スズキが昨年9月に発売した「ワゴンRスマイル」の販売が好調な滑り出しを見せている。これがワゴンRか⁉ の常識を覆したマルっとしたスタイルに、今や必須アイテム化しつつある両側スライドドアも備えているところがウリ。
ただ、よく見るとすごく作り込まれたいいクルマ感満載!! 人気急上昇のワゴンRスマイルの魅力に迫ってみる。
ワゴンRスマイル絶好調! 両側スライドドアの威力を再検証する
文/飯田裕子、写真/飯田裕子、スズキ、ベストカーWeb編集部
■昨年10月の販売台数でワゴンRが王者N-BOXの独走を止めたことが話題に
かつての販売No.1の軽ワゴンRに昨年追加されたのが「ワゴンR スマイル」であーる。直線基調としていた本家ワゴンRからの派生車として、かわいらしいスタイルでの登場となった
スズキが昨年9月に発売したワゴンRの両側スライドドアバージョンの「ワゴンRスマイル」の販売が好調だ。昨年10月のワゴンR全体の販売実績は8808台(全国軽自動車連合会集計)で首位となり、長らく続いていたホンダN-BOXの連続首位記録を止めたのは大きなニュースとなった。
発売直後だからという見方もできるけれど、正直に言ってN-BOXの人気は群を抜いているうえ、スーパーハイト系モデル(ダイハツタントやスズキスペーシア、日産ルークスなど)人気の層は順位に係わらず厚い。
10月以降もそれまでは10位前後が定席だったワゴンRはほかのハイト系(日産デイズやダイハツムーヴ、スズキハスラー)やミラやアルトなどのスタンダート系、SUVたちもひしめくなか、ハイト系のトップセラーとして第2集団の上位を走り続けている。
そんなワゴンRの販売の好調ぶり、その半数以上をスマイルが占めているという。しかも少なくとも7割は女性ユーザーなのだとか(これは登録名義が女性になっている割合であり、実際のユーザー数ではない)。
■今や指名買いも出るほど欲しい装備となった、スライドドアを採用して人気復活!!
ここ最近のワゴンRの販売を牽引している特徴のひとつが両側スライドと質感にもこだわった個性的なデザインだ。
ディーラーに「スライドドアのモデルはありますか?」とスライドドアを指名してお店を訪ねる方も多いそうで、スズキがハイト系モデルにもスライドドアを採用した背景にはユーザーのニーズを叶えるモデル作りがあったという。
軽自動車のボディの全長3395mm×全幅1475mmは各社ともに同数値。違うのは全高で、スーパーハイト系なら1800mm前後であり、それらには今やスライドドアの採用は当たり前となっている。近年ではアウトドア志向の方もユーザーにいるが、子育て世代や介護や介助の必要な高齢の両親を持つ
■今やハイト系ワゴンにも両側スライドドア仕様がマストとなってきた
ルーフはそんなに高くなくてもいい。でもスライドドアは欲しい。そんなユーザーのニーズに応えて登場!! ワゴンRを名乗ったのは先行しているムーヴキャンバスへのリスペクト……と捉えたい
一方、ハイト系は全高1600mm台のなかで寸法はメーカーによって異なる。全高の高さ=室内高は高いほうがいいが、スーパーハイトモデルたちほど高くなくてもいい。でも、狭い駐車場での乗り降りの際などで隣のクルマに気を遣わなくていいという安心感もあってスライド式ドアが好まれる傾向がうかがえる。
そんなスライドドアの開口幅600mmやリアのステップ高345mmはすでにスペーシアで定評のある広さや高さを採用し、乗降性にも優れる。また、大きな荷物やお子さんを抱っこして車外で出る際などに便利な「パワースライドドア予約ロック機能」なども備えているのも便利。
ハイト系モデル+スライドドアの人気ぶりの裏づけと言えるのがダイハツムーヴキャンバスだ。元祖ムーヴには採用していないスライドドアをこのクラスとして初採用したこちらも、個性的なデザイン(しかも8割の方が個性の強いストライプカラーを選ぶらしい)とともに今やムーヴのなかでも圧倒的に
■ワゴンRとムーヴハイト系ワゴンの2TOPがともにスライドドア搭載車が人気の中心に!!
