現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > シュッと出てきてキラッと点灯! カッコ良かった「リトラクタブルヘッドライト」が廃れた理由とは

ここから本文です

シュッと出てきてキラッと点灯! カッコ良かった「リトラクタブルヘッドライト」が廃れた理由とは

掲載 24
シュッと出てきてキラッと点灯! カッコ良かった「リトラクタブルヘッドライト」が廃れた理由とは

■格納式のヘッドライトは保安基準をすり抜ける裏技だった!?

 1970年代のスーパーカーブームにはじまり、1990年代のハイパワー競争時代も含め、スポーツカーは多くの人を魅了してきました。とくに低く構えたスタイリングは空力特性にも優れ、獲物を狙う肉食獣に例えられる格好良さがありました。

「ツインターボ」を聞かなくなったワケ 時代と共に変化し続ける「ターボ」という技術

 そんな低いフロントを実現させたのが、「リトラクタブルヘッドライト」です。格納式のリトラクタブルヘッドライトは、1980年代から1990年代のスポーツカーを中心に広く採用されましたが、現在では採用されることはなくなりました。

 リトラクタブルヘッドライトはなぜ消滅してしまったのでしょうか。

 格納式ヘッドライトのアイデア自体はかなり古くからあり、1935年にアメリカの「コード自動車」というメーカーから誕生した「モデル810」が世界初のリトラクタブルヘッドライト採用モデルといわれています。

 現在のクルマにもいえることですが、空気抵抗を減らすことは、燃費や動力性能に違いが生じます。

 そこで昔からクルマの前部を低くして徐々に迫り上がってくる、いわゆるくさび形のウェッジシェイプという形状がスポーツカーでは理想とされ、古くからカーデザイナーは、保安基準を満たしつつ低く作ることに頭を悩ませていたようです。

 なかでも自動車大国アメリカでは「SAE規格(日本のJISのように工業製品の基準を定めたもの)」によってサイズが決まった丸型か角型のヘッドライトしか採用できない縛りがありました。

 そこで考え出されたのが、必要なときに展開し、使用していないときに格納するヘッドライトというアイデアです。

 そして、1963年に登場したシボレー「コルベット」(C2型)をはじめ、1970年代を彩る世界各国のスーパーカーがこぞって採用したことから、リトラクタブルヘッドライトは「高性能スポーツカー」の象徴のような装備になっていました。

 ちなみに日本車で最初に採用したのは、1967年に登場したトヨタ「2000GT」です。

 そのほかにも1978年に登場したマツダ「サバンナRX-7」などのスポーツクーペだけでなく、トヨタ「ターセル/コルサ/カローラII」などコンパクトカーにまで採用されるほど大人気となり、なかでもホンダは、当時の大黒柱だった「アコード」やスペシャリティクーペの「プレリュード」など幅広く採用していました。

 しかし1990年代に入ると、リトラクタブルヘッドライトの有効性が薄れていきます。

 アメリカではヘッドライトの最低地上高の規制が緩和され、ヘッドライト自体もプロジェクターやマルチリフレクターの採用などでデザインされたライトカバー付き固定式ヘッドライトが主流になります。

 そうなると、今度はリトラクタブルヘッドライトの持つデメリットが浮かび上がってしまいました。

 リトラクタブルヘッドライト展開時は空気抵抗が増し、また電動格納式による複雑なメカニズムは部品点数の多さと、固定式と比べて重い本体重量、さらに重量物を鼻先に搭載していることから旋回性能などにも悪影響がありました。

 そして何より、固定式と比較して高コストだったこともあり、一気にアドバンテージを失ってしまったのです。

 最先端のトレンドほど人気が下落しはじめると古臭く感じるもの。マイナーチェンジやフルモデルチェンジを機に、固定式ヘッドライトを採用したフロントのデザイン変更はもちろん、マイナーチェンジで固定式にしてしまうケースもあったのです。

 ちなみに、日本市場ではマツダ「RX-7」(FD3S型)の生産終了に伴い、2003年に新車としてのリトラクタブルヘッドライト採用車は消滅してしまいました。

■リトラのほうが良かったのでは? 途中で固定式になったモデル

 スポーツカーはリトラクタブルヘッドライトが似合うジャンルです。

 現在の中高年層が熱狂した1970年代のスーパーカーブームでは、フェラーリ「512BB」やランボルギーニ「カウンタック」、ロータス「エスプリ」などがリトラクタブルヘッドライトを採用し、高性能スポーツカーの象徴のような装備でした。

 しかし技術の進化と安全性の向上を理由に、フルモデルチェンジする前に、マイナーチェンジで固定式へと変更された車種も存在します。

 途中でリトラクタブルヘッドライトを辞めてしまい、一世代も持たなかったモデルにはどのようなものがあるのでしょうか。

●ホンダ「NSX」(初代)

 2代目も生産終了がアナウンスされましたが、依然としてジャパニーズスーパーカーのイメージをもたらしてくれる1台がホンダ「NSX」(初代)です。

 世界初のオールアルミモノコックボディにVTEC化されたV型6気筒エンジンをミッドシップに搭載するなど、初代NSXは当時の最先端技術を投入した「ホンダ製スーパーカー」として誕生しました。

 そんな国産スーパーカーは、全長4430mm×全幅1810mm×全高1170mmという驚愕の低さを実現。リトラクタブルヘッドライトによる、スーパーカーらしいデザインもあわせ持っています。

 初代NSXは後部のオーバーハングが長すぎるともいわれましたが、これは高速走行時の姿勢安定性の向上が図られた結果。これによって、ほかのMRスーパーカーにはない、実用的なトランクも手に入れることができました。

