3連戦の初戦となるF1第8戦フランスGPはルイス・ハミルトンが完勝。未知のコースでメルセデスが強みを見せた。F1ジャーナリストの今宮純氏がフランスGPを振り返り、その深層に迫る──。
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完走必須なレースでやるべきことを成し遂げたガスリー【今宮純のF1カナダGP採点】
10年ぶりに復活したフランスGP、開催地であるポール・リカールでは実に28年ぶりのF1レースだ。この未知なる初コースでまたメルセデスチームが強みを見せつけた。
16年バクーのヨーロッパGPはニコ・ロズベルグが優勝、15年メキシコGPもそう。14年ロシアGPはルイス・ハミルトン、オーストリアGPはロズベルグ。さらに12年オースティンのアメリカGPもハミルトンが勝利を飾った。
初舞台に強いメルセデス連勝記録が、はっきり証明されるチーム総合力だ。
1:新サーキットの情報収集、調査研究をもとに精密なコースマップを独自に作成。
2:ドライバー・イン・ループ(DIL)というシミュレーターで、テスト担当ドライバーやレギュラーが走りこむ。
3:同時にセッティングシミュレーションをエンジニア・グループがスーパーコンピュータを駆使し、何パターンも研究。
新ポール・リカールは5.842KM、ミストラル・ストレートにシケインが使われる“1C-V2”レイアウト。5月30~31日に次期ピレリ・ウェットタイヤの開発テストをメルセデスが担当、同じレイアウトではないものの直近に走っており、これは小さくはないアドバンテージだ。
再舗装されたスムーズな路面にもバンプが存在すること。部分的に舗装が剥がれた箇所があり、“バンドエイド”で補修したように砂と樹脂で固めてあること。したがってライン取りはその部分を意識し、フリー走行でドライバー自身がチェックする必要があること。
3本あるストレートが特徴的だが低速の3~7コーナー・セクションと、中高速の10~14コーナーを重視する“攻略アプローチ”を彼らはとった。
周到な準備を整え、フランスGPからアップデートされた“フェイズ2.1”のパワーユニット投入を決定。一言で言えば、シャシーとドライバー、パワーユニットも『三位一体』で南仏プロバンスに乗り込んだのだ。
金曜のフリー走行1回目が始まると最初のフライングラップにバルテリ・ボッタスが入っていった。今年メルセデスはいきなりそうする。路面がダーティだろうと事前シミュレーションの成否を早く確認するために。
そしてFP1は1-2発進、ハミルトンとボッタスのタイム差はわずか0.140秒で、イニシャル・セットが的中。こうなると勢いに乗るハミルトン、モナコとカナダはスランプ気味だったのに笑顔が戻った。FP2もトップ、圧勝したスペインGPパターンが蘇りつつあった。
青空のポール・リカール、90年まではバカンス・シーズン到来の7月第2週開催で、ウェット・セッションは僕の記憶にもない。今年は半月早まり6月第4週の日程、年間降雨量の少ない地だがFP3開始早々に雨が。
前日のトラブル確認もありボッタスは降り出す前にトップタイムを、ハミルトンは自信があるようで3ラップ流しただけで12番手。ここまでフリー走行をすべて1位で終え、スペインGPの圧勝パターンに乗ったメルセデスであった。
金曜から気になったのはピット入り口の右カーブ、出口のコース合流ラインと、他よりもここだけが狭い屈曲した1~2コーナーだ。85年までのオリジナル・レイアウトとは違うのだ。
スタートにハイリスクを直感した(89年レイトンハウスのマウリシオ・グージェルミン他6台事故)。すばらしい加速のセバスチャン・ベッテルがメルセデス勢に割り込もうと“シュート”、だがスペースはなくボッタスをヒット。
後続は乱れたまま広いエスケープに逃げたので89年のような事態にはならなくて済んだ。しかし3コーナーでフランス勢のピエール・ガスリーとエステバン・オコンが接触、三つのコーナーまででゲームの趨勢は決まったようなものだ。
ライバルの脱落でフリーに独走したハミルトン、2位フェルスタッペンは“マイペース”、3位ライコネンは6番手からだったので混乱を逃れて表彰台への道を。レース後にベッテルのラフプレーに5秒ペナルティは軽すぎる、と言う批判があった。
そうかもしれない。でもこの5位によって彼はランキングを1点リード首位から14点ビハインドの2位に下がった。それが大きなペナルティとなるかもしれない。3連戦の最初を勝ちとりメンタル高まるハミルトン、狙うかハットトリック……。
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