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拡大し続けるSUV市場 現在のSUVブームの火付け役は日本車だった

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拡大し続けるSUV市場 現在のSUVブームの火付け役は日本車だった

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2018年4月、フォードはジェイムス・ハケット新社長が新たな構造改革として打ち出した「乗用車(Car)」からの撤退というニュースは業界にインパクトを与えた。フルサイズセダンのトーラスが2019年3月、フィエスタは2019年5月に生産を中止する計画だ。最も売れているミッドサイズセダンのフュージョンは2020年頃まで生産を続ける、マスタングなどのスポーツ系車種は継続するという。この決定は営業収益が低迷しているフォードにとっては必然の決断といえるかもしれない。

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乗用車(Car)とは、セダン、ハッチバックなどを意味し、これらの生産を止めてフォードはSUV、トラック、バンに集中しようということだ。フォードはアメリカ市場でナンバーワンの販売台数を誇るフルサイズ・トラックのF150を持っているが、こうしたSUV系のクルマにビジネスを特化しようというのだ。アメリカ市場の場合、SUVはトラック、ライトトラックのカテゴリーに含まれるが、乗用車系からトラック系に大きくシフトするわけだ。

アメリカのセダン、ハッチバックの収益は、規模が巨大なレンタカー市場向け、あるいは企業向けのフリート販売に走りがちなのが低収益の原因といわれている。レンタカー向け、企業向けのクルマは大量の台数を販売できるが、当然ながら実質的な大幅な値引きが必要になる。こうしたフリート販売が普遍化すると、一般ユーザー向けも販売奨励金を使用しての値引きを求められ、悪循環に陥る。これに対して、トラック系やSUVは個人使用が前提で、自動車メーカーにとっては収益を確保しやすいのだ。

もちろんフォードは、アメリカ市場の事情を前提に決断したのではなく、グローバルでSUVが拡大し続けていることも視野に入っているだろう。日本の三菱自動車もすでに同様の決断を下しており、今後の新型車はSUV1本にすることを決定している。

SUVの意味は

現在グローバルの市場でSUVの伸びが顕著で、どの自動車メーカーもSUVの開発に力を入れており、エグゼクティブカーのベントレーまでもSUVを投入するまでになっている。

日本でもすっかりSUV、さらにはクロスオーバーといった言葉が定着しているが、そもそもSUVとは何か? そのルーツを探ってみる。

SUVはアメリカで1970年代後半~1980年代に生まれた用語で、「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略だ。この場合のスポーツという言葉はスポーツカーのスポーツではなく、文字通り様々なスポーツに使う道具としての多用途なクルマということになるが、スポーツはカッコいいといった意味でもある。だが日本語としてはなかなかピンと来ない表現だ。

アメリカにおいても、SUVの定義は議論があり「ステーションワゴン的で、ライトトラックのシャシーにボディを架装した頑丈なクルマ」、「ラフロードを走破できる頑丈な4輪駆動車」などとされる。つまり、本来はライトトラックをベースにした4WD車といったイメージで、現時点で見るとヘビーデューティなクロスカントリー4WDを想像させる定義にも見える。

歴史的に見ると、アメリカでのSUVのルーツはジープ・チェロキー(1974年に登場)でライトトラック群にある。チェロキーは、2ドア、4ドアのステーションワゴンスタイルのパートタイム4WD車で、搭載エンジンは4.2Lの直6、6.0LクラスのV8を搭載したオフロード走行向けの高性能モデルで、独自の存在感を示した。

しかし、チェロキーは高価だったので、より多くの若者を虜にしたのが樹脂製ルーフを架装し、税金が安いピックアップ型のライトトラックだった。その代表格がトヨタ・ハイラックス、ダットサン・トラックなどだ。アメリカの地方のドラッグストアの駐車場には、夜になると若者が乗り付け雑談し、女をナンパする「ドラッグストア・カウボーイ」が愛用するクルマとなり、急激に販売台数を伸ばした。もちろん、サーフィンのために利用したり、遊びの場面でもこうしたクルマは愛用された。

実はこうした一種の文化は、日本にも流入し、1989~1991年頃には、若者がブームの中心になって東京・渋谷の公園通りをピックアップ・トラックが埋め尽くした時代もあった。人気を集めたのはダブルキャブ(4座席)のピックアップ・トラックだった。当時の日本ではまだこれらのクルマは、ワンボックスカーやランドクルーザー、パジェロなども含めRV(リクリエーショナル・ビークル)と呼ばれていた。そして、この日本のブームは若者に限定された一過性のブームであった。

