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サーブに前後そっくりのキャンピングカーがあった! 旧車専門誌が「移動編集部」として使っている「サーブ95HK」とは

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サーブに前後そっくりのキャンピングカーがあった! 旧車専門誌が「移動編集部」として使っている「サーブ95HK」とは

ボルボと並ぶスウェーデンの自動車メーカーだった「サーブ」

 厳しい自然環境の北欧諸国では農産業に制約が多い反面、古くから機械工業・化学工業に力を入れ発展してきた歴史を持つ。なかでもスウェーデンは自動車から航空機まで、独自の製品を数多く生み出していることはよく知られている。今は無きサーブも、かつてはボルボとともにスウェーデンを代表する自動車メーカーであった。

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 もともとサーブは1937年に創業された軍用機メーカーで、第二次世界大戦後の1946年には試作車「サーブ92001“Ursaab”」を発表し、自動車の製造にも進出する。日本の場合は敗戦によって一切の開発・製造を禁じられた航空機メーカーが自動車製造にシフトしていったのに対し、大戦中も中立を貫いたスウェーデンの場合は世界に平和が訪れたタイミングで、軍用機以外の新たな分野として将来性のある「自動車製造」にも進出した、というわけだ。

軍用機メーカーから自動車メーカーに進出

 1949年から生産が始まった最初のサーブ車「92」は、水冷2サイクル2気筒764ccエンジンを横置きにレイアウトした前輪駆動車。パワーは25馬力とささやかながら、独特な空力的ボディの恩恵で最高速度は105km/hに達した。また、冬季積雪路での走行も考慮してシャシー裏面がフラットに覆われるなど、その成り立ちは母体が航空機メーカーであることを強く感じさせるものであった。

 1955年には後継モデルのサーブ「93」が登場。ボディのイメージは92を引き継ぐが、エンジンは新開発の2サイクル3気筒748ccを縦置きに搭載。パワーも33馬力にアップしている。さらに1959年には93をベースにワゴンボディとした「95」も追加。こちらは車重の増加に合わせ、排気量が841ccにアップされている。

プライベーターが独自に製作したモーターホーム

 北欧の気候風土が生んだサーブは母国スウェーデンをはじめ、各国でも多くの支持を得てさまざまな派生モデルを生み出したが、なかでもこちらはかなりの変わり種だ。サーブ95をベースに作られたサーブ「95HK」と呼ばれるキャンパーである。ちなみにこの記事内では日本でも馴染み深い「キャンパー」という名称で統一しているが、この車両はキャンプ場での使用が主たる用途の「キャンパー」というよりは、むしろ「モーターホーム(移動する住宅)」というジャンルに属する車両だろう。

 じつはこのクルマを制作したのはサーブ自身ではなく、スウェーデン中部のラムゼレという街に住むトーステン・ヨハネソンなる人物。彼は1963年、まずサーブ92をベースに独自のボディを架装したワンオフのキャンパーを作り「サーブ92H」と名付けた。

 しかし、キャンパーの大きなボディに対し92の25馬力エンジンではさすがに荷が重く、程なく走行不能となった92Hは森の中に放置され、そこで狩猟を楽しむ人たちが休息するためのハンティング・ロッジとして使われたという。そして1965年にはトーステン・ヨハネソンは、パワーに余裕のあるサーブ95をベースに2台目のキャンパーを製作し、こちらは「95HK」と名付けた。

じつは現在も雑誌の「移動編集部」として健在

 北欧の短い夏のバカンスを楽しむためのキャンパー/モーターホームは、かの地では古くから馴染み深い存在で、サーブ本社もトーステン・ヨハネソン個人のユニークな試みにそれなりの興味を示したとされる。しかし、すでにサーブは1964年から「SAABO(サーボ)」というブランドで独自のキャンピング・トレーラーを生産しており、また、同じスウェーデンの「Toppola(トッポラ)」というボディ架装メーカーがサーブ「99」用の後付けキャンピングシェルを市販したこともあり、結局サーブ自身がトーステン・ヨハネソンが作ったような独自のキャンピングカーを生産することはなかった。

 その後40年以上ハンティング・ロッジとして放置され朽ち果てかけていたサーブ92Hは近年、現地の有志らの手によって森の中からレスキューされ、その後大規模なレストアが行われ路上復帰を果たしている。また、本稿の主役たる2台目の(そして最後の)サーブ・ベースのキャンピングカー「95HK」も健在で、現在はスウェーデンのヒストリックカー専門誌「KLASSIKER」が所有して「移動編集部」として活躍しているそうだ。

■Auto Cult(オートカルト)サーブ95HK 1965定価:2万4200円(税込)型番:09016問い合わせ:国際貿易 https://www.kokusaiboeki.co.jp

文:Auto Messe Web 『AMW編集部』
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