現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ミュルザンヌを290km/hで疾走 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2) 1973年ル・マンで総合4位

ここから本文です

ミュルザンヌを290km/hで疾走 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2) 1973年ル・マンで総合4位

掲載
ミュルザンヌを290km/hで疾走 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2) 1973年ル・マンで総合4位

1973年のデイトナ24時間レースでR4が優勝

ポルシェ911 カレラRSRは、見事な戦いを披露した。1972年のフランスで開催されたツール・ド・コルス・ラリーへ試験的に参戦したが、正式なデビュー戦は1973年2月のアメリカ・デイトナ24時間レース。世界スポーツカー選手権の第1戦を兼ねていた。

【画像】グループ5プロトに続く総合4位 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7 917Kと最新911 GT3 RSも 全116枚

ワークスチームからはRSR R3とR4がエントリーし、ピーター・グレッグ氏とハーレー・ヘイウッド氏のペアによるR4が優勝。2位のフェラーリ365 GTB/4Cへ、22周の差をつけてのゴールだった。以降、そのシーズンでは上位へランクインし続けた。

マルティーニ・カラーのRSRが姿を表したのは、1973年のイタリア・ヴァレルンガ6時間レース。1-2フィニッシュを成し遂げている。

3.0Lのタイプ911/74ユニットを積んだRSRは、イタリア・モンツァ1000kmレースから投入。R6とR8がグループ5で戦うが、リタイアに終わった。

遅れて完成したRSR R7が結果を残したのは、ドイツ・ニュルブルクリンク1000kmレース。グループ5仕様に仕立てられ、チタン製ハブとフロント11J、リア14Jのセンターロック・ホイールで武装し、予選15位、本戦7位の成績を残している。

この時点で、ワークスチームのRSRには更なるアップデートが施されていた。サスペンションのベアリングやトランスミッション、ダンパーは専用品となり、リアのトレーリングアームも強化品が組まれた。

サスペンションのスプリングは、軽量なチタン製。ファイアウォールには、ダブルスキンのリアクロスメンバーが溶接され、ボディも強化されていた。

F1から派生したプロトタイプに次ぐ4位

そして1973年で最大の注目レースとなったのが、ル・マン24時間レース。先述の通り、プロトタイプ・クラスで挑み総合4位という結果を勝ち取った。

RSR R7のドライバーは、ヘルベルト・ミューラー氏とジィズ・ヴァン・レネップ氏のペア。ほかにワークスチームからはR2とR6が参戦。グループ4クラスでは、2台のプライベートチームがタイプ911/72ユニット版のRSRで挑んだ。

予選で18位に入ったR7は、本戦の3時間後には7位へジャンプアップ。翌朝9時に総合4位へ躍り出ると、そのまま7時間後のチェッカーフラッグまで順位を維持。素晴らしい結果を残したといっていい。

RSR R7を破ったのは、車重が250kgも軽いF1マシンから派生したプロトタイプ。マトラ・シムカMS670Bが優勝と3位、フェラーリ312 PBが2位を掴んだ。

その後、RSR R7はオーストリア・ツェルトベク1000kmレースへ参戦。続いてアメリカへ渡り、ワトキンスグレン6時間レースでは7位に入賞している。カンナム・レースは9位で終えた。

ワークスマシンとして役目を終えたRSR R7は、メキシコ出身のレーシングドライバー、ヘクトール・レバーク氏が購入。いくつかのレースを戦った後、イタリア人カーコレクターのマッシモ・バリバ氏が買い取り、ガレージで眠りにつかせた。

この間、RSR R7は表に出ることが殆なく、破壊されたという噂が流布。精巧なレプリカが作られるに至った。ちなみにこのレプリカは、オリジナルをバリバが手放した際、本物かどうかを巡って裁判になっている。

トップクラスにハンサムなボディ

もちろん、今回ご紹介するRSR R7は本物。1973年のワークスチーム・マネージャー、ノルベルト・ジンガー氏によって認証を受けたクルマだ。

狭くびしょ濡れのヒルクライムコースで、RSR R7を運転している状況をノルベルトが知ったら、恐らく疑問を抱くに違いない。爆音のエグゾーストノートがノイズ計の針を振り切ってしまい、グッドウッド・サーキットの走行が許されないのだ。

