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【聖地はドイツにあった】マツダ・ミュージアム 世界最大級の展示内容 100年の歴史に浸る

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【聖地はドイツにあった】マツダ・ミュージアム 世界最大級の展示内容 100年の歴史に浸る

マツダファンのメッカ

text:James Disdale(ジェームズ・ディスデール)

【画像】マツダのラインナップ一覧【現在販売されているモデルを写真で見る】 全260枚

translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

マツダの100周年を祝うなら、広島への旅行がちょうどいいのではないか。そう思われるかもしれないが、実はそうではない。広島には100年前からマツダの本拠地があったが、その歴史に浸るには、ドイツのアウクスブルクに行かなければならない。

そこには、世界最大かつ最高のマツダのコレクションを誇るフレイ・ミュージアム(Mazda Classic Automobile Museum Frey)がある。50台以上の実車が展示され、100台以上が倉庫に保管されている。そのすべてが走行可能というから驚きである。

しかし、すべてはクルマではなく、コルクから始まった。1920年、松田重次郎が広島でコルクを製造する東洋コルク工業株式会社を設立。松田は1年ほどで工作機械の製造に進出し、やがて社名から「コルク」を外した。

1930年には、初の自動車が登場し、マツダの名前が初めて使われた。マツダ・ゴーは三輪商用トラックで、基本的にはオートバイとピックアップを組み合わせたものであった。

フレイ・ミュージアムには、1950年製の後期型のゴーが展示されているが、グループBラリーカーのRX-7のレプリカとともに、めったに走らない2台の展示車のうちの1台となっている。その排気音のせいで、スロットルを開けた瞬間に近所の人たちが怒りの声を上げて議会に通報してしまうからだ。

国内でのゴーの成功を受けて、マツダは1940年に2ドアの小型セダンの開発に着手した。しかし、日本は第二次世界大戦に突入したため、試作段階を通過することなく、工場は軍需工場となってしまった。マツダが次の自動車を発売するのは、20年後のことであった。

1945年8月6日、広島はアメリカによる原爆投下の標的となる。同15日に終戦を迎えたものの、マツダの工場は大きな被害を受け、残った工場も仮設の病院として使われた。しかし、ゴーの生産は年末に再開され、1949年には初めて海外輸出が開始された。

その後の15年間で、マツダは商用車メーカーとして成長し、1950年代末には約30種類のピックアップやバンを販売していた。そして1960年には、同社初の乗用車であるR360が登場した。軽自動車規格の2+2のクーペは瞬く間にヒットし、小型車クラスでは日本の最大手となった。

ロータリーエンジンの登場

R360のデビューから1年後、マツダはドイツのNSU社からワンケル・ロータリーエンジンのライセンスを取得。開発に数年を費やした後、1967年にコスモスポーツの生産を開始した。ミュージアムの発起人であるウォルター・フレイの、マツダへの情熱の火付け役となったクルマである。

展示されている110S(コスモスポーツ)は、彼がコレクションのために購入した最初のクルマだ。1980年にニュージャージー州のディーラーから入手し、ドイツでフルレストアを受けた。

1960年代、マツダはファミリア800をはじめ、ベルトーネスタイルの大型セダン、エステート、クーペのルーチェなど、主力車種を次々と投入していった。欧州を皮切りに、1970年には北米への輸出を開始した。

ブランドの中心となったのは米国で、特にロータリーが人気を博した。1973年、マツダはこのエンジンを搭載したクルマを25万台生産し、世界のメーカーのトップ10入りを果たした。

しかし、この年は石油危機の年でもあり、その2年後には米国で触媒コンバーターの装着が義務化された。マツダは多額の借金をしなければならず、結局、1974年にフォードが33%の株式を取得することに合意した。

この提携により、マツダはフォードの豊富な予算を活用し、フォードはマツダの技術力を活用することができた。323や、最近では2、3など数多くのモデルが共同開発された。マツダは2015年にフォードの株式を買い戻して独立したが、その後間もなくトヨタとハイブリッド・パワートレインの開発に重点を置いた提携を結んだ。

マツダが独自の道を歩んだプロジェクトの1つにロードスターがある。米国人ジャーナリストのボブ・ホールと当時の山本健一社長が発案したこの軽量2シーターは、1989年に発売されて以来、その存在感を示し続けてきた。フレイのミュージアムには、179台しか生産されなかった希少な2代目(NB)ベースのクーペをはじめ、多くのロードスターが展示されている。

マツダは長年にわたって革新を続けてきたが、斬新な圧縮着火式ガソリンエンジン「スカイアクティブX」をはじめ、最近ではプラグイン・ハイブリッドの発電機としてロータリーを復活させるという話もある。

