2018年1月28日頃、FacebookとTwitterで日産の新車販売に関して、なかなか衝撃的な情報が出回った。
その書き込みによると、
日産グループ世界販売2位! それでも「日本」の影響力は徐々に低下中
◎年明けの販売戦略会議で、日産自動車から方針が(各販売店に)伝えられた
◎世界全体の中で、日本国内での販売比率は6%に満たない(実際には2017年の累計ではグループ全体で6.5%、日産ブランドだけだと9.6%)
◎そこで販売比率を上げるため、不採算車種の整理統合を進める
◎マーチ、キューブ、ジューク、ティアナ、スカイライン、エルグランド、シーマは撤退もしくは三菱とのOEM車に転換
◎次期セレナはデリカD:5と共同開発車となる
◎当面の新規モデルはEVが一台
上記が通達されたとのこと。
この「販売戦略会議」は事実なのか? 事実だとすれば、日産の国内販売車種は(少なくとも独自開発車種としては)半減以下になることになる。
毎月多くのディーラーに通い、「生」の新車情報を届けてくれる流通ジャーナリストの遠藤徹氏に、この情報の真偽を調査してもらった。
文:遠藤徹 写真:NISSAN
■その「販売会議」は実際にあったのか?
首都圏にある日産系列店の店長クラスに取材したところ、上記「販売戦略会議」に関する情報はいっさい入っていないという。
「しかし現状から推察して、こうした方策、方向性はうなずける。自分には届いていないだけで他の販売店幹部には届いている可能性もある」とのこと。以下、取材して得た情報を整理してお伝えしたい。
現時点で、日産ブランドの国内登録乗用車の売れ行きはノート、セレナ、エクストレイル、リーフの4車種で半分以上を占める。
それ以外のフーガ、シーマ、ティアナ、ウイングロード、GT-R、フェアレディZ、ラフェスタハイウェイスター、エルグランド、キューブ、ジュークなどは月販20~450台で推移しており、採算割れの状態になっている。
日産エルグランド。売れ筋カテゴリーながら現行型は2010年デビューでフルモデルチェンジの予定は立っていない
こうした中でウイングロードとラフェスタハイウェイスター(マツダからのOEM供給車)は昨年12月をもって販売を終了した。したがって「売れ行き不振車種は車種整理となるか、資本提携してグループ会社となった三菱自動車とのタイアップ強化で再編の対象とする」という考え方は、基本的にうなずける、という(もちろんフラッグシップカー、イメージリーダーとしての役割があるGT-Rについては別問題)。
こちらも次期型の開発状況が見えてこないGT-R。世界的なイメージリーダーだからモデル消滅の心配はないものの、次期型のデビューが先送りになっている可能性はある
■なぜ車種削減案は現場に通達されないのか?
「販売戦略会議」が実際にあったかどうかはともかく、その削減案には説得力があるし、現場も納得できるものだろう。
しかし、ではなぜその削減案は販売現場に対してオープンにされないのか?
その理由としては、現在、生産販売しているモデルへのマイナス影響と営業部隊への士気ダウンへの配慮が考えられる。
例えばこの2月13日にはジュークが法規対応で一部改良を実施する。
4月1日にはキューブがマイナーチェンジ予定。
冒頭の削減案によればこの両モデルとも「撤退もしくは三菱とのOEM車転換」の対象になっているので、当面の商品改良にとってマイナスになる可能性がある。
また、「マーチもOEM供給車になる」というのは、三菱のミラージュもタイからの輸入モデルであるから、「次期モデルはミラージュに統一され、マーチは三菱からのOEM車両になる」というのも理屈に合う。
現行型のデビューは2008年のキューブ。さすがに10年進化なしだと古く感じてしまう
となるとマーチの派生モデルである次期型キューブもタイからの輸入モデルとなると、国内販売での成功率は低くなる。
現状、NV200バネットはデリカD:3として三菱にOEM供給している。これと次期型キューブを統合して三菱が開発、日産へOEM供給する……ということになるのかもしれない。
次期型ジュークはもともと次期型RVRと統合される、という情報が入っていた。開発の主体は日産か三菱かはわからないが、同じプラットフォームを使うことはまず間違いない。
最後に「EVを一車種追加」という話だが、日産はEVを当面4車種態勢に拡大すると表明しているので、ほぼ間違いない路線と思われる。こちらは三菱にOEM供給することになりそうだ。
こうして考えると、冒頭に上がった記事は手持ちの新型車開発情報とも整合性がとれる。
日産だけでなく、トヨタも近々取り扱い車種を大幅に整理する計画がある。日本国内の市場規模縮小により各メーカーの車種整理が進むのは、生き残り戦略として(寂しくはあるが)正しいのだろう。
ジュークは今年~来年には次期型にフルモデルチェンジと言われているが、果たして……?
■日産ディーラーの証言
【証言1(首都圏日産店)】
乗用4車が扱い車の半分以上を占め、あとは全くの販売不振であるから、三菱との共同開発、OEMによる再編か撤退するとの方策は理解できる。
ただエルグランド、キューブ、ジュークなどはフルモデルチェンジし、新型になればマーケットニーズはあるのだから、それをしないのは日産開発陣の怠慢だ。
再編によって有力モデルが継続されるのであれば、まだ販売増が見込めるが、そうでなくただ車種が大幅に絞られるのであれば未来は暗くならざるをえない。
【証言2(首都圏プリンス店)】
セダンはまったく販売不振だから、整理の対象になるのはやむをえない。
ただホンダ、マツダ、スバルのように、日産グループより規模が小さい会社なのに、独自開発の新型車投入で頑張っているメーカーもあるのだから、チャレンジしてもらいたいところだ。
クロスオーバーSUVやボックス型ミニバンはマーケットが高いのだから、スピーディに新型車の投入を期待したい。
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