ハッキリ言ってしまうと、この2台のキャラは似ている。が、スマイルが登場したことで比べた結果、ダイハツのムーヴキャンバスを選ぶ相乗効果を生んでいるのも間違いない。
スマイルはキャンバスに対して全高が40mm高く、これはスズキのなかではワゴンRより45mm高く、同社スーパーハイトのスペーシアに対し90mm低い。全高のバリエーションがさらに広がった。しかもハイト系モデルたちのなかでは現在では最も全高=室内高が高いというのも絶妙にニーズをくすぐっているのではないか。
スライドドアはコスト増が車両価格に載っかるうえに車重も重くなり、燃費にも影響する。それを承知のうえで選ばれる理由をスズキも「スライドドア効果」だと言っている。しかもそれまでワゴンRは男性ユーザーのほうが多かったそうだが、今は7割がワゴンRスマイルを選ぶ。
■内装のそこかしこにさりげないこだわりに思わずスマイルがあふれる
アイボリーパールのカラーパネルに細かなステッチ(風)入りのドアパネルとデザイン豊かなアイテムが随所に織り込まれ、クルマ全体の質感が向上にひと役買っている
その魅力のもうひとつがデザイン性とそのクォリティだ。スクエアなボディは見るからに見切りがよさそうであり、いっぽうで角を丸め、ボディ全体の柔らかな印象も製造品質もよく保たれている。楕円のキラッとつぶらなライトがチャーミングな目力を発揮しているところも付け加えておきたい。
スズキディーラーのショールームにハスラーやクロスビー、アルトラパンというオシャカワ系のモデルとともに並んでいても見映えするし、個性もあり、品質面では先発のモデルには申し訳ないが、ニューモデルほど進化している印象も抱けるかもしれない。
スズキのデザインの「魅せ方」は確実に昇華している。樹脂を多用しながら、表面処理の仕方やいたずらに艶を出さないセンス、それに例えば、インテリアのドアトリムやインストルメントパネルには他モデル同様に樹脂を採用しているが、そこにステッチのアクセントが効果的に採用されている。
でもコレは本物の糸ではなくステッチ風なのだ。それが決していかにもな感じに見えず、自然であり、個性の演出にひと役買っている。天井のキルティングのモチーフ、ファブリックシートの素材感も柔らかく質感が保たれている。
デザインの質感や世界感はこういう小さなことの積み重ねを妥協しないことが大事であり、スズキの軽自動車の小さな世界を満足度も高く楽しめるに違いない。ちなみにリアシートのスライド長は160mm、分割式シートの背もたれを畳むことでラゲッジのフラットな収納スペースを拡大できる。
今や軽自動車のハイト系モデルの数値を超える広さ感の演出とパッケージングの創意工夫はまさに日本車の機能美と言ってもいいくらい。それはスマイルのみならず、と言っておきたい。
■開放感が高く視界もいい! スライドドアだけでない魅力でも思わずスマイルになるクルマだ
そんなスマイルの特筆ポイントがもうひとつある。視界の良好さによる運転のしやすさだ。スマイルの前席のヒップポイントはワゴンRよりも70mm高く、四方の視界が良好で運転席に座った際の第一印象が「視界のよさ=安心感」だった。
70mm着座位置が高くなってもヘッドクリアランスはまだまだ余裕が感じられる。個人的にもこれくらいが充分と思える開放感がちゃんと保たれている。フロントウィンドウのパノラマ感とその両サイドのカクッと曲がる位置も絶妙で、ボンネットの車幅感も得やすい。
パワートレーンはエンジン車とマイルドハイブリッド車がある。マイルドハイブリッド車は発進時や加速時にモーターがアシストしてくれることで速やかな走行が可能であり、静粛性にも貢献している。減速時にはISG(モーター機能付き発電機)と専用のリチウムイオンバッテリーを搭載し走行性能と燃費(環境性能)の両立が図られている。
乗り心地もよく、滑らかなドライブフィールがステアリング操作を含めて整えられている点も洗練度アップがうかがえるポイントだ。ただ、ターボエンジン搭載車も欲しいところだ。登坂の多いエリアや高速移動の頻度が多い方にはもう少しエンジンパワーの力強さが欲しいと思うかもしれない。
「スライドドアのモデルはありますか?」というニーズが生んだスマイル。男性ユーザーの多いワゴンRに対して女性ユーザーをターゲットとしたスマイル。デザインや使い勝手、最新の安全装備の採用など、スライドドアを求める女性ユーザーがさらに満足、納得のできるクルマ作りをしていると感じる完成度の高さもスマイルの人気の理由だろう。
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