しかし、マツダが将来どのようなモデルを作るにしても、フレイ・ミュージアムには常に展示スペースがあるということだけは確かだ。

ウォルター・フレイのコレクション

ウォルター・フレイのコレクションは、今から40年前の1980年に購入したコスモから始まった。アウグスブルクに最初のマツダディーラーをオープンした3年後のことだ。

長年にわたり、世界中から購入したもので少しずつコレクションを増やしてきたが、きちんと展示できるようになったのは2017年のことだった。フレイとその息子、ヨアヒムとマルクスは、1897年に建てられた路面電車の車両基地を購入し、全面的に改装してマツダに関するあらゆるものを展示する場所とした。

現在は約50台のクルマが展示されているが、150台近くのコレクションの中から定期的に展示車両を変更しており、その数は今後も増え続けるだろう。しかし、恒久的に展示されているのは、ウォルターの情熱の始まりとなったコスモである。

ここからはミュージアムに保管・展示されている車両を紹介する。

1960年 マツダR360

1960年に発売されたマツダ初の乗用車R360は、瞬く間に軽自動車市場の65%、日本国内の新車販売台数の15%を占めた。356ccの4ストロークエンジンを搭載し、4輪独立懸架式サスペンションを採用。6年間生産された。

1969年 マツダ・ルーチェR130

ジョルジェット・ジウジアーロがベルトーネ時代にスタイリングを担当したこのゴージャスなピラーレスクーペは、マツダで唯一の前輪駆動のロータリーであった。128psのツインローターエンジンと4速MTを搭載し、3年間で976台のみが生産された。

1974年 マツダREPU

働き者のピックアップトラックに高回転のロータリーエンジンはあまり似合わないが、それでもマツダが搭載を止めることはなかった。米国とカナダでのみ販売されたこのクルマはREPU(ロータリーエンジン・ピックアップ)と呼ばれ、4キャブレーターのツインローターで最高7000rpmの回転数を誇る。1974年から1977年にかけて約1万5000台が生産され、現在では米国のコレクターの間で珍重されている。

マイクロバスにもロータリー?

1975年式 マツダ・ロードペーサー

ウォルター・フレイのお気に入りのロードペーサーは、ホールデンのセダンがベースとなっている。トヨタ・クラウンに対抗するため、マツダはオーストラリア製の大型ボディに1.3Lのロータリーエンジンを搭載した。残念なことに、このモデルは遅かった上に価格が高かったため、わずか800台しか販売されず、2年後の1977年に生産が終了した。

1976年 マツダ・パークウェイ・ロータリー26

おそらく最も奇妙なロータリー搭載車はパークウェイだろう。RX-7のツインローターエンジンを発展させたものを搭載した26人乗りのマイクロバスで、最高出力137psを発揮。最高速度120km/hに達した。燃費は恐ろしいものだっただろう。

1977年 マツダRX-5

マルクス・フレイが英国で入手した、ロータリーエンジンを搭載したRX-5の欧州仕様という希少な1台。元オーナーからオンラインで購入した後、フレイは2週間の休暇を利用して英国に行き、その後ドイツに持ち帰った。このクルマは、彼のコレクションの中でも特にお気に入りの1台である。

1977年 マツダ323

ウォルター・フレイがディーラーを開いたときに発売された323は、マツダがついに欧州に進出する足がかりとなったクルマである。後輪駆動のレイアウトで、ライバルとは一線を画していたが、広々としていて運転しやすく、信頼性も高かった。展示されているグリーンの車両は、広島からドイツに送られたショーカーの1つで、現社長をはじめ、多くの来場者のサインが入っている。

1984年 マツダRX-7

RX-7専用のコーナーがあり、3つのモデルがそれぞれ1台ずつ展示されている。初期のターボチャージャー搭載モデルは、運転ができなかったフェリックス・ヴァンケルに与えられたものだ。彼は自分の代わりに運転手を雇い、信号待ちで出会ったポルシェとの即興レースによく参加させていたという。

マツダが起こしたイノベーション

マツダはロータリーエンジン以外にも、さまざまな革新的技術を開発・採用してきた。

スカイアクティブX

マツダが開発した圧縮着火式2.0L ガソリンエンジンは、ディーゼルとガソリンの長所を併せ持っている。大手企業ではなく、小さなマツダが成し遂げたことに驚きを隠せない。

四輪ステアリング

1987年にホンダが最初に生産を開始したが、1988年に登場したマツダの626 4WSは、はるかに洗練されていた。油圧ラックを電子制御することで、運転席と後輪の間に物理的なリンクを持たせていない。

アトキンソンサイクルエンジン

トヨタは1997年のプリウスで初めてアトキンソンサイクルエンジンを作ったと主張していたが、実際には1993年のユーノス800(クセドス9)が量産車としては初だった。スーパーチャージャーを使用し、技術的にはミラーサイクルエンジンであったが、基本原理は同じである。

スーパーチャージャー付きディーゼル

スーパーチャージャーを搭載したディーゼルエンジンは、当初はトラックに搭載されていたが、1988年のカペラで乗用車にも採用された。プレッシャー・ウェーブ方式(PWS)を採用しているため、通常のブロワーよりもパワーロスが少ないが、2.0Lでは75psしか出なかった。

