WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するアルピーヌ・エルフ・マットミュート(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)は、8月15日に開催されるWEC第4戦ル・マン24時間のテストデーに向けたBoP(性能調整)でエネルギー使用量が削減されたことを受け、ル・マンでの1スティントの長さがトヨタGAZOO Racingと比較して1周短くなるだけで済むことを望んでいる。
規則移行年の特別措置として、オレカ製ノンハイブリッドLMP1マシン『アルピーヌA480・ギブソン』でハイパーカークラスに参戦、ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定のマシンと同じ土俵で戦うアルピーヌは、WECの前戦モンツァと比べ、1スティントあたりの使用可能エネルギー量が74MJ削減されるというBoP変更を受けた。
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これに対しLMH規定の2台、TGRのトヨタGR010ハイブリッドとグリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMHは、モンツァでのBoP数値を維持したままとなっている。これらについてFIAやACOフランス西部自動車クラブによる説明は、現在のところまだない。
36号車アルピーヌA480のドライバー、ニコラ・ラピエールにこのBoPについて尋ねると、彼は「(走行前の)現在はまだ、それを把握するのは難しい」と述べた。
「確かにトヨタよりは(1スティントが)短くなるはずだが、それは今季最初からなので、もう慣れてきたよ」とラピエールはSportscar365に対し語っている。
「モンツァでは、そんなに悪くなかった。いま、彼ら(オーガナイザー)はエネルギーを削減した。だが、ここル・マンでは1周がかなり長いから、それほど悪くないかもしれない」
「正直に言うと、僕らはトヨタより1周だけ短いことを願っている」
「2周短くなるとしたら、レースではかなりどうしようもない状態になる。1周の違いしかないことを祈ろう。そうなれば素晴らしい。レース全体、観客、そしてすべてにとって、より良いことになる」
「開幕戦(スパ)のレースにおいては、BoPはまったく問題がなかった。(第2戦)ポルティマオでは、おそらく僕らはトヨタより少し速かった。そしてモンツァでは、トヨタが少し速かった」
「全体として、レースとエンターテインメントという面にとっては、非常によかったと思う」
「だけど、僕らがかなり早い段階でピットに入らなければいけなかったという事実は、すべてをめちゃくちゃにした。ドライバーとしては、とてもイライラしたね。ここル・マンでは、それが良くなることを望もう」
「ル・マンでの僕らのエネルギー量の削減は、予期されたものではあったと思う。だけど、トヨタとグリッケンハウスの数値が変わらなかったのは、僕らの最大の驚きだった」
■トヨタを「“コンフォートゾーン”から追い出すことが必要」とラピエール
レースで勝利のチャンスを得るためには、トヨタに対してプッシュする必要があるとラピエールは考えている。
2021年に新車として登場したトヨタとグリッケンハウスのLMH車両については、信頼性の面で懸念がある。一方アルピーヌも、昨年までのLMP1車両からは重量が増加しており、長時間のレースではコンポーネントに大きな負担がかかることが予想される。
「もちろん、このクルマの信頼性が高いことはすでに証明されている」とラピエールは語っている。
「しかし、昨年(のレベリオン・レーシングが走らせていた状態)よりもはるかに重くなる。昨年に比べると100kgほど重量が増えたので、このクルマをフィニッシュラインに運ぶことは難しくなる」
「だが、僕らにはそれが達成できるものと確信している。チームはその実現のため、本当に一生懸命働いてきた。このチームはこららすべての詳細についてよく把握しており、クルマの信頼性を強化することについては常に頼もしい」
「(信頼性の面では)トヨタよりも少しいい位置にいることは確かだろう。一方で彼らには2台のマシンがあるので、彼らのチャンスは倍ということになる」
「トヨタは最初の年から信頼性の高いマシンを作ることができると、我々は知っている。彼らは多くの作業、多くのシミュレーションなどすべてのことを行なってきている」
「さて、どうなるか。僕らにとって重要なのは、大きく遅れを取らないこと。彼らをプッシュすること。そして、彼らを“コンフォート(快適な)ゾーン”に入れないことだ」
「彼らが僕らよりもはるかに速いか、燃料(1スティント)に関して2周のマージンがある場合、僕らにできることは何もない。彼らはただ、クルージングするだけになる」
「僕らの意図は、大きく遅れることなく、トヨタをプッシュし、彼らをコンフォートゾーンから追い出すことだ」
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