2024年上半期にもっとも売れた国産車は、フィットやステップワゴンなどの登録車を含め、軽自動車のホンダN BOXだった。そんな軽自動車市場に新たな旋風が巻き起ころうとしている。そう、間もなく、N BOXに「広い室内を最大限に活用し、クルマがまるごとくつろぎの場所となり、クルマを使う人がもっと自分らしく、毎日が心躍る時間を過ごせる空間となることを目指した」とされる新機種「N BOX JOY」が。スズキ・スペーシアに先代でも人気のクロスオーバータイプの「スペーシア ギア」が加わることになっているのだ。
ホンダN BOX
今週、話題になったクルマのニュース4選(2023.11.18)
ホンダN BOX JOYのイメージカット
スーパーハイト系軽自動車の後席の広さや快適性を検証!
軽自動車のクロスオーバー、SUVタイプには、現在、スズキ・ハスラー、ダイハツ・タフト、ダイハツ・タントファンクロス、三菱デリカミニなどがラインナップされ、空前のアウトドアブームの中、軽自動車人気を底上げしていることは明白。しかし、ホンダ軽にはそうしたクロスオーバーモデルはなく(フィットにはクロスターがある)、スペーシアも先代にあったクロスオーバーモデルのギアを新型スペーシアにも望む声が高まっていることから、N BOX、スペーシアにそうした新機種が追加発売されることになったというわけだ。
スズキ・スペーシアギア
ダイハツ・タント ファンクロス
ここでは、そんなN BOX JOY、スペーシア ギアが属するスーパーハイト系軽自動車のジャンルに期待する、後席の広さや快適性について、各車を比較してみた。スーパーハイト系軽自動車、それもターボモデルともなれば、前後席空間の圧巻の広さや動力性能から、一家に一台のファーストカーにも適し、後席の広さについても選択時の見逃せないポイントとなるからだ。尚、ここで紹介する後席の頭上、膝周り空間の数値は身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、その背後に、後席スライドを最も後ろ側にセットして座った時の数値となる。また、着座性、立ち上がり性にかかわるヒール段差の数値は、フロアから後席シート座面先端までの高さを計測。シートが高くセットされたほうが、椅子感覚で座りやすく、立ち上がりやすいことになる。
三菱デリカミニ
ホンダ N BOX
まずはまもなくJOYが発売されるN BOXだ。後席のシートサイズは座面長480×座面幅1080×背もたれ高570mm。スペースは頭上に235mm、膝周りに最大420mm。フロアはフルフラットでヒール段差は355mm。センタータンクレイアウト採用で後席を最も後ろにスライドさせてもシート下に空間(隙間)があり、足引き性に優れ、結果、その状態での立ち上がり性はクラスベストと言っていい(JOYについては推測)。
画像はN BOXカスタム
画像はN BOXカスタムの後席
スズキ スペーシア
クロスオーバーモデルのギアが間もなく加わるスペーシアの後席シートサイズは座面長490×座面幅1080×背もたれ高550mm。頭上に270mm、膝周りに最大325mm。フロアはフルフラットでヒール段差は360mm。以前、この@DIMEで試乗記や愛犬と行くクルマ旅企画をお届けした時にも特筆点として触れたように、ライバルにない軽自動車唯一のオットマン機能を持つマルチユースフラップを備えた後席の仕立てが大きな特徴であり、リヤサーキュレーターの装備と合わせ、2024年5月にN BOXを退けてスペーシアが首位になった原動力と言える装備と言っていい。
スペーシア ギア
スペーシアのマルチフラップ付きリヤシート
スペーシアのマルチフラップはオットマンにも
三菱 デリカミニ
三菱が誇るミニバン×本格SUVのデリカD:5の弟分となる、悪路にも強い(4WD)スーパーハイト系軽自動車が三菱デリカミニ。後席のシートサイズは座面長430×座面幅1060×背もたれ高570mm。頭上に250mm、膝周りに最大400mm。フロアはフルフラットでヒール段差は380mmとトップクラス。プラズマクラスター付きリヤサーキュレーターもプレミアムグレードに用意されている。このクラスのクロスオーバーモデルとしては、もっとも本格的な走破性を備えた1台となる。ちなみにデリカミニでアウトドアに出掛ける際、荷物をたっぷり積むために、後席を最前端位置までスライドさせるとラゲッジルームの奥行きは後席最後端での290mmから一気に675mmに拡大。その際、後席シート前端位置でも膝周りには45mmのスペースがあり、小柄な人なら無理なく座ることができる(筆者でも座れる)。
三菱デリカミニ
デリカミニの後席
日産 ルークス
日産にも日産がいちから開発したルークスがある。後席のシートサイズは座面長430×座面幅1060×背もたれ高570mm。頭上に250mm、膝周りに最大400mm。フロアはフルフラットでヒール段差は380mmだ。後席スライド量は320mmもあり、子供を前端位置にセットして座らせれば、前席の親が子供のケアをしやすいメリットが生まれる。
日産ルークス
ルークスの後席
ダイハツ タント
最後の1台がダイハツ・タント(ファンクロス含む)。助手席側Bピラーレスのパノラマオープンドアが大きな特徴で、運転席最大540mmのロングスライドによって、後席の子供のケアをしやすい子育て世代に嬉しい配慮がある。後席のシートサイズは座面長500×座面幅1120×背もたれ高550mm。頭上に270mm、膝周りに最大355mm。フロアはフルフラットでヒール段差は360mmだ。シートクッションの厚み感はそれほどでもないが、座面が500mmと長く、お尻が沈み込むたわみ感が良く、自然に上半身をホールド。背もたれの包み込み感もなかなかだ。
ダイハツ・タント
ダイハツ・タントの後席
後席のかけ心地に不満がある車種は皆無!
こうして一家に一台のファーストカーとしても相応しいスーパーハイト系軽自動車を後席の居住性に絞って比較してみると、まずはかつての軽自動車とは違い、後席のかけ心地に不満がある車種などないことを報告できる。そして頭上方向のゆとりではスぺーシアとタントの270mmが際立つものの、230mm以上あれば天井の高さはまったくもって問題なし。膝周り空間に関しても、N BOXの最大420mmがトップで、デリカミニとルークスの400mmの足元の広さがそれに続く広さとなるものの、スペーシアの325mmでも十二分に広いと言わざるを得ない。そもそもミッドサイズSUVのホンダZR-Vでも膝周り空間は筆者のドライビングポジション基準で245mmなのである。
スズキ・スペーシアの後席の広さは圧巻
ただし、脚腰が弱ったお年寄りを後席に乗せる場合は、ヒール段差がモノを言う。シート位置が高いほうが着座しやすく、立ち上がりやすいのである。その点では、デリカミニ、ルークスの380mmが、より快適に座れ、立ち上がりしやすい後席のシートと言えそうだ。
三菱デリカミニ
デリカミニの後席
※一部車種については最新モデルと異なります(後席については変わりません)
文/青山尚暉
写真/雪岡直樹 青山尚暉 スズキ ホンダ 日産 ダイハツ
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