ベースは同じでも名前や見た目の異なる「兄弟車」
過去には各メーカーともに複数の販売チャネルをもっていることがほとんどで、量販車種の存在するジャンルでは販売チャネルごとに不利益がでないようにと、ベースは共通ながら名前や内外装(場合によってはクルマの味付けも)の異なるいわゆる「兄弟車」というものが多く存在していた。
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しかし、徐々に販売チャネルという概念が崩壊し、同じメーカーでの兄弟車種も減少。ついにトヨタも販売チャネルの統合を進めるようになり、今後販売チャネル毎の兄弟車は姿を消していくことになりそうだ(実際、タンクは廃止されルーミーに一本化されている)。そこで今回は、そんな消えゆく兄弟車を振り返ってみたいと思う。
【トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ】
兄弟車と聞いて多くの人が頭に思い浮かべるであろうモデルがマークII3兄弟だろう。もともとはコロナの派生車種ということで「コロナマークII」という名前で登場したマークIIであったが、徐々にサブネームの方が知られるところとなり、1984年に登場した5代目からは正式に「マークII」という車名となっている。
一方のチェイサーは3代目マークIIの兄弟車として登場。比較的若いユーザーの多かったトヨタオート店の取り扱い車種ということで、マークIIよりもスポーティなイメージとし、エンジンも2.6リッターが存在しないなど、販売店の色に合った変更がなされていた。
そしてもっとも登場が遅かったのが、4代目マークIIの兄弟車として1980年に登場したクレスタだ。 クレスタの登場と同時に誕生したトヨタビスタ店の専売車種としてデビューしたクレスタは、ドアパネル以外のデザインを一新した高級パーソナルカーというキャラクターが与えられており、2代目からはセダンボディのみのラインナップとなっていた点も大きな違いと言える。
マークII3兄弟は兄弟車でありながら、それぞれに違った個性が与えられ、世代ごとに人気のモデルも異なるなど、単なる兄弟車の枠を超えた存在と言えるかもしれない。
【スバルBRZ/トヨタ86】
先日、新型(プロトタイプ)がアンヴェールされて話題となったBRZだが、初代モデルに引き続きトヨタと共同開発したモデルとなっている。そのため、OEM車ではないにも関わらずメーカーを超えた兄弟車関係ということになる車種だ。なお、開発自体はスバルとトヨタの共同ではあるものの、生産に関してはスバルが一手に担っており、新型も引き続きスバルの工場で生産されることがアナウンスされている。
この両車の違いは見た目だけに留まらず、足まわりのセッティングも微妙に異なっているほか、BRZにはSTIが、86にはGRが手掛けたモデルが存在している点なども異なる点と言える。
やや強引かもしれないが、現在BRZの販売は終了しており、新型86の登場がアナウンスされていないことから紹介させてもらった。
【日産エルグランド/クエスト】
先日、マイナーチェンジを果たした日産のフラッグシップ・ミニバンであるエルグランド。通算3世代目となるエルグランドではあるが、右ハンドル圏の一部の国を除いて正規には輸出されておらず、ほぼ国内専売モデルという形となっていた。
しかし、2010年からは北米市場に向けて「クエスト」名義で販売されたモデルがエルグランドの兄弟車だったのである。なお、クエスト自体は4代目となるが、初代から3代目まで一環して前輪駆動のミニバンだったため、従来のエルグランドとの関連性は一切なかった。
満を持して北米市場に投入されたクエストは前後の意匠こそアメリカ人好みとも思えるものになっていたものの、サイドのシルエットはエルグランドにそっくりで、さすが兄弟車といったところ。
しかし、じつは全幅がアメリカ市場に合わせて120mmも拡大されているので、ただエルグランドを左ハンドルにして顔を変えただけのモデルというわけではないのである。
なお、クエストは一足先の2016年で北米市場から姿を消しているため、こちらも“かつて存在した”ということになっている。
【トヨタ・カローラ/ダイハツ・シャルマン】
圧倒的知名度を誇るスタンダードカーであるカローラの兄弟車としては、トヨタオート店(のちのネッツ店)で販売されていたスプリンターが知られるところであるが、ダイハツからもカローラのコンポーネンツを流用して生まれたセダン、シャルマンが販売されていた。
ただし他の兄弟車と異なる点として挙げられるのが、一世代古いカローラがベースとなっていたということ。1974年11月にデビューした初代シャルマンは、同時期に販売されていた3代目カローラではなく2代目が、1981年に登場した2代目シャルマンでは、FF化された5代目カローラではなく旧態依然となったFRレイアウトの4代目がベースとなっていたのである。
当時はトヨタとダイハツは現在のような子会社ではなく、業務提携の関係であったのだが、さすがに当時の稼ぎ頭のカローラをそのまま提供するというのは難しかったのだろうか。
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