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後半に急展開のGT300。0.093秒差で決着した道上vs小暮、81kgで表彰台をもぎ取ったGT-Rへの驚嘆etc.【第5戦SUGO決勝】

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後半に急展開のGT300。0.093秒差で決着した道上vs小暮、81kgで表彰台をもぎ取ったGT-Rへの驚嘆etc.【第5戦SUGO決勝】

 9月12日、宮城県のスポーツランドSUGOで83周に渡る熱闘が繰り広げられたスーパーGT第5戦『SUGO GT 300km RACE』。レース序盤こそ緊迫しながらも、それほど大きな波乱があったわけではない展開だったが、GT500クラス首位だったARTA NSX-GTにドライブスルーペナルティが出た後は、WedsSport ADVAN GR Supraの火災など、次々と波乱が起きた。

 GT300クラスでも、セーフティカー後からさまざまなアクシデントやそれに伴う順位変動があった。レース終盤に見られた、気になるシーンの裏側をお届けしよう。

【ポイントランキング】2021スーパーGT第5戦SUGO終了時点

■表彰台目前も、“鬼門”の2コーナーでまさかの事態。河野駿佑は誕生日を飾れず
 予選3番手からスタートしたSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTは、序盤吉本大樹はタイヤが苦しかったというが、4番手に順位を落としながらも、懸命のディフェンスで4番手をキープ。27周で早めのピットインを行い、河野駿佑に長いスティントを託すことになった。

 河野が履いたタイヤは好調で、セーフティカー後は3番手に浮上。第2戦富士を制しチャンピオンも視野に入れていただけに、ここで大きなポイントを持ち帰りたいところだった。しかし63周目の2コーナーで、前方でバトルを展開していた30号車TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTとarto RC F GT3のアクシデントを避けようと、アウト側のグラベルに出ざるを得なくなってしまう。これでポジションを落とし、最後は5位でフィニッシュすることになった。

「ラップダウンだった30号車と35号車のバトルに巻き込まれました。2台がヒットして30号車がスピンしたところで、ダートに避けざるを得ませんでした。映像を観ていないので分かりませんが、イン側に避けられたかどうかは分かりません。うしろにいた2号車(muta Racing Lotus MC)も僕と一緒に避けてきたので、ラインがあったかどうか……」と河野は悔しがった。

「順位争いしているバトルに巻き込まれるならまだしも、ラップダウンのバトルに巻き込まれたので……。悔しいというか、言葉が出ないです。まだ(グラベルに)埋まらなくて良かったですけどね。全日本F3でもよく専有走行でグラベルに埋まっていましたし、先日のスーパーフォーミュラ・ライツでも横転しましたし、あの場所は相性が良くないのかもしれません」

 河野の言葉にもあるとおり、全日本F3ではしばしば2コーナーでコースアウトを喫していた。また、6月20日に行われたスーパーフォーミュラ・ライツ第11戦でも、スタート直後に野中誠太と接触。横転するアクシデントに見舞われている。

「うしろから来ていた56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)のペースは聞いていなかったので、3位になれたかと思うと本当に悔しかったのですが、56号車のペースを聞いたら、おそらく3位にはなれなかったです。でも4位にはなれたと思うので……。2ポイント失ったのは悔しいです。でももう……。どうしていいのか分からないです」

「ただロングスティントでタイヤをもたせられたのは今後に向けても自信にはなったと思いますが」

 この日、河野は誕生日だった。自らのバースデーを表彰台で飾りたいところだったが、それは実現できないままサーキットを後にすることになった(RH)。

■81kgのサクセスウエイトも3位に。リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rに戻ってきた強さ
 後述するグッドスマイル 初音ミク AMGのバースト、そしてSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTのポジションダウンにより、3番手に浮上したのが藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラのリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rだ。オリベイラが力強い走りを見せそのまま3位でフィニッシュすると、11ポイントを獲得。最終的に第5戦を終えて首位となった井口卓人/山内英輝組に1ポイント差となるランキング2位につけた。

 81kgというサクセスウエイトを積みながら、オーソドックスな戦略で予選10番手からポジションを上げての表彰台獲得だけに、ライバルからは「あの速さはなんなのか」という声が多く聞かれた。2連覇を射程に捉える3位表彰台だけに、ライバルたちにとってはある意味“事件”でもあった。

「ここ2戦、僕たちはミスがあったりで完璧なレースができていなかったので、今回は自分たちの力をいかに出せるかが課題でした。それができて、昨年のような強さをみせられたと思っています。3位を持ち帰ることができたのは大きいです」とレース後語ったのは藤波。

「ランキング2位ですが1ポイント差なので、一騎討ちで戦って2連覇して、来年へのステップとして頑張っていきたいです。オリベイラ選手も速いので、自分もしっかりアピールしていきたいです。でも、チームがしっかり前にいけるということは良いことですし、継続してやっていきたいですね」

 ニッサンGT-RニスモGT3、ヨコハマ、そしてドライバーふたり、チームというパッケージがリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの強さの秘訣なのは間違いない。次戦オートポリスでは100kgのサクセスウエイトが積まれることになるが、ここでもポイントを獲ってくるようだと、本当に2連覇が見えてくるのかもしれない(RH)。

