初代の成功を伸ばすモデルチェンジ
革新的なバッテリーEV(BEV)のEV6で勢いづいている、韓国のキア。今回試乗した新型ニロは、英国では中型SUVのスポーテージに次ぐ売上げナンバー2の人気モデルに当たる。同社にとっては、EV6へ並ぶ重要なモデルに違いない。
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初代ニロは多くのライバルを凌駕する実力を備え、小型クロスオーバー市場で確かな人気を獲得した。手頃な価格のハイブリッドに加えて、不満ない航続距離を持つBEVもラインナップし、時流を見事に掴んでいた。
同一プラットフォームで内燃エンジン版とBEV版の両方を構築しようとすると、それぞれの特性や形状が異なるため、妥協を迫られる可能性がある。しかし初代ニロはハイブリッド版もBEV版も、訴求力のある内容に仕上がっていた。
ライバルも黙ってはおらず、トヨタはCH-R、ホンダはHR-V、ルノーはアルカナのハイブリッドで、同じ市場でのプレゼンス拡大を目指している。ライバル勢によるBEVの登場は少し先のようだが、攻防は穏やかではない。
そんななかで、2代目へモデルチェンジしたニロは、これまでの成功を伸ばす方策を選んだようだ。プラットフォームは第2世代のK3と呼ばれる新開発のものだが、そこに構築された内容は初代とほぼ同じレシピといっていい。
SUVらしい雰囲気のスタイリング
ハイブリッド版は、1.6L 4気筒ガソリンターボ・エンジンと6速デュアルクラッチATという組み合わせ。駆動用モーターは通常のハイブリッドで43ps、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)では84psのパワーがある。
駆動用バッテリーは前者が1.32kWh。後者のPHEVには、11.1kWhの容量のものが搭載される。メカニズムの構成は、基本的に初代のキャリーオーバーとなる。
ニロEVと呼ばれるBEV版でも、駆動用バッテリーの容量は64.8kWhで従来と変わらない。航続距離は約465kmと不足ない。英国市場では、BEV版がニロの販売台数の5割を占めている。
今回試乗したのは、英国では4割の支持率を持つ通常のハイブリッド。ニロでは、PHEVが占める割合は小さい。
2代目で大きく変化したのはスタイリングだろう。初代はクロスオーバーというより膨らんだハッチバック的だったが、ずっとSUVらしい雰囲気を得ている。特にフロントマスクはアグレッシブで、ロボットの顔のようにも見える。EV6へ通じる処理だ。
フロントグリルは、エアインテークとしての機能は殆ど持っていない。クルマの顔や装飾的な要素が強い。
ボディサイズは全長が65mm、全幅が20mm大きくなり、バランスの良いプロポーションに結びついている。一方で車重増は防いでおり、優れたプラットフォームのおかげでBEV版では70kgも軽量化させたという。
飛躍したインテリア 大きな荷室容量
今回のモデルチェンジでインテリアも飛躍した。2面のモニターがダッシュボード上で存在感を示し、全体的な面構成もシャープ。ツインスポーク・ステアリングホイールは、EV6との結びつきを感じる特徴となっている。
サイズの拡大で、車内空間にもゆとりが生まれている。リアシートは大人にも不満のない広さがあり、荷室は451Lと使える容量がある。ハイブリッド用バッテリーが空間を侵食しているが、C-HRやHR-Vよりも大きい。
内装のデザインは美しいと筆者は思う。EV6ではプラスティック製パネルが多すぎる印象だが、手頃な価格のニロの場合は雰囲気に合っている。
新しいテクスチャーも採用しており、特に石目調のパネルは新鮮。ブラック一辺倒ではない配色も良い。トップグレードを選択すると、真鍮のようなトリムも施される。
シートや天井の内張りには、リサイクル素材が用いられている。レザーはオプションでも用意されないそうだ。
大きなモニターを獲得した一方で、実際に押せるハードボタンが残されているのは好印象。エアコンとインフォテインメントで共有するショートカットキーは、利便性に優れるとまではいえないものの、より悪い他社の例もゼロではない。
フロントシートは座り心地が良く、適度に身体をサポートしてくれる。座面は高めでSUVライク。高身長のドライバーは、ステアリングホイールの調整域が足りなく感じるかもしれない。
インフォテインメント・システムはキアのオリジナル。操作性は良好で、有線でスマートフォンとのミラーリングに対応する。
この続きは後編にて。
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