南北アメリカ大陸を南下してブラジルへと入り、7月20~21日にインテルラゴスのホセ-カルロス・パーチェで争われた2024年『FIA TCRワールドツアー』の第4戦は、予選ポールポジション獲得のウルグアイ出身サンティアゴ・ウルティア(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)を撃破し、アルゼンチンが誇る名手エステバン・グエリエリ(ゴート・レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が今季初優勝を達成。続くレース2ではノルベルト・ミケリス(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)が開幕戦以来の2勝目を飾り、選手権リードを拡大している。
南米大陸で激戦を繰り広げるTCRサウスアメリカ・シリーズに、地元TCRブラジルとも併催された今回のラウンドは、地元勢を含めた28台がエントリーし、直前には元F1ドライバーのネルソン・ピケJr.(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)の参戦も決まるなど豪華な顔ぶれが揃った。
世界戦併催TCR南米ラウンドにて、ネルソン・ピケJr.が先代シビックRで初参戦「前輪駆動は新たな課題」
普段から走行機会の多いブラジルが誇る国際的F1トラックでの勝負だけに、世界戦レギュラー陣を相手にどこまで迫れるかが勝負となるなか、走り出しのFP1はウルティアが。続くFP2はドゥサン・ボルコヴィッチ(ゴート・レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速を射止めるなど、ワールドツアー勢がその実力を示す展開となる。
迎えた予選Q1では、残り9分の時点で赤旗中断の波乱も起こるなか、ミケル・アズコナ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)がわずか18000分の1秒差でQ2進出を逃すことに。続くQ2ではグエリエリが最初にトップタイムを計時したものの、唯一の1分41秒台としたウルティアが逆転ポールを獲得。TCRサウスアメリカ勢では6番手のラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオンVZ TCR)と、同7番手のラファエル鈴木(PMOレーシング/プジョー308 TCR)が最上位となった。
「この象徴的なレーストラックで初めてインテルラゴスでポールポジションを獲得できたのは良かった」とウルティアが語れば、レイスも「TCRで世界最高のクルマや最高のドライバーたちと戦うし、このラウンドが僕たちにとって非常に重要であることはわかっている」と気を引き締める。
こうして迎えたレース1は、スタートの蹴り出しで勝ったグエリエリがホールショットを奪うと、ターン6からターン8まで並走して食い下がったウルティアが2番手へと下がる展開に。しかしグリッド上ではFP2で2番手だったジョン・フィリピ(ボルケーノ・モータースポーツ/アウディRS3 LMS 2)が発進できず。ここでセーフティカー(SC)の出動となる。
この間、ホンダの1台もピットまで牽引される一幕もありつつ、4周目の再開以降はグエリエリが盤石のレース運びで状況を支配。2番手のウルティアには約10秒差で勝利を挙げ、さらに3番手にはヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)をパスしてきた4番手グリッド発進のマルコ・ブティ(ゴート・レーシングチーム/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が続くポディウムとなった。
■初参戦のピケJr.がロッシのカローラ右後輪に接触
「いいレースだった。大きなポイントを獲得する必要があり、チャンピオンシップをリードしている選手たちは補償重量の搭載kg数が多いので、これがチャンスだとわかっていた」と勝因を語ったグエリエリ。
「スタートが良かったのが鍵だった。その後、最初の数周はサンティ(ウルティアの愛称)を抑え込むことができ、その後はタイヤを管理するだけだった。小さなチームだが情熱と献身的な姿勢を持っているし、そんなチームに大いに感謝したい」
一方、ファイナルラップでは初参戦のピケJr.が、こちらもトヨタ製TCR車両の開発担当ドライバーながら、今季より本格参戦を開始したマティアス・ロッシ(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)に仕掛けた際、目測を誤りカローラの右後輪に接触。ロッシは姿勢を崩してバリアに激突し、このアクシデントでピケJr.には5秒加算のペナルティ裁定が降された(それでもTCRサウスアメリカのデビュー戦で2位獲得)。
続いて現地時間14時40分に開始されたレース2は、リバースグリッドのフロントロウに並んだマ・キンファ(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)とミケリスの勝負となり、ターン1で主導権を握った初代チャンピオンがレースをコントロールしていく。
そのオープニングラップでは、ネストール・ジロラミ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)とラファエル・レイスに挟まれたエルラシェールがダメージを負い、ともにピットで修復作業を強いられるなど、タイトル奪還を期すエルラシェールにとって大きな打撃に。
背後ではTCRサウスアメリカ勢で激しいクラッシュも発生し、ふたたびSCが導入される場面もありつつ、テッド・ビョーク(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)とマ・キンファを従えたミケリスが18周のトップチェッカーを受けた。
「すべてはディフェンスだった。集中して正しいラインを取り、ミスをしなければ可能性はある。マ(・キンファ)は公平で、このレースを本当に楽しんだよ」と勝者ミケリス。
そして併催の南米シリーズでは、総合で10位と8位を記録したラファエル鈴木が、両ヒートを制覇する結果となった。
「ドゥサン(・ボルコヴィッチ)やベブ(ジロラミの愛称)のようなワールドツアーの選手たちと戦っていたが、もう少し戦えればよかったね」と続けたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”のタイトルコンテンダーでもある鈴木。
「ここインテルラゴスで優勝し、こうして『FIA TCRワールドツアー』のファクトリードライバーたちと競い合うのは特別な気分だ。いつかワールドツアーにも出場できたらいいなと思っているし、このカテゴリーの可能性を信じている。僕自身、このTCRサウスアメリカに最初に挑戦した“ストックカーマン”だし、このシリーズがどんどん成長することを願っている」
これでアルゼンチン出身グエリエリが、首位ミケリスと15ポイント差のランキング2位に浮上した2024年の『FIA TCRワールドツアー』は、このまま南米大陸を移動してウルグアイへと向かい、8月3~4日にエル・ピナールで引き続きTCRサウスアメリカとの併催戦が争われる。
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