こうしたカテゴリーのクルマは、4WDあるいはFRで、オフロード用の大径タイヤと頑丈なフレームボディ、さらに最低地上高が高いこと、荷室を多様に使うことができることなどの、ハードウェア的な要素にまとめることができ、これが後のSUVという新たなカテゴリーを形成することになる。

アメリカ市場では、大径のタイヤ、大型のフェンダー形状やタフで頑丈そうに見えるごついボディは「スポーツ」と感じられ、好まれる傾向にあり、アメリカの広い国土では、都市部以外、特に地方では未舗装路も多く、こうしたクルマは実用的でもあったのだ。

ただし、その当時のオフロード向け4WD、ライトトラックは、本来はヘビーデューティ4WDや商用車向けで、ラダーフレーム形式で、乗り心地や快適性、燃費などは乗用車より劣っており、幅広いユーザー層に受け入れられる車種ではなかった。

新世代のSUVの登場

これをブレークスルーすることになるのが、1994年にアメリカ市場に登場したスバル・アウトバック(日本名はレガシィ・ランカスター)、そして1997年に登場したトヨタ・ハリアーだった。いずれも乗用車技術をベースに、大径のオールシーズンタイヤを装着し、新世代のSUVであることをアピールした。

スバル・アウトバックは最低地上高を200mmとし、従来のライトトラック以上の悪路走破性能を発揮することができ、アメリカ市場で成功することになる。

現在の乗用車技術をベースにしたSUVの出発点になったのはこの2車種であり、世界の自動車メーカーに大きな影響を与えることになった。ただ、この時点ではSUVが新たな価値を生み出し、販売が拡大していたのはアメリカ市場だけで、ヨーロッパを含めた他の市場では需要がなかった。

だが、その約10年後の2010年に日産がジュークを発売すると、ヨーロッパでコンパクトSUVブームに火が付いた。ヨーロッパで主流のBセグメント・サイズで、デザインの斬新さを備えたジュークによりSUVがあっという間に定着したのだ。そしてアメリカ的なSUVとは違って、デザイン性、都市生活に適合した新しいSUV像を創り出した。

アメリカにおける、トヨタ・ハリアー、スバル・アウトバック、ヨーロッパにおける日産ジュークと、いずれも現在のトレンドを作り出したのが日本車だという点も興味深い。

そしてジュークを始め、新世代のSUVは、本来のSUVとは違って快適性、乗り心地、燃費など乗用車としての性能を高め、古い、本格タイプのSUVとは異なる軸として「クロスオーバー(本格SUVと乗用車の融合型)」という新しい定義も登場した。「スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)」に対して、「クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル(CUV)」と呼ばれることもある。

この結果、SUVの定義である、大径タイヤ、高い最低地上高、オーバーフェンダー、高い着座位置(コマンド・ポジション)などの要素もクロスオーバーでは薄められている。例えばSUVの最低地上高は180mm以上、より本格的な悪路走行性能を追求するなら200mm以上とされているが、クロスオーバーでは170mm、あるいは乗用車と変わらない140mm~150mmといった最低地上高になっている。

またSUVでは2輪駆動、4輪駆動のバリエーションを展開するのが一般的だが、クロスオーバーではFF駆動のみといった例も多くなってきている。

現在ではSUV、クロスオーバーのカテゴリーは、アメリカ市場はもちろん、ヨーロッパ、日本、世界最大の市場である中国でもメイン・カテゴリーになっており、今後もさらにセダンやミニバンの市場を侵食する傾向にある。

SUVはなぜアメリカ市場以外でも普及したのかだろうか。その理由は、シート高さが高いために乗り降りがしやすい、視界がよい、2列めシートを折り畳むことができ、リヤのラゲッジ・スペースがフレキシブルで従来のステーションワゴン的な使い勝手のよさがある。そしてセダンやハッチバックよりデザイン的に個性や存在感が強いといった点があげられる。

それ以外にSUVは、セダン、ハッチバックでは走ることのできないような悪路での走破性=4WD機能を持つことも付加価値として持っている。

しかしその反面で、ミッドサイズSUVクラス以上は、車重が重く、エンジンも大出力が求められるなど、現在の環境問題から考えると時代に適合したカテゴリーとは言いにくい面もある。特にSUVの母国であるメリカは、依然として5.0L~6.0LクラスのV8エンジンを搭載した、車両重量2500kgを超えるフルサイズ・トラック型のSUVがトップセールスを記録するなど、世界で最も厳しいゼロ・エミッション規制を推進する一方で、その正反対の市場動向となっているのは皮肉である。

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