■Yogibo NSX GT3が今季初ポイント。道上龍がベテランの技をみせる
 今季、Yogiboのカラーリングをまとい新たな体制で戦っているYogibo NSX GT3。ここまではなかなか歯車が噛み合わず、一度もポイントが獲れていなかったが、第3戦鈴鹿の予選Q1のA組で道上龍が2番手につけるなどスピードを取り戻し、第5戦SUGOでも道上が予選Q1で2番手に。毎戦NSX GT3に慣れつつある密山祥吾も、予選Q2で12番手につけた。

 そんなYogibo NSX GT3、300kmのレースではいつも道上がスタートドライバーを務め、密山が後半を担当する作戦だったが、今回、芳賀美里監督がレース当日に「流れを変えてみたい」と密山をスタートドライバーに据えることを決断する。チームもこの意向に応え、戦略を練ってレースに臨んだ。

 密山は長丁場の第2戦富士以来のスタートだったが、混戦のなかで12番手をキープ。予選で使った柔らかめのタイヤでしっかりポジションを守り、29周まで走りピットイン。道上に交代する。後半スティントに用意したタイヤがハマり、道上は好ペースで戦っていった。

 Yogibo NSX GT3はStudie PLUS BMW、GAINER TANAX GT-Rに先行される展開となったが、Studie PLUS BMWをパス。フルコースイエロー明けに、GAINER TANAX GT-Rが加速が鈍ったのに乗じて8番手に浮上する。前を走るのは100kgのウエイトを積む、三宅淳詞駆るたかのこの湯 GR Supra GTだ。

 三宅が乗っていることには気づいていなかったという道上だったが、「いい動きしよるな」と好ブロックに遭いながらも、抜くポイントを冷静に見極めていた。たかのこの湯 GR Supra GTは中速コーナーが速く、なかなかオーバーテイクを仕掛けられずにいたが、4コーナーのブレーキングで差を詰められていることに気づく。

 68周目、4コーナーでズバリとインを差した道上は、三宅と接触しながらS字へ。「相手がアウト側の縁石に乗ったので、立ち上がりの加速で前に出ることができました。ホッとしました」と7番手へ浮上した。

「後半履いたタイヤとマシンバランスがすごく良かった」という道上は、最後まで好ペースをキープするが、フィニッシュ間際、前方に白いランボルギーニが見えてきた。無線で「あれ、同一ラップ?」と聞くが、なかなか返事がない。残りは2周で、このまま順位キープかと思ったが、ファイナルラップの馬の背で「抜いて下さい!」と無線が入った。

 その白いランボルギーニは、かつての僚友である小暮卓史がドライブするJLOC ランボルギーニ GT3。左側二輪交換で、「小暮はタイヤがブローしかけていて『こりゃ抜くやろ!』と最終コーナーでねじ込みました」とオーバーテイク。最後は6位でフィニッシュした。

「レース後、小暮のタイヤを見ましたがもうかなりダメージがあって。それでもSPコーナーなんかでもずっと流れていて、よくコントロールしているなと思いましたけどね。今回ポイントを獲れて嬉しいですし、良い流れにありますね」と道上はポイント獲得、そしてバトルを勝ち抜いたことに笑顔を浮かべた。

 このベテランらしい道上の奮戦と得点に、序盤の順位キープで密山も、そして作戦的中となった芳賀監督も大喜び。チームの浮上のきっかけにもなりそうだ(RH)。

■グッドスマイル 初音ミク AMG、3番手走行も無念のバースト
 前項で道上が言及しているランボルギーニ・小暮卓史の状況に代表されるように、SUGOではとくに左側のタイヤへの負担が大きく、それがレース後半に入ってさまざまな順位変動を引き起こした。

 土曜日の公式練習後、FCYテストのセッション中に左フロントのバーストに見舞われていたグッドスマイル 初音ミク AMGは、決勝でも同様に左フロントにタイヤトラブルが発生してしまった。

 7番手スタートから早めのピットインによるアンダーカットが成功、後半は3番手と表彰台圏内を走行中だった谷口信輝は「もちろん僕の周回数は長くなるので、タイヤが落ちてくることは避けられない。なのでいろいろと計算しながら、なんとか60号車(SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT)は抑えようと思っていました」という。ちなみに陣営は4輪交換を選択していた。

「おそらく、(バーストの兆しが出たのは)1コーナーのブレーキングですね。そこで空気が抜けて、シケイン抜けたらワーニング(ランプ)が点いて、ハイポイントではもう曲がらなかった」

 スロー走行でピットへと戻ったものの、当然ながらポイント圏外へと転落。23位でレースを終えることとなってしまった。

 また、100kgのサクセスウエイトを背負いながらもポイント圏内で奮闘していたたかのこの湯 GR Supra GTは、左側2輪交換を敢行。しかし、最後はウエイトも効いてか、やはりペースダウンに見舞われてしまう。

 8番手で最終ラップに突入していった三宅淳詞だったが、すでに限界の状態を迎えており、背後のK-tunes RC F GT3と接触の末、順位を明け渡してしまった。

 これらレース後半に生じた数々のドラマの結果、SUGO戦終了時点のポイントランキングは、なかなかの接戦となっている。

 ランキングトップでSUGOに乗り込んだたかのこの湯 GR Supra GTも2ポイント獲得でトップから3ポイント差のランキング3位。無念の結果に終わった4号車グッドスマイル 初音ミク AMG(ランキング11位)までも、20ポイント差“しか”ないと言っていいだろう。表彰台に登壇したリアライズ日産自動車大学校 GT-Rの強さは脅威ではあるが、残り3戦も緊張感のあるタイトル争いが展開されることを期待したい(as-web)。

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