水素ロータリーエンジンの開発

i-Stop(アイ・ストップ)

ほとんどのブランドがアイドリングストップ技術をサプライヤーから購入していたが、マツダは独自に開発した。エンジン停止時に、どのピストンがパワーストロークに入っているかをセンサーで検知することで、他のエンジンよりもスムーズで効率的な再始動を可能にした。

リサイクルバンパー

マツダは1992年に初めてリサイクル素材をクルマに採用した。当初はアンダートレーなどの見えない部分にリサイクル素材を使用していたが、2011年には、再生プラスチックのバンパーを大幅に推進した。

水素ロータリーエンジン

マツダは水素を燃料とするロータリーエンジンも開発している。燃焼室と吸気室が分離されていたため、揮発性燃料を使用するにあたり変更は必要なかった。限定的に販売されたが、水素ステーションの不足により普及はしなかった。

スカイアクティブエンジン

初代CX-5に搭載されたエンジンは、スカイアクティブGとスカイアクティブDの2種類。14:1の圧縮比(ガソリンでは最高、ディーゼルでは最低)を実現し、同じラインで製造できるため、使用効率と生産効率が向上した。

外国人社長

マツダは1996年にヘンリー・ウォレスを起用し、日本の自動車メーカーとしては初めて外国人が社長に就任した。元フォードのウォレスは、雇用を失うことなく収益性を向上させ、人気を博した。スコットランド語訛りの日本語を使ったテレビ広告でも知られていた。

サットナビ

サットナビを最初に搭載したのはマツダだ。1990年に日本で発売されたユーノス・コスモにオプション設定され、カラースクリーンと衛星リンクのおかげで初めてリアルタイム測位が可能になった。

モータースポーツの栄冠

1991年 ル・マン24時間

1991年、マツダは日本企業として初めてル・マン24時間レースで優勝した。トリプルローターの787B(ジョニー・ハーバート、ベルトラン・ガショー、フォルカー・ヴァイドラー)は、ジャガー、メルセデス・ベンツ、プジョーを抑えて栄冠に輝いた。

1981年 スパ・フランコルシャン24時間

マツダが24時間レースで初めて成功を収めたのは、ル・マン優勝より10年早いスパだった。地元のエース、ピエール・デュドネがTWRを搭載したRX-7を駆り、2位に2周の差をつけて優勝したのだ。

1968年 マラソン・デ・ラ・ルート84時間

初の国際レースとなったニュルブルクリンクの84時間レースにマツダは2台のコスモスポーツを走らせた。1台はゴール直前でクラッシュしたが、もう1台はポルシェ911とランチア・フルビアに次いでフィニッシュ。総合4位に輝いた。

1980~1981年 BSCC

1980年と1981年にBTCC(英ツーリングカー選手権)の前身であるBSCC(英サルーンカー選手権)で、ウィン・パーシーはTWR仕様のRX-7を使用して連覇を達成した。2年間のキャンペーンで22レース、19回のクラス優勝を収めた。

1991年 IMSA GTOシリーズ

マツダは1970年代から米国のスポーツカーレースを牽引してきたが、最大の成功は1991年のIMSA GTOシリーズでのタイトル獲得である。4ローターのスペースフレームRX-7を使用し、エースであるピート・ハルスマーとプライス・コブの活躍でクラス5勝を挙げた。

アンドロス・トロフィー2015

1990年に始まったフランスのアイスレースシリーズは、アラン・プロストやイヴァン・ミュラーなどのスター選手を集めて人気を博している。2014/15年シーズンで、3.0L V6、四輪駆動、四輪ステアリングを搭載するマツダ3に乗ったジャン・フィリップ・デローがタイトルを獲得した。

インディ・プロ2000

1983年から開催されているマツダのワンメイクシリーズは、グラハム・レイホール、マルコ・アンドレッティ、ジェームズ・ヒンチクリフ、スコット・スピードなど、多くのインディカーのスター選手が活躍するきっかけとなった。エンジンは2018年に4ポットが登場するまでロータリーが使われていた。

1975年 バサースト1000

マツダは、これまでにも多くのジャイアント・キラー(番狂わせ)をコース上で披露してきたが、オーストラリアで開催された1975年のバサースト1000はそのハイライトとなった。ドン・ホーランドと鮒子田寛はRX-3で総合5位に輝き、V8エンジンを搭載したホールデンのみがロータリーを上回った。

IMSAシリーズ

RT24-Pでトップを走り続けるマツダ。IMSAシリーズのトップクラスのために作られたこのマシンは、3勝を挙げて2019年のベストシーズンを迎えた。マツダは今年もタイトル争いに参加しているが、2021年は規模を縮小し、1台に絞られる。

1985~1991年 WRC

マツダは1985年から1991年までラリーの常連だった。初めはグループBのRX-7でスタートしたが、グループAの323 4WDの方が成功していた。1987年にはティモ・サロネンがスウェーデンで優勝し、1989年にはインバー・カールソンがニュージーランドで優勝している。

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