どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】メルセデス・ベンツGLBクラス【細部まで見る】 全133枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
仕事絡みの会話で、「後出しジャンケンで負ける」というフレーズを用いることがままある。
たいていの場合は、一匹目の泥鰌(どじょう)を鮒と勘違いしたような結果。マーケティング的に言えば市場動向を的確に分析できなかったゆえの失敗である。
GLAのFMCと同時に新ブランドとして登場した「GLB」の第一印象は、「手堅い」である。
導入時期としては後出しだが、ファミリー&レジャー向けのSUVに求められる要素を的確に押さえている。流行ではなく、普遍性を備えた実利と換言してもいいだろう。
それはボクシーなフォルムのキャビンを中心に纏められた外観が雄弁だ。
MB車らしい風格を漂わせるものの、これ見よがしの演出や流行に媚びた感じがない。
サイズ/内装を検証
最優先されるのはファミリー&レジャー用途に向けた「実」なのが外観からも見て取れる。
全長は4650mm。国産車ならRAV4と大差ない寸法だが、2830mmという長いホイールベースを活かしたロングキャビン設計で3列シートを実現。
室内有効長は大人の縦3列着座には必要最低限である。
プリウスαなどのステーションワゴン型ミニバン相応の実用性を備え、圧迫感や見晴らしを配慮したサードシート周りの設計と相まって、同サイズの3列シートSUVでは実用性は良好。
さすがにミニバン代替に十分とまでは言えないが、4名乗車を基本に多様な用途に使えるキャビンを備えている。
どんな感じ?
車名から分かるようにA&Bクラス同様にFF用プラットフォームをベースに開発されているが、リアサスは試乗した「GLB 250 4マティック・スポーツ」だけでなくベーシックモデルとなるFFの「GLB 200 d」もマルチリンク式独立懸架を用いる。
シャシー周りでもう1つ見逃せないのが最低地上高である。
社内測定値の注釈はついているものの、202mmはランプブレークオーバー角に厳しいロング・ホイールベースをしても十分に余裕のある数値だ。
この試乗では試せなかったが、ABSも統合制御された「オフロードモード」を備えた電子制御4WDシステムと合わせて悪路踏破性もかなり期待できる。
また、乗降時の裾汚れ防止に効果的なサイドシルまでカバーするドア設計など、大技小技揃えてアウトドア・レジャー用途に対応している。
とはいえ走りの主はオンロードである。フットワークは一言でまとめれば基本に忠実な素直さ。SUVの高い重心高や重い車重を硬さで無理に抑え込んでいる印象はない。
サス仕様の分類ではスポーツサスとなり、235/45 R20を履くため、路面の微小凹凸には多少神経質な部分もあるものの、サス・ストローク感のある挙動がハンドリングと乗り心地の両面で好印象。
ロールの入りは滑らかに、それでいてロール速度も量も抑制が利いている。ワインディング路でも高速道路でも自然体で扱えて、同乗者と一緒に風景や会話を楽しめるゆとりが何よりである。
走り味は、安定・力強さ
グレード名に「スポーツ」を冠しているが、刺激的あるいは昂揚感を誘うようなパワーフィールではない。
35.7kg-mの最大トルクを1800~4000rpmで発生し、最大出力発生回転数の5500rpmに至っても29kg-m以上のトルクを維持する。
全開で加速すればパワースペックどおりの速さを示すが、回転上昇に応じたトルク増がないので、心情的に盛り上がらない。刺激的エンジン音や排気音もない。事も無げに速いのである。
全開加速でもそんな調子なので、実用走行ではさらに穏やかで力強い。巡航回転数は低く保たれ、巡航からの加速は大体が1速ダウンシフトで3000rpm以下で済ませてしまう。
変速のタイムラグも少なく、滑らかに繋ぐので大きく速度変化する状況では同乗者の心理的な負担も少ない。さまざまな状況で安定したドライブフィールを示した。
上級クラスと異なり、ミッションにDCTを用いるので、クラッチの断続を伴う極低速での加減速、あるいはDレンジ-Rレンジの切り替え時の間などでトルコンATほどの滑らかさには欠く。ただ、扱いに影響するほどではなく、駐車場や渋滞でのコントロール性も良好。
生活の場からロングツーリングまで頼もしいパワートレインである。
安全&運転支援について
先行技術ではそうも行かないが、安全&運転支援技術は車格に関わらず共通化が望ましい。
もちろん、走行性能面の適応用途にもよりけりだが、同じ場所で同じように走らせるなら同じ安全&運転支援技術が採用されて然るべき。
GLBクラスの安全&運転支援技術機能はSクラスと同等のものが用意される。とても良識的である。
歩行者や交叉車両の飛び出しまで対応した自動緊急制動機能、高速道路での自動車線変更とLKA(レーン・キーピング・アシスト)、一般道で3秒内/高速道路で30秒内の自動発進機能を備えた全車速型ACC、ドライバーが人事不省に陥った時などに自動的に減速停止するアクティブ・エマージェンシー・ストップアシスト等々を全車に標準装着する。
レーダーやソナー、カメラなどで車両全周の監視を行えばこその機能であり、安全&運転支援機能は間違いなく最高水準にある。
付け加えるなら、ACCの前走車追従時の加減速制御の滑らかさやLKAの車線内の位置取りなど違和感が少ない。運転補助がこなれている感じである。
運転支援は安全確保の数値的余裕が最優先されるのは当然だが、感覚的な融合が信頼感の醸成には重要なのだ。
「買い」か?
安全&運転支援装備も車載ITも利便快適装備も標準装着。工場装着OPの設定はない。
つまり、標準でフル装備仕様となる。しかも、高出力エンジンを搭載する4WD仕様である。約700万円の価格も仕方ないのだが……。
パワートレインや装備を勘案すればCクラス・ワゴンと同等価格。実用面のコスパで量ればMB車のほうでもかなりお得感がある。
4名乗車でキャビンも走りも悠々、しかも7名乗車も可能。家族や友人とアウトドアを楽しめるのだ。贅を愉しむユーザーでなければ、上級MB車からダウンサイジングにも最適である。
気になるのは今回試乗できなかった「GLB 200 d」の存在。駆動方式がFFになり、装備もグレードダウンするが、同様の安全&運転支援装備を備えて184万円安。
ハードな悪路を走る機会もなければかなり魅力的。悪路走破性をどこまで求めるかは悩み所だ。
いずれにしてもGLBクラスはツーリング&レジャー向けの実践志向SUVと言う評価だけでなく、中級クラスのステーションワゴン代替モデルとしても非常に魅力的な存在。
悪路走破性にはあまり興味はないが、キャビン実用性が気になるなら検討必須のモデルだ。
GLB 250 4マティック・スポーツ スペック
メルセデス・ベンツGLB 250 4マティック・スポーツ(AMGライン標準装備)
価格:696万円
全長:4650mm
全幅:1845mm
全高:1700mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:12.0km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1760kg
パワートレイン:直列4気筒1991ccターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:224ps/5500rpm
最大トルク:35.7kg-m/1800-4000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乗車定員:7名
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みんなのコメント
プレミアムすぎる日本価格のせいで、好評不能、おすすめも出来なくなる。
苦し紛れにCクラスワゴンと比べて「高くない」とか、失笑の極み。
作ってるメキシコ人もビックリ!