高圧ピストンの1.4L NAで111ps
執筆:Colin Goodwin(コリン・グッドウィン)
<span>【画像】アルファ・ティーポ159風 ジョン・ナッシュ・スペシャル 往年のマシンも 全64枚</span>
撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ルノー5 ゴルディーニ・ターボのドライブトレインを利用した、ジョン・ナッシュ自作のスペシャル・モデル「JNS」。前編を読んで、想像した内容と違っていた、と感じた読者もいるかも知れない。
確かに前輪駆動のグランプリ・マシンは、これまで存在していない。しかしアメリカへ目を向ければ、第二次大戦の前後で複数のFFマシンがインディ500で優勝していた過去がある。
ナッシュは、ターボチャージャーの処理に手を焼いたという。ルノー5の場合はエンジンのフロント側にターボが載っているが、彼はラジエーターの位置を下げ、低く細い葉巻型のボディラインを実現したいと考えていた。ターボが邪魔だったのだ。
ナッシュが説明する。「ターボを残すことは、沢山のトラブルを増やすだけ、という結論に達したんです。そこでターボは諦めて、減少するパワーを取り戻すために、高圧のピンストンを組んでいます」
ルノー5 ターボのエンジンからターボが外されたものの、チューニングされた鋳鉄製ブロックにOHVのアルミヘッドを備える1397cc 4気筒エンジンは、111psを発揮するという。悪くない数字だ。
5750ポンド(89万円)という費用で、1台限りの素晴らしいスペシャル・モデルを仕上げたナッシュ。その秘訣はほぼすべての作業を自ら行うことと、部品調達を広い視野で進めることにあったようだ。
FRPのボディは型から自作
「重要な溶接部分だけは、専門家に依頼しています。リアのトレーリングアームなど。これはシトロエン2CV用の部品を流用しているのですが、リアタイヤの位置を合わせるために、短く加工する必要がありました」
「グラスファイバー製のボディは、型から自分で製作しています。でも、仕上げの塗装は職人さんへお願いしました」
技術的なバックグラウンドだけでなく、ナッシュはデザイン的な技術も高いことが、JNSを観察すると見えてくる。「エンジニアとして実習を受けていた時期もありました。ですが、その後は電力会社で説明用のテクニカル・ドローイングを描いていました」
「退職前には英国ダンジネス発電所で、操作マニュアルのイラストも手掛けています」。その経歴を示すように、ガレージの壁にはナッシュが描いたJNSの美しい透視図が掛けられている。見事なアートワークだ。
丸いボンネット上部にある2本のバルジは、キャブレターとロッカーカバーを避けるため。細部までこだわった仕事を示す、ディティールの1つだろう。
バルジの大きさは左右で異なるそうだが、模造のリベットヘッドを追加することで、対称で美しく見えるように工夫してある。このあたりも、彼のデザイン的な審美眼があってこそだと思う。
ヴォグゾールやトライアンフの部品を流用
高価なスーパーカーを運転することは、筆者のような仕事をしていれば、さほど難しくは感じない。モーターショーに展示されるような1台限りのコンセプトカーには、数百万ポンド(数億円)の製作費用が掛かっているから、流石に気を使う。
でも大手の自動車メーカーの場合、われわれへ貸し出す場合はしっかり保険を掛けている。でも、JNSは違う。今まで以上に注意を払って運転しなければならない。
今回の取材のために、3万ポンド(465万円)の損害保険に入った。でも、お金で済む話ではない。ナッシュはこれまでに、7000時間という膨大な手間を費やしている。慎重にJNSを運転しなければ。
コクピットに座ったら、周囲を観察する価値がある。幅の広いドライビングシートは、ヴォグゾール・ビバに載っていたものだという。白い文字盤が美しい大きなメーター類は、トライアンフ・ドロマイト用。10ポンド(1600円)だったらしい。
文字盤はレトロフィットさせるため、転写シートを使ってナッシュが自作した。足もとには、アルミのフロア材が敷かれている。ペダルはトライアンフ・スピットファイアのもの。すべて安価に手に入れられるものだが、安っぽくは見えない。
ターボが外されたゴルディーニ・エンジンは、ウエーバーのシングルキャブではなく、DCOEツインキャブに変更されている。それを保護するエアクリーナーは、スポンジとワイヤーでの自作。高価な社外品を、購入する気が失せそうだ。
ホームビルドとして驚くほど高い運動性能
自然吸気4気筒エンジンのサウンドは素晴らしい。ボリュームは大きすぎず、吸気音と排気音がバランスしている。
見事なエンスージァストの作品に、批判するような点はない。ブレーキペダルのストロークが少々多すぎ、サーボなしでも充分効きそうな気はする。シフトレバーの角度は、少し扱いにくい。とはいえ、その程度でしかない。
ナッシュとしては、シフトのリンクを改良しようと考えたらしい。現状では、できうる限りの状態だという。
JNSの運動性能は、ホームビルドのスペシャル・モデルとして考えれば、驚かされるほど高い。しかも、自身で設計やデザインまで行っているのだ。ステアリングはダイレクトで、気持ち良く軽快。100馬力程度のエンジンだから、トルクステアもない。
何より、乗り心地に感心させられる。インボード・レイアウトのコイル・サスペンションがリアに組まれ、路面への追従性に優れ快適。加えてJNSの車重は約580kgしかないから、とても活発に走る。
穏やかに長距離走行もこなせる、ツーリングマシンでもあるようだ。ここから約550km離れたフランスのル・マンまで、JNSで問題なく往復したこともあるという。
ナッシュがガレージの扉を開くと、卵型のフロントグリルが切られた、真っ赤なボディが姿を表す。その度に、彼は自らに誇りを感じているのではないだろうか。
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