5月22日(土)にスタートした2021年スーパー耐久第3戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』は、例年以上の注目を集めている。世界で初めて、水素エンジンを搭載したマシンがレースを走るからだ。
『ORC ROOKIE Corolla H2 concept』と名付けられたそのマシンは、トヨタ・カローラスポーツをベースとしたもので、トヨタ自動車の豊田章男社長がチームオーナーを務めるROOKIE Racingがこれを走らせる。
■F1&フォーミュラEは、ゼロエミッション化に大きく貢献。トッドFIA会長、水素の可能性についても言及
世界中で“カーボンニュートラル”(二酸化炭素の吸収量と排出量をプラスマイナスゼロにすること)が叫ばれている中、モータースポーツ界でも電動化を中心に、持続可能性を追求する動きが活発となってきている。そんな中で、トヨタが“新たな選択肢”としてモータースポーツ界に持ち込んできたのが、この水素エンジン。水素を使って発電し、モーターを回す燃料電池車とは違い、気体の水素をそのまま燃料とする水素エンジンは、既存の量産車用エンジンからインジェクター等を取り替えるだけで済むため、これまでの技術の多くを流用することができる。
自らも“MORIZO(モリゾウ)”の名で富士24時間にエントリーし、水素エンジン車をドライブする豊田社長は、レース前の記者会見の中で参戦意義について次のように語っていた。
「あくまでゴールはカーボンニュートラルです」
「この言葉が発表されて以降、自工会(日本自動車工業会)会長の私の方から(政府に)、順番を間違えないでほしい、カーボンニュートラルの選択肢を増やして欲しいと依頼してきました。というのも、全ての車がBEV(バッテリー電気自動車)となったら、日本では100万人の雇用が失われるからです。そんな中、ここモータースポーツの場で、その選択肢のひとつを実証実験できる機会が訪れたと思っています」
「カーボンニュートラルにもこういう選択肢があるよ、ということを世界中に伝えていただきたいです」
水素エンジン車がカーボンニュートラルへ向けた新たな選択肢として提示されている理由は、技術や雇用の面以外にもある。水素エンジン車からはガソリン車に近い迫力のあるエンジン音、排気音を聞くことができる。これもEV車と大きく違う点だ。
今回ROOKIE Racingの一員としてカローラスポーツを走らせる小林可夢偉はこれまで、ガソリン車、ハイブリッド車、EV車の全てでレースを戦った経験を持つ。そんな小林は2017年にフォーミュラEに参戦した際、走行時も観客などの声が聞こえたことにショックを受けたという。だからこそ、迫力のある音を感じられる水素エンジン車には“未来”があると感じているようだ。
「電気自動車の一番の問題は、音がないことです」と小林。
「でもこのクルマは音がある。これはすごく未来があるなと思いました。素直に『これは絶対にモータースポーツで使って欲しい』と思いました」
また、日本国内のレースで様々な実績を残してきた石浦宏明も、このマシンを駆るドライバーのひとり。石浦は会見の中でレースへの意気込みについて、ファンに“希望”を見せるためにまずは自分が楽しんで走ることを第一に考えたいと語った。
「カーボンニュートラルに向けて、良いエンジン音の車がなくなっちゃうんじゃないかと心配しているクルマ好きの方もいるかと思います」
そう石浦は話す。
「そういった人たちに向けて、自分たちが良い音をさせてコーナーを攻めていく様を見せることが希望になると、クルマ好きのひとりとして思っています。だからまずはお客さんたちに良い音を聞いてもらいながら、自分たちが楽しんでレースをするところを第一にしたいなと思います」
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みんなのコメント
雇用問題もナンで電気自動車に移行する方向で確保する事考えねんだろな?
内燃が無くなるのは分かってるのに雇用問題出して正当性訴えてるけどおかしくね?
最終走者はモリゾウw
世界初の水素エンジン搭載車でのレースを社長でフィニッシュするとかトヨタ凄いわ。
内燃機関の可能性を潰さない、EV以外の選択肢の可能性を残す取り組み、コレらを否定する輩の気持ちが分からない。