この記事をまとめると
■ホンダが「八千代工業株式会社」を実質的にインドの会社に売却
オデッセイが「中国製」なんて気にするのはナンセンス!? クルマの「原産国」を異常に気にする日本人の「現状を知らない感」がヤバい
■八千代工業は燃料タンクなどのパーツやS660やビートなどを作っていた
■今後ホンダが考えるプランからすれば決して間違った判断ではないと言えそうだ
盟友「八千代工業」をホンダが手放すことに!
2023年7月4日、ホンダが発表した「八千代工業株式会社の株式に対する公開買付け」の内容は、自動車業界人やホンダファンにとって非常にインパクトのあるものだった。
簡単にまとめれば、連結子会社である八千代工業のTOB(株式公開買付け)を実施、インドの部品サプライヤーであるマザーサン・グループに議決権の81%に相当する株式を売却譲渡するということだ。上場している連結子会社の株をTOBして、売却することでグループを再編するというスキーム自体は珍しいことではないが、八千代工業は本田宗一郎氏が社長だった時代から、ホンダと取引があったことで知られている老舗サプライヤーだ。
かつては八千代工業が三重県四日市に持つ工場において、ホンダの軽自動車生産を請け負っていた時期がある。そのラインから生まれた軽自動車のなかには、ビートやS660といった伝説的スポーツカーも含まれている。
じつはホンダが四輪の生産を外部に委託していたのは八千代工業だけといわれる。それほど八千代工業はホンダにとって特別な存在であり、密接な関係にあった。そんな八千代工業を、資本関係の深い系列から外してしまうというのだから、八千代工業の背景を知る人々に衝撃をもって受け止められているのは理解できる。
もっとも、事情通からすればそれほど驚きはないという見方もある。ホンダが系列のサプライヤーを再編するのは、いまに始まったことではないからだ。
前述した八千代工業の四日市工場についても、すでにホンダが買い取り、現在はホンダオートボディーとなっている。
ホンダの系列において有力ブランドとして認知されてきた「ケーヒン」、「ショーワ」、「ニッシン」は、日立系の日立オートモティブシステムズと合併統合、日立アステモへと生まれ変わっているのは、ご存じのとおりだ。
ネガティブなイメージがあるが経営判断としては正しいと言える
ただし、系列から外すことは縁を切ることではない。
完成車メーカーとサプライヤーとしての取引にフォーカスしてみれば、個々の企業との資本関係が薄くなったといっても、ホンダへ部品を供給するという関係は基本的に変わっていないという見方もできる。
逆にホンダの立場でみれば、これまで厳しい時期には支える必要のあった系列のサプライヤーを整理・独立させることは、自動車の大変革期において身軽になることを意味する。
とくにホンダの四輪部門においては、利益率の低さが長年の課題となっている。そうして点を改善するにも系列のサプライヤーを整理することは有効な手段となるだろう。
一般ユーザー、ホンダ車オーナーにとって、系列のサプライヤーを整理することで気になるのは補修部品などの供給体制における不安だろう。とくに旧車の補修部品というのは、金型などを保管しておくコストを考えると、ビジネス的にはボランティアに近いという話もある。
もっとも、ホンダ車についてはそもそも旧車の部品供給について、特別なモデルを除くと充実しているとは言い難い、というのが一般的な評価だろう。系列再編によって部品供給体制が大きく悪化するということはないかもしれない。
それはさておき、ホンダが系列のサプライヤーを再編している背景には、脱エンジン戦略が関係しているという見方も多い。燃料タンクを主力品としている八千代工業の売却もそうした判断に基づくというのが定説だ。
ホンダの脱エンジンに対して、「すべてEVになるとは限らない」、「エンジン技術を失ってしまってはホンダではない」といった批判もある。なかには「創業者である本田宗一郎氏は脱エンジンを許すはずがない」といういう思い入れのある発言も見かける。
ただし、筆者の印象は違う。ホンダの拙速とも思えるZEVシフト戦略は、本田宗一郎氏のDNAを感じる部分もある。
かつて、本田宗一郎氏は「よい技術を出しても、時間というタイミングがずれれば技術はタダと同じである」といった発言をしたという。
状況が変わったのを見極めてから動くのではなく、他人よりスピーディに行動していくこと、すなわち「早い者勝ち」の精神がホンダに連綿と続くDNAだとすれば、ZEVシフトに向けた系列再編は、まさしくホンダらしい判断といえそうだ。
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みんなのコメント
だってエンジンのないEVならホンダ車買う意味ないもんな。