幸いにも、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、ノイズ制限がない。しかし、イベントのサービス車両がコース上に土を残し、カットスリックにしか見えないタイヤでは自信を抱きようがない。

斜め後方からの容姿は、これまでル・マン24時間レースで結果を残したマシンの中でも、トップクラスにハンサム。そして、驚くほど小さい。マルティーニ・カラーのストライプが視覚刺激を増している。

ボンネットには、燃料のフィラーキャップが2つ。片方は給油用で、もう一方は空気抜きの役割を果たす。小さなクリップが、前後のガラスを押さえつける。高速走行時に、気圧で外れるのを防ぐためだ。

大きな46のゼッケンの隣に、小さなライトがついている。夜間でも番号を確認できるように。リアウイングは圧倒されるほど大きい。ダウンフォースで、超高速域を安定させるに違いない。

冷静にモノを考えられないほどやかましい

バケットシートへ腰を下ろし、細いレザー・ストラップを引いてドアを閉める。前方の眺めは、量産版の911と遠からず。センタートンネルには、ル・マン24時間を戦ったジィズ・ヴァン・レネップ氏のサインが記されている。2023年に一筆願ったそうだ。

フロアはスチールがむき出しで、ロールケージがボルトで固定されている。しっかりレーシングカーだ。正面にはVDO社製のメーターが4枚。タコメーターは7000rpmからレッドラインで、スピードメーターは300km/hまで振られている。

モモ社の3スポーク・ステアリングホイールが、まっすぐ突き出ている。これもオリジナル品だという。

クルマの管理者がキーを見失ってしまい、とりあえずマイナスドライバーを刺してシリンダーをひねる。即座にエンジンが爆発し始め、アイドリングは2000rpmと高い。フルフェイスのヘルメットを被っていても、冷静にモノを考えられないほどやかましい。

とはいえ、ポルシェのレーシングユニットの音響を、嫌いなカーマニアはいないだろう。ストロークの長いクラッチペダルを踏み、回転数を保ちながら1速へ入れる。3000rpm以下で一気にアクセルペダルを倒すと、バランスが狂いボディが跳ねてしまう。

冷静さを保ちつつ、右足を加減する。低速域ではワンダリングが激しい。コース上の水たまりのせいなのか、トラクションの問題なのか、特有のステアリングラックの曖昧さなのか、原因を掴みにくい。恐らく、それぞれ影響し合っているはず。

ミュルザンヌを290km/hで疾走した当時の片鱗

速度域を高めると、RSR R7は一気に正確性が増す。ステアリングホイールの手応えが明確になり、路面が濡れていても安定性が見違え、安心感も徐々に高まる。

短いストレートで、フルスロットルを試みる。滑らかなフラット6は爽快に吹け上がり、7000rpmのレッドラインを突破しようとする。タコメーターの注意は怠れない。

5速マニュアルのシフトレバーは、ストロークが長い。ギア比が高く、今回の条件では3速へシフトアップするのがやっとだった。

それでも、ミュルザンヌ・ストレートを290km/hで疾走した当時の片鱗を、垣間見ることはできたと思う。半世紀前に、プロトタイプレーサーを追い回した様相を。

協力:ボナムズ・オークション社

ポルシェ911 カレラRSR 「R」(1973年式)のスペック

価格:5万9000マルク(RSR/新車時)/500万ポンド(約9億500万円)以上(R7/現在)
生産台数:8台
全長:4128mm
全幅:1651mm
全高:1321mm
最高速度:288km/h
0-97km/h加速:5.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:839kg
パワートレイン:水平対向6気筒2993cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:334ps/8000rpm
最大トルク:32.0kg-m/6500rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