 そんな初代NSXのリトラクタブルヘッドライトは、2001年におこなわれた3度目のマイナーチェンジで、衝突安全性や空力の向上とフロント部分の重量軽減を目的に固定式4灯プロジェクターヘッドランプへとチェンジしています。

 フロントマスクのイメージが変更されたことでスーパーカーらしさは減少。空力や安全性を優先した結果、初期モデルが持っていた華やかさが薄れてしまい、現在のネオクラシカルでもリトラクタブルヘッドライト採用の初期モデルのほうが人気は高いという結果になっています。

●ホンダ「CR-X」(初代)

 1980年代はコンパクトカー全盛時代で魅力的なモデルが数多く登場しましたが、当時の「シビック」をベースにショートホイールベース化し、「FFライトウェイトスポーツ」と呼ばれた新ジャンルを生み出したファストバッククーペがホンダ「CR-X」(初代は「バラードスポーツ CR-X」)です。

 リトラクタブルヘッドライトには、一般的な開閉タイプや後ろから起き上がるタイプ、ユニットごと回転するタイプなどがありましたが、CR-Xはセミリトラクタブルヘッドライトと呼ばれるヘッドライトの上側の一部がカバーで覆われる半固定式ヘッドライトを採用していました。

 というのも、電動格納式のリトラクタブルヘッドライトですとパッシングなど瞬間的にヘッドライトを点灯させるのに時間がかかるため、開かずとも短時間なら点灯できるセミリトラクタブルヘッドライトが開発されたといわれています。

 全長3675mm×全幅1625mm×全高1290mmというサイズでファストバックスタイルのため後部座席は非常に狭く、ほとんど2シーターといってもいいレベルでしたが、そのタイトさと1.5リッターエンジンが生み出す小気味良い走りでヒットモデルに。

 直接的なライバルでFR車だったトヨタ「レビン/トレノ(AE86型)」に対し、FFライトウェイトスポーツを大いに盛り上げました。

 しかし1985年のマイナーチェンジでは、早くもこのセミリトラクタブルヘッドライトを廃止し、輸出仕様と同じ固定式を採用することになります。

 ちなみに1987年に登場した2代目は最初から固定式を採用。イメージが似ているとのことで固定式でも人気は衰えず、初代以上に大ヒットしました。

 そして、大幅なイメージチェンジを図った3代目「CR-Xデルソル」の商業的な失敗と、時代のニーズがより居住空間を求める方向にシフトしたこともありCR-Xも生産終了を迎え、FFライトウェイトスポーツ自体も衰退してしまいました。

●三菱「GTO」

 1980年代後期から1990年代前半のいわゆるバブル景気時代には、ハイパワーをウリにした数多くのスポーツカーが誕生しました。

 当時はまだ280馬力の自主規制枠がある時代でしたが、そこで着目されていたのがトルクです。いかに最大トルクを引き上げて速さを演出するかが重視されていました。

 そんななかでも、40kgmを超える鬼トルクを発揮する「トルクモンスター」の異名をとっていたのが三菱「GTO」です。

「ギャラン VR-4」で培った4WD技術を盛り込んだ大型スポーツクーペでした。

 全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mm、車両重量1710kgという大型3ドアクーペに、3リッターV型6気筒ツインターボエンジンで280馬力と42.5kgmものパワーを4WDで路面に伝えるモンスターマシンとして、当時のライバルであるトヨタ「スープラ」や日産「フェアレディZ」とは違う、独自の世界観を持っていました。

 また当時の三菱は世界初の電子制御装備を好んで搭載しており、GTOにもスイッチひとつで排気音を変える「アクティブエグゾーストシステム」や可変式リアスポイラー&フロントスカートの「アクティブエアロシステム」などを採用していました。

 そんなGTOが1993年にビッグマイナーチェンジを実施。ターボチャージャーの過給圧を変更しトルクを43.5kgmまでアップさせるとともに6速MTを採用しましたが、このときヘッドライトをリトラクタブルヘッドライトから固定式プロジェクタータイプの4灯へと変更しています。

 近年のネオクラシックによって再び注目を集めつつありますが、シボレー コルベットにも似た造形を持つ初期型のほうが、GTOらしさがあるといわれています。

※ ※ ※

 リトラクタブルヘッドライトは、現在のエコ性能や衝突安全性を考慮すると、法律的に禁止されてはいないものの、ニューモデルに搭載される確率はかなり低そうです。

 クルマ好きであれば、あのスイッチひとつでせり上がってくるリトラクタブルヘッドライト独特の魅力を一度は体験しておいても損はないと思います。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
motorsport.com 日本版
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
AUTOSPORT web
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
Auto Messe Web
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
WEB CARTOP
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
日刊自動車新聞
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
くるまのニュース
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
アストンマーティン、技術責任者ファロウズ更迭は今季の不振が理由と説明「彼は2023年のマシン開発に大きな影響を与えたが……」
motorsport.com 日本版
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
ブルーインパルスがラリージャパン2024開幕を祝う航空ショー。6機が豊田スタジアム上空で華麗なスモーク
AUTOSPORT web
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
[15秒でニュース]首都高速八重洲線通行止め…10カ年計画の新環状線プロジェクト
レスポンス
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

24件
  • なんの変哲もない丸目4灯が、カウンタック、BB、テスタロッサから飛び出してくるだけでウキウキするね。
  • マツダはリトラなくなった後もヘッドライト目立たなくさせようとしててコンセプトカーでは頑張っていたな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村