英国が目的地のクルマ旅をモデルAで
1962年のある日、筆者と妻のヤンは旅立つために仕事を辞めた。妻は幼稚園の保育士で、自分は建築士だった。
【画像】1928年式フォード・モデルAでの旅の様子 同年式のアミルカーC6も 全44枚
2人が出会った時、ヤンは英国行きのフライト・チケットを予約していた。だが、彼女の計画は変更され、ほどなくして婚約することになった。
ヤンと出会う前、筆者は積極的に旅をしていた。6か月間も日本へ滞在したこともあった。そんな経験もあって、結婚は世界旅行を諦めるものではなく、実行へ移すきっかけになった。何人かの友人と同様に。
1960年代、オーストラリアの大学で貿易や経済を学んだような若者は、冒険へ挑むことが珍しくなかった。当然のように、自分も結婚式の直後にヤンと2人での大きな旅の計画を立てた。
ところが、その頃は飛行機での移動に大きな予算が必要だった。インドなどのアジア圏をバスで巡るような、かなり質素な旅程でも。
飛行機や船に乗れば、移動中にテントを張って寝る場所を準備する必要もない。温かい料理も出てくる。それでも、自動車が最も適した手段に考えられた。英国を目的地にした、クルマ旅へ計画が絞られていった。
旅の相棒に選んだのは、当時でも製造から30年以上が経過していた、1928年式のフォード・モデルA。生産開始は1927年だ。
とはいえ、1931年までの間に500万台以上が売れている。それだけの支持を集めるのだから、優れた信頼性と能力を備えていることは、疑いようがなかった。
沢山の荷物で1067kgのクルマは1950kgに
結婚した頃、筆者はオーストラリアの南東、メルボルンに住んでいた。冒険好きの友人に相談したところ、筆者の考えは非現実的なものではないとわかった。簡単ではないが、不可能ではないようだった。
見通しが付けば充分。若く健康な2人には、情熱があった。両親は半信半疑だったが、実行へ移すことにした。
お互いの友人で、筆者の建築仲間、ジョン・ダルトンも英国へ戻りたいと考えていた。そこで彼のテントも積んで、片道約2万kmに及ぶクルマ旅がスタートした。
モデルAは、簡単なレストアを済ませてあった。メルボルンのあるヴィクトリア州を走っている限りは好調で、不具合の予兆などは匂わせもしなかった。
出発は1962年11月末。筆者の兄と両親は、その日の昼食まで一緒に着いてきた。ヤンの妹のスーのほか、友人数名も早朝の門出に集まった。これっきり、再開できないかもしれないと想像した人もいたようだ。
オーストラリア大陸を南岸沿いに西へ走り、750kmほど進んだアデレードで祖父母と叔母に挨拶した。筆者たちが選んだクルマへは、一様に驚いていた。
アデレードを離れると、穀物輸送用トラックの計量台に遭遇した。モデルAの重さも図られたが、なんと重量は1950kgもあった。
荷物を降ろした車重は1067kg。オーバーヒートやタイヤのバーストなど、重さが問題の原因になることは明らかだった。450x12インチというサイズのスペアタイヤを、可能な限り買うことにした。
ほかのクルマと比べれば正解だった選択
さらに西へ2700km走り、オーストラリア大陸の南西、パースに到着。そこでタイヤ4本を調達した。先回りしていた両親とも落ち合った。結果的に、そのタイヤだけでロンドンまで辿り着くことができたのだった。
振り返ってみると、モデルAはタフだった。シンプルで堅牢な、3.3L 4気筒エンジンを搭載する量産のフォードという選択は、正解だったらしい。
フォルクスワーゲン・タイプIIやランドローバーなど、一般的に丈夫だと考えられているクルマとも旅の途中で出会った。しかし、サスペンションやクラッチの不具合に悩まされていた。大抵は、荷物の積み過ぎが原因だったようだ。
ハッチバックのサンビーム・タルボや、ミニのサルーン版、モーリス1100とも遭遇した。小さなバスをキャンピングカーへ改造し、オーストラリアを目指している家族にも会った。だが、彼らも順調とはいえない様子だった。
メルボルンを旅立つ時、基本的なキャンプ道具をモデルAに積んでいた。防水性が完璧ではないテントに羽毛入りの寝袋、25mmの厚さのマットレス、簡単な料理道具など。便利な圧力鍋も含まれていた。
就寝用の装備は軽く、走行時はルーフラックに載せていた。モデルAの両サイドには、ランニングボードと呼ばれるステップがある。そこには、約16L入る水タンクを2本括り付けていた。
1本は飲料水。こちらは、必ずしも満たされているわけではなかった。もう1本は、食器洗いなどの雑用水。ちょっと怪しい水質のものだ。
スパイスが香る貨物船でインドへ
オーストラリア南部のナラボー平原を越え、パースまでの行程は10日間。アデレードで親戚の家へ2泊したが、それ以外はキャンプで夜を明かした。結果的には、そこが最も過酷な道路だった。約1800kmは砂利道。路面は平滑ではなく、大きな穴が空いていた。
硬い岩が露出し、隙間を細かい砂が満たす。走ると、全身が砂埃まみれになった。
パースのフリーマントル港から、モデルAと3人はインドの南西、コチ行きの船に乗った。大きな貨物船だったが、乗客用に3室の個室も備わっていた。筆者が乗船した時は、他に旅行者はいなかったようだ。
船は古く、明らかに速度は遅い。船内はカレーの匂いが充満していた。食事は、船員と一緒にダイニングで頂いた。茹でたジャガイモに卵のほか、クリスマスの時期には、英国の伝統的な料理も出た。だが、すべてにスパイスの香りが移っていた。
妻のヤンは船では唯一の女性。船員には気を使って過ごした。インドでは、途中に寄港したチェンナイで下船。荷降ろしが遅れたが、最後にフォードも降ろしてもらった。
予算に見合う安ホテルでは、ベジタリアン向けのような料理が基本。バナナの葉が器がわりで、フォークやスプーンは用意されなかった。手で食べる文化だからだ。
数日同じホテルで過ごしたが、小さな通りの市場で露店を発見。食事の入手方法を理解し、チェンナイを後にした。
執筆・撮影:Wal Hunter(ウォル・ハンター)
この続きは後編にて。
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