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BMWが描くこれからのクルマのカタチとは。乗員とキャビンの新しい関係を小川フミオがレポート!

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BMWが描くこれからのクルマのカタチとは。乗員とキャビンの新しい関係を小川フミオがレポート!

BMWとMINIが語る「明日のデザイン」

BMWのデザインはこれからどう変わるか。クルマにおけるデジタル化があらゆる分野で進むなか、BMWとMINIのこれから行く先を、両ブランドのヘッド・オブ・デザインが語ってくれた。2021年3月にオンラインで開催された「フューチャー フォーラム」を舞台に、ジャーナリストからの質問への回答をまじえながら、新しいデザインの方向性を垣間見せてくれたのだ。

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たいへん興味ある内容のプレゼンテーションは、BMW Welt(ベルト=world)なるミュンヘンにあるBMW博物館隣接の施設で行われた。「フューチャー フォーラム」は、ミュンヘンで2012年にスタートした「ミュンヘン クリエイティブ ビジネス ウィーク」におけるイベントとして企画されたものだそう。

日本のウルトラテクノロジスト集団が登壇

BMWグループによる「フューチャー フォーラム」は、3日間にわたり開催された。初日は日本のデザイナー集団「チームラボ」のコミュニケーションディレクター、工藤 岳氏が登場。チームラボは2001年に東京大学と東京工業大学の大学院生ら5名によって設立されており、最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツの開発を行うことで、日本をはじめ世界中で評価が高い。

日本だと「チームラボボーダレス」(森ビルデジタルアートミュージアム)、「チームラボ偕楽園光の祭」(水戸・偕楽園)などが、2021年3月の段階で開催中。BMW(ジャパン)とチームラボのコラボレーションは、「BMW i BORN ELECTRIC TOUR」(2012年)が印象に残っている。最近では、2022年末まで東京・豊洲で開催中の「チームラボプラネッツTOKYO DMM」において、4シリーズにまつわる特別ツアーを開催するなど、浅からぬ関係を築いている。

BMWらしいデジタルの使い方

「フューチャーフォーラム」2日目に登場したのは、BMWグループでヘッド・オブ・デザインという重責を担うドマゴイ・デュケック氏。フランクフルト出身のクロアチア人であるデュケック氏は、欧州のデザイン学校として最高峰といわれる独フォルツハイム大学トランスポーテーションデザイン科で学んでいる。卒業後フォルクスワーゲンとシトロエンを経て、2010年からBMWに入社。エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏の下で、2シリーズ アクティブツアラー(2015年)やコンセプト i4(2020年)を手がけてきた。

「私がデザインで心がけているのは、それを通してユーザーに喜びを体験してもらうことです。クルマは、以前は単に移動の手段でした。そこから、いかに快適性を盛り込んでいくかに、私たちデザイナーは気を配るようになり、エルゴノミクス(人間工学)の概念をインテリアにとり入れるようになりました。そしていま、さらに新しい体験へと飛躍の時期がきているのです」

デュケック氏はデジタル化を、いってみればBMW的に使うことを考えている、と語る。

「たとえばインテリアをどう変えていくか。考えてみると、人間には五感(視・聴・嗅・味・触)があるのに、これまでのインテリアデザインではどこまでカバーできたでしょうか。私たちはほぼ視覚にのみ注意を払ってきただけです。残りの4つの感覚を、そのままに放っておいていいのでしょうか」

iXとi4がもたらすキャビン革命

デジタル化が進み、使える技術が増え、同時にスマートデバイスをはじめVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)やAR(アーギュメンテッドリアリティ=拡張現実)の技術が日常生活のなかに入ってきている。いま、ユーザーの求めるものの幅も奥行きも、以前とは比べものにならないほど広がっているのだ。そこをなおざりにしていては、ブランドの価値が減じてしまうのではないか。

BMWが向かおうとしている新しいインテリアデザインの例として言及されたのが、BMW「iX」と「i4」という登場間近の新型車。2021年3月15日にやはりオンラインで、新世代BMWのインテリアを中心とした“ユーザーエクスペリエンス”が紹介された。「21年にデビューするiXはデジタルの面でマーケットをリードします」とは、開発を総指揮するボードメンバーのフランク・ウェバー氏の言葉である。

新しいシステムは「BMWオペレーティングシステム8」という。コンピューターの演算処理能力を大幅に高めたのが特徴だ。大きな湾曲した画面をもつ新世代のデジタルコクピットをはじめ、高速コネクティビティや、ヘッドアップディスプレイ、ボイスコントロールシステムと関連づけられた第8世代のiDriveといった、いままで以上、あるいはいままでになかった体験を提供するのだという。

BMWグループのデザインを統括するエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏もiXを紹介するビデオに登場。「このクルマは走るリビングルームのように使えます」と述べた。

「iXは内側からデザインされたモデル。私たちの考える新しいマン・マシーン・インターフェースのありかたを体現しています。今回の開発にあたってまず考えたのが、従来のクルマのようなやりかたでは、iXのコンテンツにふさわしくない、ということでした。いままでどおりボタンを押すのでなく、もっとシンプルかつナチュラルに操作できないか。そしてそれが使う喜びを生まないか。考えて、デザインしています」