こんな記事も読まれています

フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第10回】フェラーリへの愛
フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第10回】フェラーリへの愛
AUTOCAR JAPAN
脱「コの字」型ヘッドライト採用! [新型フォレスター]は新世代スバルSUVの旗手となるのか?
脱「コの字」型ヘッドライト採用! [新型フォレスター]は新世代スバルSUVの旗手となるのか?
ベストカーWeb
FIAがスーパーライセンス規則を変更、17歳でF1参戦が可能に。注目されるアントネッリのF1プランへの影響
FIAがスーパーライセンス規則を変更、17歳でF1参戦が可能に。注目されるアントネッリのF1プランへの影響
AUTOSPORT web
フェラーリの「ル・マン24時間」総合優勝はなんと10回! 跳ね馬の58年前の栄光の戦績を振り返りながら、2年連続優勝を祈りましょう
フェラーリの「ル・マン24時間」総合優勝はなんと10回! 跳ね馬の58年前の栄光の戦績を振り返りながら、2年連続優勝を祈りましょう
Auto Messe Web
「B+COM TALKワイヤーマイクペアユニット」はこれからインカムを始めるふたりにピッタリ!セットでお得に高性能をゲット!  
「B+COM TALKワイヤーマイクペアユニット」はこれからインカムを始めるふたりにピッタリ!セットでお得に高性能をゲット!  
モーサイ
【写真蔵】一部改良されたジープ ラングラーには、エントリーグレードの「スポーツ」も登場
【写真蔵】一部改良されたジープ ラングラーには、エントリーグレードの「スポーツ」も登場
Webモーターマガジン
【20世紀名車ギャラリー】ゆったりとしたツーリングが似合う英国オープン、1955年式トライアンフTR2の肖像
【20世紀名車ギャラリー】ゆったりとしたツーリングが似合う英国オープン、1955年式トライアンフTR2の肖像
カー・アンド・ドライバー
洗車のオプション「下回り洗浄」は選択するべきですか? クルマの「底面」は見えないのに、なぜ洗浄する必要があるのでしょうか?
洗車のオプション「下回り洗浄」は選択するべきですか? クルマの「底面」は見えないのに、なぜ洗浄する必要があるのでしょうか?
くるまのニュース
【リコール】レクサス、トヨタ スバル25車種23万台超リコール
【リコール】レクサス、トヨタ スバル25車種23万台超リコール
Auto Prove
光明は高速グラベルラリーにあり。不運が続くトヨタのエバンス「早い段階で自信を取り戻すことが重要」
光明は高速グラベルラリーにあり。不運が続くトヨタのエバンス「早い段階で自信を取り戻すことが重要」
AUTOSPORT web
トヨタ8号車が総合トップ! 雨が強まりSCでレース折り返し|ル・マン24時間:12時間経過
トヨタ8号車が総合トップ! 雨が強まりSCでレース折り返し|ル・マン24時間:12時間経過
motorsport.com 日本版
【クルマら部】クルマ愛クイズ!三菱が誇るスペシャリティクーペ『FTO』から全4問!
【クルマら部】クルマ愛クイズ!三菱が誇るスペシャリティクーペ『FTO』から全4問!
レスポンス
木村武史、レクサスで挑む6回目のル・マン24時間に自信あり「ひさびさに手ごたえがありますよ」
木村武史、レクサスで挑む6回目のル・マン24時間に自信あり「ひさびさに手ごたえがありますよ」
AUTOSPORT web
アルファロメオ『ジュニア』が「ミッレミリア」に出走…イタリアのヒストリックカーレース
アルファロメオ『ジュニア』が「ミッレミリア」に出走…イタリアのヒストリックカーレース
レスポンス
BMW Motorrad「R 12」はフラットツイン入門に最適!! クルーザースタイルで抜群の親しみやすさを実現
BMW Motorrad「R 12」はフラットツイン入門に最適!! クルーザースタイルで抜群の親しみやすさを実現
バイクのニュース
三菱の「ランエボ“SUV”」!? 高性能4WD搭載の「スポーティモデル」! 斬新ドアも超カッコイイ「e-EVOLUTION C」とは
三菱の「ランエボ“SUV”」!? 高性能4WD搭載の「スポーティモデル」! 斬新ドアも超カッコイイ「e-EVOLUTION C」とは
くるまのニュース
レッドブルF1代表がメルセデスの皮肉に反撃「我々はダウングレードで彼らのアップグレードに勝った」
レッドブルF1代表がメルセデスの皮肉に反撃「我々はダウングレードで彼らのアップグレードに勝った」
AUTOSPORT web
超低い車高がカッコいいのよ!! V12が最高に気持ちいい! スーパーカーブームの火付け役[フェラーリ512BB]
超低い車高がカッコいいのよ!! V12が最高に気持ちいい! スーパーカーブームの火付け役[フェラーリ512BB]
ベストカーWeb

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.02615.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

220.013900.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.02615.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

220.013900.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村