比率が高いですが、一部には白だと雨だれ跡が目立つとのことでシルバーの需要が多いそうです。

 日本固有のクルマである軽トラック。これからも、全国各地の仕事車として庶民の生活を支え続けるのだと思います。

文:くるまのニュース 桃田健史
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