自動車とドライバーの新しい関係性を作りだす

モダンデザインがモットーとしていた言葉に、「フォーム・フォローズ・ファンクション」というのがある。アメリカ人建築家ルイス・サリバンによるもので、日本語では「形態は機能にしたがう」と訳される。自動車デザイン界でも、意味のないフォルム(デザイン)はよくない、とされてきた。

デュケック氏は「いま私たちが重要と考えているのは、形態は経験にしたがう、というものです」と述べる。いかにユーザーに新しい経験を提供できるか。それがデジタル化が進んだ新時代のクルマに求められる機能だというのだ。

新しい経験の例をあげよう。iXではワイドバンドの周波数を使う。それによって、キーを持ったドライバーの位置を車両が特定。3メートル以内に近づくとウェルカムライトを点灯。1.5メートルでは解錠。ドアを開けるとライトとメッセージで歓迎の意を評する機能も含まれているのだ。ドライバーと新しい関係を築く。これが新世代のBMW車のありかたにおいて、重要なキーワードだという。

MINIのコンセプトカーが示す自動車の未来

もうひとつのユニークなありかたが、MINIだ。デジタル化で変化するクルマのデザインとして注目に値するのが、2020年11月に発表された「Vision Urbanaut」。アーバン(都市)、航海士を意味する接尾語のノートを組み合わせた造語を車名にしている。

車名にあるnautは、ラテン語ゆらいの単語を組み合わせることで、astronaut(宇宙飛行士)やchrononaut(時間旅行者)などの言葉が作られている。航海士のように時空を旅するひと、という意味になるのだ。アーバノートも同様のコンセプトだろう。都市をめぐるもの、という意味が込められているはずだ。

「フューチャーフォーラム」3日目には、MINIのヘッドオブデザインを務めるオリバー・ハイルマー氏がオンラインで登場。BMWがカリフォルニアに持つデザインスタジオ「デザインワークス」(かつて「Z8」など担当)のプレジデントを務めたあと、2017年1月からMINIのデザインを統括するハイルマー氏は、才能を高く評価されるひとでもある。

「クリエイティブ・スペースコンセプト」とよばれる「アーバノート」は、「仕事とレジャー、建築物と自然界、デジタルとアナログといったものの間にある境界を取り払う」コンセプトと説明される。同時に、移動せず、止まっていてもそれはそれで別の機能を発揮することを念頭に開発された、ユニークなコンセプトが特徴的だ。

「自動車のニーズは高まり続ける」

2020年11月17日に発表されたアーバノートについては、すでに詳細をご存知のかたも多いかもしれない。ごく簡単に説明すると、クルマの新しい可能性をインテリアに注目して追究したコンセプトで、車内スペースの新しい使いかたを提案している。いまはまだ発売予定はたっていないものの、車輪のついたラウンジといった趣のデザインは、狙いどおり若い層の注目を集めているようだ。

「ドア開口部を大きくしたのは、車内に入ろうとしたひとを歓迎しているという印象をもってもらうためです。住宅と同じです。車内では外部のストレスから遮断された気分になれて、落ち着ける空間を作ります。それを私たちは『Chill』モーメントと名づけています」

チルとは、現代の若者言葉。ここでは、肩肘はる必要のない、ちょっとまったりした気分を意味しているようだ。アーバノートの車内にはソファのようなシートが配されていて、“ここいいね”という場所に駐車したら、そのあとはデジタル技術を利用して車内の照明を好みに合わせて調節し、音楽を聴いたり食事をしたりしながら友人たちと楽しい時間をすごせばいい、というのがハイムラー氏ひきいるデザインチームからのメッセージだ。

「若いスタッフは、コロナ禍のいまもそうだしおそらく将来もオフィスにしばられずに仕事をする機会が増えるでしょう。どこで仕事をするか、自分で選べる時代になりそうです。しかも飛行機に乗る機会は当分かなり限られ、そのかわり自動車のニーズは高まりつづけるのではないでしょうか。そこがこのデザインの原点にあります」

きっかけはMINI カントリーマン

ハイルマー氏のチームがアーバノートのコンセプトを思いついたきっかけは、オフィスで目にした韓国の雑誌だったという。「そこにルーフテントをつけたMINI カントリーマンで旅しているひとの取材記事が出ていたのを見て、これいいね、という話になったのです」とオンラインの画面で笑いながら教えてくれた。

ピュアEVで、自動運転技術も積極的に採り入れるというアーバノート。一方で、本革もクロームも使用はなし。外装では外板ペイントもより環境にやさしいものにするという。このクルマにはジョン クーパー ワークス仕様は設定されそうもない。

たしかにクーパーなど、小さくてもファン・トゥ・ドライブをしっかり持っていたのがオリジナルのミニの魅力でもある。一方、コンパクトなサイズながら質感も高く、デザイン性が高いという存在感そのものが革命的だったのも、オリジナルミニだ。アーバノートは、そのヘリティッジを引き継いだクルマになる、とはハイルマー氏の言葉だった。

REPORT/小川フミオ(Fumio OGAWA)

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みんなのコメント

1件
  • インテリアとインターフェイスの未来は百花繚乱。
    それをブチ壊しているエクステリアの豚鼻を、まずは何とかしてくれよ。

    BMWオーナーより。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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