欧州ではEVシフトが加速する
最近、欧州車を中心に48Vマイルドハイブリッド車のラインアップが一気に増えてきた。なぜだろうか? 背景にあるのは、世界で最も規制内容が厳しいと言われる、欧州CO2規制への対応だ。CO2規制とは、実質的な燃費規制と解釈できる。こうしたトレンドが起こることは、いまから約10年程前、2010年代前半にはすでにわかっていた。
EV感ないし燃費もそんなに変わらない!? クルマの「マイルドハイブリッド」の存在価値とは?
実際、筆者はこれまで欧州やアメリカで開催された自動車関連の国際会議に参加してきたが、そのなかで欧州メーカー幹部やエンジニアは「近い将来、欧州車はガソリン車のダウンサイジングと、マイルドハイブリッドが主流になる」と明言していた。そうした予測がいま、現実になってきたのだと言えるだろう。ただし、状況はもっと厳しくなっている。それが、急激なEVシフトだ。
EVシフトといえば、独フォルクスワーゲングループが2016年に発表した中期経営計画で構想を発表し、その後VW「iDシリーズ」や、ポルシェ「タイカン」など次々と量産型EVを世に送り出してきた。
それが2010年代後半となり、世界市場ではESG投資(環境・ソーシャル「社会性」、ガバナンス「企業統治」)という観点での電動化が一気に広がり、欧州、アメリカ、中国、韓国、そして日本メーカーでもEVシフトは企業にとっての必須事項になってきたのだ。
EVシフト(クルマの電動化)といえば、2020年後半にトヨタ社長で日本自動車工業会会長の豊田章男氏がオンラインでステートメントを出したように、「EVシフト=EV(電気自動車)」ではない、という解釈がある。
電動車には、マイルドハイブリッド、THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)のようないわゆるストロングハイブリッド、外部からの充電ができるプラグインハイブリッド、EVとEVに付随するレンジエクステンダー、そして究極の次世代車ともいわれるFCV(燃料電池車)などさまざまな種類があることは、クルマ好きの皆さんならばご承知のことだと思う。
ただし、こうした電動化に対する全方位戦略が通用しないと考えるメーカーも出てきた。例えば、2021年2月に入って「2030年までに全モデルをピュアEV(完全なEV)化する」と表明したスウェーデンのボルボなどである。
こうして、グローバル市場でのEVシフトが刻々と変化するなか、現状でのガソリン車とディーゼル車が生き延びるためには、最低でもマイルドハイブリッド化が求められることになる。これは、軽自動車、コンパクトカー、SUV、そして高級スポーツカーなどすべてのモデルが対象となることは明らかだ。
EVシフトに対応する新規プラットフォームや、新規パワートレインの量産が本格化するまで、当分の間はマイルドハイブリッドが追加ラインアップされるモデルが、各メーカーでこれからまだまだ増えそうだ。
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